2話 初めての仲間
「リンカーが……切れたのか?」
川辺でベルは自分の髪を見ていた。
いつの間にか黒に戻っている。
ステータスを開く。
【HP】30 (+21)
【MP】0 / 19 (+10)
【速度】7 (+15)
「補正は、残ってる……?」
もう一度リンカーを意識してみる。何も起きない。
「MPが0だと発動はできないのか」
発動は切れても、補正は残る。
理由はまだ分からない。
ひとまず立ち上がった。
冒険者たちを待たせている。
◇
「おせえぞベル!」
「すみません」
薬草の袋を渡したとき、一人が気づいた。
「……おい。後ろの、それ何だ」
「俺の仲間です」
ベルは少しだけ胸を張った。
「契約しました」
一瞬静まり返る。
「お前が? 五年ずっと駄目だったお前が?」
「はい」
疑う目。ルナがベルの前に出て、低く唸った。
その様子を見て、リーダー格の男がふっと息を吐いた。
「……本当みてえだな」
肩を叩かれた。
「5年も、よく腐らなかったな」
予想していた笑い声はなかった。
ベルは何も言えず、少し恥ずかしそうに、ただ頭を下げた。
「しかし、銀色の狼か」
別の男が笑う。
「フェンリルだったりしてな」
「フェンリルは幻獣です。幼体でも魔力が桁違いで、ここまで小さくありません」
ベルは即答した。
「たぶん、ウルフの亜種だと思います。……図鑑では見たことないですけど」
「お前が知らねえなら、誰も分からねえな」
誰もが納得して笑った。
ルナだけが、じっとベルを見ていた。
帰り道、荷物は前より軽く感じた。
◇
町に戻ると、宿のおかみが目を丸くした。
「あら、その子は?」
「今日、契約しました」
「まあ!……よかったねえ、ベル」
それだけ言って、おかみは台所へ消え、ルナの分の肉と水を山ほど運んできた。
「今日はお祝いだよ。部屋に連れていきな」
狭い部屋に、ベッドが一つ。 ルナは肉を夢中で平らげると、ベッドの横で丸くなった。
ベルは天井を見ながら、今日のことを一つずつ思い返していた。
リンカーが、初めて反応したこと。
ルナの力が、自分に加算されること。
髪が銀色に変わること。
MPが0になると勝手に解除されてしまうこと。
発動が切れても補正が残ること。
胸元の鈴を、指でつまむ。
相変わらず、音は出ない。
ルナが、その鈴をじっと見つめていた。
「分からないことだらけだな」
ルナの耳が動く。
「でも、いつか全部分かるよな」 「クゥ」
ベルは笑って、ルナに手招きをした。
「こっちに来いよ。二人のほうがあったかい」
ルナが、ぴょんとベッドに飛び乗った。
5年間ずっと一人だった夜が初めて二人になった。
ベルの寝息が聞こえ始める。
その隣で、ルナがゆっくりと目を開けた。
眠るベルをじっと見つめる。
瞳がほんの一瞬だけ淡く光った。
すぐに消え、ルナは何事もなかったように目を閉じた。




