第24話 ユニオンリンク
派生スキルを獲得しました
【ユニオンリンク】
【仲間の魔物を融合させることができる】
【消費MP:0】
【ユニオンリンク解除後は元の姿に戻る】
【現在合体可能数:3】
【その他スキルにも補正を加えました】
「…融合?」
思わず声に出ていた。
「ベル? さっきから固まってどうしたの?」
ミリアが目の前で手を振る。
「新しいスキルを覚えたんだけど…」
「え!凄いじゃん!どんなスキル!?」
「よく分からない、ルナ達が合体するみたいなんだけど…」
ベルは空中の文字から目を離せずにいた。
「まぁ、増えるのは羨ましいけどな!」
レオンが少し呆れた顔をしながら笑っていた。
進化したノアはベルの後ろから、翼の先だけをのぞかせていた。
背丈はベルの胸ほどまであって、さっきから自分の足で立つのに苦労している。
立ち上がるたびに、重い翼に引っ張られてぐらりと傾く。そのたびにルナが背中を支えていた。
ベルは自分のマントを外して、ノアの肩にかけてあげた。フードに入っていた癖で、ノアは一瞬だけベルの背中のフードを探して手を伸ばした。
その姿を見て笑いがおこった。
ベルはノアのステータスを開く
【名称】ノア
【種族】 悪魔族:シャドウデーモン
【スキル】影渡り 影の支配
【弱点】光属性攻撃
(シャドウデーモン。また聞いた事のない魔物だ…影渡りはそのまま使える。弱点が光属性っていうのは変わらないんだな…あれ?攻撃!?)
「セシル、光をだしてくれる?」
「え?いいけど、ノアが…」
セシルが心配そうにノアを見る
「ノアどうだ?無理そうならやめとくけど」
ノアは任せろと言わんばかりに胸を叩いた。
「…よく分からないけど、どうなっても文句言わないでよ?…ライト!」
辺りを光が照らし、全員の影がしっかり見えるほど明るくなった。
「ノア、どうだ?」
ベルが少し不安そうな顔を向ける。
「キィ!!」
ノアは元気よく飛び跳ねた。
「え、なんでなんで!?」
ミリアが驚きながら笑顔を見せる。
「やっぱり、進化したことで、光属性の攻撃以外は効かなくなったみたいだ」
ベルは満足そうにノアを撫でた。
「…良かったな」
カイルが優しい声で囁いた。
◇
(しかし影の支配って…大層な名前だなぁ)
「ノア、これは何ができるんだ?」
ノアは首を傾げて、少し考えるように床を見た。
それからベルの影の方向に手をかざした。
影がぬるりと実体化し、
黒い縄の形になって、ベルの足首にくるりと巻きついた。
ベルは一歩踏み出そうとして止まった。
足が、地面に縛りつけられたように動かない。
「うわっ、なんだ…!」
全力で足に力を込める。
縄が、墨が水に溶けるようにほどけた。
足がずるりと抜ける。
「え、今何したの?」
ミリアが、ベルの足元をのぞき込む。
「影で足を縛られた…多分」
ベルも縛られていた足元を眺める。
ノアは得意そうに翼の先を揺らした。
それから指先を床に向ける。
ベルの影から、黒い針が数本出現し、また指を動かすと、その方向に針が飛んでいく。
「影を実体化できて、しかも攻撃も拘束もできるって、ノア!凄いよ!」
ミリアも興奮しながら飛び跳ねた。
◇
「で、スキルは?」
カイルがぼそりと言った。
「…そうだった」
ベルは、目の前の画面をもう一度見た。
「ユニオンリンク。ルナ達が合体するらしい」
「合体ねぇ、それをしたらどうなるんだ?」
レオンが首をひねる。
「…分からないけど、やってみるか」
ベルはルナに目を落とす。
「え、待って待って」
ミリアが、ルナとフィンの前にしゃがみ込んだ。
「合体しちゃってほんとに大丈夫? 戻れなくならない?」
ルナは、呆れたようにミリアを見た。
フィンは、ルナの頭にぽんと乗って「ピィ」と鳴いた。
「大丈夫だよ。スキルを解除すれば元に戻るみたいだから」
「あっ、そうなの?なら、うん、まぁ…」
ミリアは拍子抜けした顔でルナとフィンを見つめた。
◇
運がいいのか悪いのか、10体ほどの大トカゲが通路の奥から湧いてきた。
「ちょうどいい。まず、ルナとフィンで」
ベルは息を吸った。
「ユニオンリンク。ルナ、フィン」
ルナとフィンの身体が光に包まれた。
2匹が混ざり合い、すぐに光が消えていく。
現れたのは、ルナより一回り大きい銀色の狼。
背には光る翼。
毛並みの上を細い電気が走っている。
「えっ…!かっこいい!!」
ミリアが叫んだ。声が裏返っている。
「ちょっと、触っていい?」
伸ばした指先に、ぱちっと火花が散った。
「いたっ!…触るなって顔してるー」
「ガウ」
狼は鼻を鳴らして、群れのほうへ向き直った。
「ルナ、フィン、行けるか?」
「グルルルッ」
低い唸り声が返ってくる。
トカゲの群れが迫る。
狼が床を蹴った。 クローエッジの斬撃が走り、その後ろを雷が追いかける。
1体が裂け、2体目が痺れて固まり、3体目は翼の風に吹き飛ばされた。
「…斬撃、でかくなってないか?」
レオンは剣と盾を構えるのを忘れ、下におろす。
「なってる、威力もかなり上がってるよね…」
セシルが杖を握ったまま言った。
画面の最後の一行が、ベルの頭をよぎった。
「…試してみるか…リンカー発動、ウェポンチェンジ、ルナ、フィン」
狼が光になり、ベルの両手に爪が宿る。
背には青い翼。爪の先では雷が弾けた。
◇
残りのトカゲを片付けて、ベルはMPを確認した。
【MP 62 / 71】
「…あれ、どうしたの?」
ミリアが少し心配そうにベルを見た。
「あー、いや、MPが、ほとんど減ってないんだよ」
ミリアが、ぽかんと口を開けた。
「2匹分のスキルを使っているから、いつもなら凄い勢いで減っていくんだけど、今回は1匹の時より減ってないかもしれない」
「うっそ!ずるくない!?」
ミリアが少し大袈裟なぐらい驚く。
「…俺たちの出番、なくならないか?」
レオンが半分本気で言った。
「出番ならあるよ?ベルが倒れたら…運ぶ役」
セシルがレオンをジトっとした目で見る。
「その時は全力でお姫様抱っこしてやるよ…」
ベルは、笑いながらウェポンチェンジとリンカーを解除した。
ルナとフィンが元の姿で足元と頭上に戻ってくる。
◇
「次は、ルナとノアを試してみよう!」
ノアがベルを見上げた。
紫の瞳が、少し揺れている。
「怖いならやめとくか?」
ノアは首を横に振り、ルナの隣へ歩いた。
ルナがそっと身体を寄せる。
「よし、ユニオンリンク!ルナ、ノア」
光が溶け合った。
現れたのは、二本の足で立つ狼だった。
額には紫の角。背には黒い羽。
銀の毛並みに、闇の色が水に墨を落としたように広がっていく。
「ルナノア立った!?」
ミリアが驚きすぎて何か口走る。
狼は自分の手を見下ろして、不思議そうに首を傾げた。ノアのような仕草だった。
◇
次のトカゲの群れが飛び出してきた。
足元の影が勝手に伸びる。
黒い縄になって、トカゲに絡みつく。
トカゲは地面に縛りつけられて、ぴくりとも動けなくなった。
「…あれは多分抜けられないよ」
ベルが同情した目を向ける。
「私も抜けられないかも…」
セシルが少し震えながら続ける。
「弱い魔物は抜けられない。強い対象には足止め。そういうことだよね?」
「ベルは強い判定なんだ!」
「…なんだよ」
ミリアが笑った。
スキルを解除すると、ノアは嬉しそうに翼をばさばさ動かして、ミリアの前髪を吹き飛ばした。
「ちょっと!」
「…ベルを馬鹿にするからだ」
カイルが目を閉じながらボソッとつぶやく。
「ごめんてば!」
◇
「最後に、フィンとノア」
ベルは、もう一度息を吸った。
「ユニオンリンク!フィン、ノア」
光が混ざるとほぼ同時に、 何かが飛び上がる。
腕は翼になっていて、脚の先は鉤爪。
額には紫の角。羽の一枚一枚の上を、雷と闇が交互に走っていた。
目で追うのがギリギリなぐらいの早さで、天井近くを旋回している、そして鋭い声で鳴いた。
「ギィッ!」
「あれは鳥なの?」
「ハーピーみたいに見える」
ベルは見上げたまま答えた。
「…撃ち落とせる気がしない」
カイルが弓を下ろした。
「雷と闇と風。属性が3つになったね」
セシルが目を細めた。
解除すると、フィンとノアがふらふらと着地して、同時に「ピィ」「キィ」と鳴いた。
◇
「3匹いっぺんは試さないの?」
ミリアが聞く。
足元に3匹が並んで、ベルを見上げていた。
ルナの尻尾がゆっくり揺れている。
「んー、お楽しみは本番で披露しようかな!」
ベルは少し考えてから言った。
「なら、本番を探すか」
レオンが通路の奥を見た。
「この下の階層に主がいる」
この10日間で、11階層の魔物は余裕で対処できるようになっていた。
群れが湧く間隔も、どんどん長くなっている。
階段の下からは低い唸り声が聞こえていた。




