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Linker-紡ぐ者- ハズレ職テイマーからの成り上がり  作者: 黒銀ネルル


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第22話 仮面の男と金獅子

闇の奥から足音が近づいてきた。

重い靴音と床を引っかく獣の爪の音。


「みんな下がれ!」


レオンが盾を構え、ミリアが双剣を抜く。

セシルは杖を握りしめ、カイルも弓を構えている。

ベルの腕の中ではノアがぐったりしている。


「リンカー発動!…」


何も起きない。

MPはさっきの戦いで底をついていた。


闇から男が姿を現した。


黒いコートを着た、二十代半ばほどの男だった。

黒髪で、顔の右半分を白い仮面が覆っている。

残った左目は、凍りついたように何も映していなかった。


その隣に金色の魔物がいた。


ベルが影で見た、堂々としたたてがみの姿とは違って見えた。

たてがみはところどころ黒くくすみ、痩せた身体には、鎖のような黒い紋様が巻きついている。


ただ、目だけは強く金色に光っていた。


「遅かったな…」


男は割れた石像を一瞥した。

「封印を解く者が現れたと報告があったが、お前らのようだな」

男はルナを見ながら仮面の下の唇をわずかに歪めた。

「さて…こんなめんどくさい事を続けるより、お前らを片付ける方が手っ取り早いと思うわけだが…」


「お前、何を言ってんだ!何者だよ!」

レオンが剣を構えたまま言ったが男は答えなかった。


そのとき、ベルの腕の中でノアが目を開けた。


「…キィ」


ノアは小さな身体をがたがたと震わせている。


男の視線がノアに止まった。


「…ああ。出来損ないか。まだ生きているとは、運は良いようだな」


ベルの中で何かが切れた。

「ノアは出来損ないじゃない!」


「ふっ、まぁどうでもいいがな」

男は興味なさそうに言った。


不意に男が右手をかざした。

指先で空気をすっと撫でる。


次の瞬間、レオンの盾が真っ二つに割れた。


断面は石像と同じで、鏡のように滑らかになっていた。


(…こいつが石像を)


「レオン!」


ミリアが飛び込んだ。

男が空間を撫でるだけで、地面に叩きつけられた。


「ミリア!」

ベルが叫んだ。 けれど、男の目はもうミリアを見ていなかった。


男が金色の魔物へ手を伸ばした。


「来い、ソル」


魔物が一瞬だけためらうように止まり、

金色の目が、ベルとルナを見つめていた。


けれど次の瞬間、魔物の身体が光に溶けた。


光は男の身体に流れ込む。

黒かった髪が眩い金色に染まっていく。

身体が一回り大きくなり、両手に鋭い爪が伸びた。

人型の獅子のような、金色の戦士がそこに立っていた。


戦士の額に汗が浮かんでいた。

荒い息が仮面の下から漏れる。


(消耗が激しいんだ…長くはもたない)


しかし、ベルの希望は一瞬で絶たれる。


金色の戦士が地面を蹴った。


カイルの矢が空中で断たれる。

レオンが壊れた盾で受けようとして、そのまま壁まで弾き飛ばされた。

セシルも、カイルも、抗う間もなく倒れていく。


「ルナ! フィン!」

「グオオオッ!」

ルナが黒塔で見せた咆哮を放ち、フィンも風をおこし援護する。


金色の戦士はそれらを正面から受けても、わずかに眉を動かしただけだった。


「力が足りない…」


金色の戦士の爪がルナへ迫る。

ベルはノアを抱えたまま飛び込んだ。


短剣で受ける。 刃が粉々に砕けた。


「ぐっ…!」


床に叩きつけられた。

金色の戦士がゆっくりと近づいてくる。


(勝てない…リンカーさえ発動できれば…)


戦士が爪を振り上げた。


その瞬間。


チリン。


ベルの胸元で鈴が勝手に鳴る。

金色の戦士の動きが、明らかに鈍る。

そして仮面に細かなひびが走る。


「…っ、何だ!?」


男が頭を押さえた。

輪郭がぶれて、金色の光が揺らぐ。


「やめろ…頭がっ!」


そして、ベルは見た。


戦士の爪が振り下ろされる直前、金色の瞳がまっすぐベルを見ていた。


爪はベルの顔のすぐ横を通り過ぎ、床を砕いた。


「ソル…何故だ…」


男が呟いたと同時に、融合が解けた。

金髪が黒に戻り、魔物が男の隣にぐらりと膝をついた。


男は荒い息をしたままベルを見た。


その目には怒りも、憎しみもなかった。

ただただ深い混乱だけがあった。


「…撤退するぞ」


影が男の足元から渦を巻いた。


消える寸前、男がぽつりと呟いた。


「ベ…ル…?」


男は自分の口から出た言葉に戸惑っているようだった。


影がすべてを呑み込んで消えた。


静寂が戻った。


ベルはその場に座り込んだまま動けなかった。


(…俺の名前を?)


聞き間違いだったのかもしれない。

けれど、確かにそう聞こえた。


「ベル…今の何だったの?」


ミリアが震える声で言った。


「分からない」


床には白い仮面の欠片が一つ落ちていた。

ベルはそれを拾った。

裏側に黒い刻印が刻まれていた。

路地裏で見た男たちの腕と似た形だった。


◇


不意にルナが割れた石像に近付く。

石像から淡い光が溢れた。


光はルナを包んだ。


「ルナ!」


光が収まると、ベルの視界にステータスが浮かんだ。


【ルナ】

【種族:??? (封印解除 2 / 3)】


ベルの身体の奥が熱くなる。

「封印が解除された?」

ベルは壊れた石像を見つめながら呟く。


けれど、ベルは確認したい事が他にもあった。


腕の中でノアが小さく震えていた。


「ノア。…あいつを、知ってるんだな?」


ノアはベルを見上げた。

そして胸元の金色の欠片をぎゅっと握りしめ、小さく頷いた。


「キィ…」


仮面の欠片が、ベルの手の中で冷たく光っていた。

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