第5話 スキル発動
「リンクエッジ……ルナのクローエッジと、同じような技なのか?」
答えを考えている暇はなかった。 ゴブリンメイジの杖の先で、赤黒い光が膨らんでいる。
(メイジは魔法を放つ直前に動けなくなる)
本で読んだ。強い魔法ほど詠唱が長く、その間は無防備になる。
そして、放った直後にわずかな硬直がある。
ベルは動かなかった。光が最大になるのを待つ。 ――いまだ!
「リンクエッジ!」
右手を振り抜くと、爪の形をした斬撃が飛んだ。 斬撃は魔法ごと杖を裂き、ゴブリンメイジの身体を切り抜けた。
「ギィ……」
静寂が戻った。
【レベルアップ Lv5 → Lv6】
だが、喜ぶ間もなく身体から力が抜けた。
MPの表示が一気に底をついた。
「発動してるだけで、MPが減り続けてるんだな。技を撃てば、さらに減るみたいだ」
自分で確かめるように呟き、リンカーが解除され、 髪が黒に戻っていく。
ルナのステータスを開くと、HPは三分の一まで減っていた。
「ごめんな、ルナ。俺のせいだ…」
「クゥン」
ルナが、ベルの手に頭を押しつけた。
◇
「ピィ……ピィ……」
か細い声が、近くにある岩場の方から聞こえた。
ルナを抱えたまま近づくと、小さな洞穴があった。 中には粗末な木のカゴ。
その中で青い鳥が何羽も身を寄せ合っていた。
「ブルーバード…ゴブリンに捕まってたのか」
風属性のおとなしい魔物。
滅多に人に危害は加えない。
ベルはカゴの留め具を外してあげた。
「ほら、もう大丈夫」
青い影が、洞穴の外へ飛び出していく。
最後の一羽が空に消えるのを見送って、ベルは洞穴を振り返った。
(……あれ?)
壁に、何かが書かれていた。
王冠のような形の大きな印。
そのまわりには、無数の足跡があった。
(これは何のマークだ?)
ゴブリンが、こんなものを作る知識を持ち合わせているはずがない。
「じゃあ一体誰が…?」
ベルはホブゴブリンとメイジの魔石を回収し、早足にその場から遠ざかった。
◇
岩陰でルナの傷に薬草を当てた。
「これで、少しは楽になるはずだよ…」
「クゥン…」
そのとき、さっきのブルーバードが一羽戻ってきた。くちばしに赤い小さな実をくわえている。
「ルナに持ってきてくれたのか?」
「ピィ!」
ブルーバードが実を差し出すと、ルナがゆっくりかじった。
「ありがとう」
ブルーバードは一度鳴いて、空へ舞い上がった。
ルナがその行方をじっと見つめていた。
◇
夕方のギルドで、受付嬢の顔色が変わった。
「ホブゴブリンと、ゴブリンメイジ……?それを、あなた1人で?」
「ルナと2人で、ですけどね」
「そう……」
受付嬢は魔石をしばらく見つめた。
「実はね、最近、森の浅いところに、大型の魔物の目撃情報が増えてるの」
「それとは別に、原因不明の切り傷で怪我をする冒険者も何人か出ていて」
「切り傷?」
「そう!周りに魔物の姿はないのに、気付いたら怪我をしているそうなのよ」
ベルは、洞穴の壁を思い出した。
「あの…ゴブリン達が巣にしていた洞穴の壁に、王冠みたいな印があったんですけど、何か関係はありますか?」
受付嬢の手が、止まった。
「詳しく、聞かせて」




