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Linker-紡ぐ者- ハズレ職テイマーからの成り上がり  作者: 黒銀ネルル


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25/28

第25話 幻獣種フェルノクス

階段を降りる途中、ミリアがノアの首元をのぞき込んだ。

「それ、ずっと持ってるね」


首に下がった細い紐の先で、金色の欠片が揺れる。


「キィ…」

ノアは、欠片をぎゅっと握ってベルの背中に顔を埋めた。

「大事なものみたいで、ずっと離さないから首から下げてあげてるんだけど…金色の戦士に関係のある物みたいなんだ」

ベルはノアを見つめながら頭を撫でた。


「そうなんだ…」


ノアの表情を見て、誰もそれ以上は聞けなかった。


    ◇


12階層は、広い一本道の先に開けた空間があった。

奥に大きな影が丸まって眠っている。


「…キメラだな」


レオンが小さく息を吐いた。

「獅子の頭、尻尾は蛇…厄介だな」


「あー、蛇に噛まれたら石化しちゃうんだよね」

セシルが言った。


「でもCランクの魔物だし、私たちなら余裕だね!それに、石になってもレオンがお姫様抱っこしてくれるんでしょ?」

ミリアがにやりとした。


「ただでさえ重い…」

レオンの言葉をミリアが遮る。

「それ以上言ったら、アンタのこと石にして迷宮の何処かに飾り付けてやるからね」


セシルもジト目でレオンを見た。


「すみませんでした…」


ベルは苦笑しながらキメラを見ていた。


    ◇


戦いはほとんど一方的だった。


キメラが目を覚まして咆哮した瞬間、カイルの矢が、獅子の目を射抜いた。


尻尾が暴れる。レオンが盾で受け流す。

その隙にミリアが双剣で脇腹を裂いた。


「重っ…! この蛇、力強いな!」

「レオン、踏ん張って!」


セシルの魔法が追い打ちをかける。


ベルは、ノアと一緒に後ろ足へ回った。


「ノア!」

「キィ!」


影が伸び、黒い縄になる。

キメラの足に絡みついた。

キメラは一瞬だけ動きを止めて、すぐに縄を引きちぎった。


「あっ、ベルより早い!」

ミリアがニヤリとする。


「…なんだよ、それ」


キメラが片膝をついた。 1分も経っていない。


「ベル、ほとんど出番なかったね」


「いや、助かるけどさ…」

ベルが言い返す。そのときだった…


倒れているキメラから、黒いモヤが立ち上がる。


「…何だ、あれ」

レオンが目を凝らす。


「さっきまで余裕って言ってたの、誰だっけ?」

セシルがミリアを横目に低い声で言った。


「…来るぞ」

カイルが、弓を構え直した。


黒いモヤは、キメラの全身を包み込み、キメラの身体がびくりと震える。

目が赤く染まり、傷がみるみる塞がっていく。

身体がひと回り膨れ上がった。


「グオオオオッ!」


咆哮の圧に広間が震えた。


「うそ、さっきより強そうじゃない…?」


蛇の尻尾が鞭のようにしなって、レオンの盾に噛みついた。 盾が一瞬で灰色になり、ひびが走った。


「重っ…!盾も石になるのかよ!」

「レオン大丈夫!?」

ミリアが飛び込んだ。

蛇の牙がその左足をかすめた。


「くっ…!」

ミリアの足が膝まで石になった。

「うそ、動かない!動かないんだけど!!」


「…落ち着け」

カイルが矢を放ちながらミリアの横に来る。

「落ち着けるわけないでしょ!」


ベルはミリアの前に飛び出した。

キメラの視線がまっすぐベルを向く。


(…このままじゃ、誰か死ぬかもしれない)


「ルナ、フィン、ノア。行くぞ!」


3匹がベルを見上げた。

ルナの尻尾が一度だけ揺れる。


「ユニオンリンク。ルナ、フィン、ノア」


3匹は光に包まれ、すぐに混ざり合っていく。


光が弾けるように消え、現れたのは、二本足で立つ銀色の狼だった。

額には紫の角。

背には青と黒の羽。

毛並みの上を、電気と黒いオーラが交互に走っている。


ベルの目の前に、いつもの画面が現れる。

【最大数の融合を確認】

【種族と名称を設定】

【種族の設定に失敗しました…再構築します…】

【種族の設定完了】

【種族:幻獣種】

【名称:フェルノクス】


ベルは画面を見て、少し困惑したが、すぐにキメラに目を移しながら、目の前に現れた、大きな狼に話しかける。

「フェルノクス!行けるか?」

「ガウッ!!」

フェルノクスはキメラを睨みつけながら、決して大きくはないが、力強く反応を返した。


「…でっかー」

ミリアが石になった足のまま見上げた。


「…見とれてる場合じゃない」

カイルが蛇を矢で牽制しながら言った。


「だって足が動かないんだから、見るしかないでしょ!」


蛇の尻尾が、フェルノクスへ振り下ろされる。

避けなかった。

羽を大きく羽ばたかせる。

風が広間を駆け抜けた。

黒いモヤがふわりと薄れる。


「…風でモヤが散った!」

ベルははっとした。


「みんな!モヤを払えば弱体化するぞ!」

「了解!」


セシルの風の魔法が重なる。

黒いモヤがさらに剥がれていく。

キメラの動きが目に見えて鈍った。


「…盾、石だろ?…殴れるぞ」

カイルが言った。


「コレで殴れと!?」

「…やれ」

「やるけどさ!」

レオンが、石になった盾を振りかぶって、獅子の顎を殴り上げた。

キメラがぐらりとよろめく。


フェルノクスが床を蹴った。

雷が蛇の頭を貫く。蛇がびくんと固まる。


「ベル、今だ!」

そう言ったレオンは、殴りかかった反動で、キメラの近くに倒れ込んでいた。


「リンカー発動!ウェポンチェンジ、ルナ、フィン、ノア!」


ベルの髪が銀色に染まっていく。

フェルノクスが光になった。

ベルの両手に銀の爪が宿る。

背には青く光る翼。

顔の下半分には黒い面頬。

首元でマフラーが揺れる。

そして額に紫の角が2本生えていた。

爪の先で電気と闇が弾けた。


ベルは床を蹴った。

翼が風を切りキメラの懐へ飛び込む。


爪がキメラを一閃。

電気がキメラの全身に走る。


動けなくなっているキメラの尻尾にもう一閃。

蛇の尻尾が根元から断たれた。

キメラの身体がゆっくりと傾いて地面に崩れ落ちる。


広間に静けさが戻った。


    ◇


「…足が」


ミリアが自分の足を見下ろした。

灰色だった足が、ゆっくりと血の気を取り戻していく。


「キメラを倒したから、石化も解けたんだな」

そう言ったレオンの顔は、とても安堵していた。


「動く! 動く! やったー!」

ミリアがその場で跳ね回っていた。

「ベル、ありがとう!」


「いや、お礼は…」

ベルはウェポンチェンジとリンカーを解除した。

髪が黒に戻る。

3匹が元の姿で、足元に戻ってくる。

「この子達に言ってあげて?」


「そっか!そーだよね!ノア、ルナ、フィン、本当にありがとー!」


ミリアが、ノアに抱きつこうと、飛び込んだが、すぐに走って逃げられて、顔面から地面に落ちた。


「いったー!もー!なんで逃げるのー!」


焦るノアを見て、皆で笑いあった。


    ◇


【MP 55 / 71】


(…これしか減らなかったのか)


そのとき、ノアがキメラの死体に近づいた。


「ノア?」


ノアは影に手をかざした。

影がぬるりと伸びてキメラの身体を包みこむ。


そして、キメラの巨体が音も立てず、影の中に沈んでいった。


「え!?なに?食べた!?」

ミリアがぽかんと口を開けた。


「消えたぞ…」

カイルが、ぼそりと言った。


ノアはベルを見上げて、おそるおそる翼を広げる。


「"収納"ってやつだよね?」

セシルが感心したように言った。


「ノア、影の中にしまえるのか?」

ベルは真剣な顔でノアを見つめる。

「…キィ」

ノアは力なく頷く。


「凄いよノア!」

「キィ?」

ベルは満面の笑みを向けてノアの手を握る。

「こんなこと出来る魔物、いや、人間だってこんなこと出来る人はそうそういないよ!」

ノアも嬉しそうなベルを見て、喜びで飛び跳ねる。

「キィッ!」


「魔石も素材も、全部持って帰れるね」

「ノア、最強じゃん!」

セシルに続きミリアも笑顔を向けた。


ミリアに頭を撫でられて、ノアの尻尾がぴんと立った。


    ◇


ベルは、倒したキメラに目を向ける。

黒いモヤはもう消えていた。


ルナが、低く唸った。

「…あのモヤ、一体なんなんだ…」


「…金色の奴が絡んでるのは間違いないだろ」

レオンが言った。


誰も、それ以上は何も言えなかった。

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