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Linker-紡ぐ者- ハズレ職テイマーからの成り上がり  作者: 黒銀ネルル


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第19話 銀の鈴

「碑文がある」


セシルが台座に近づいた。

古い文字が彫られ、ところどころ欠けていた。


「古語だ。…少しなら読めるかも」


セシルは、古い魔導書を読むのが好きだった。

指でなぞりながら、ゆっくりと読み上げる。


「……銀の牙は、……と共にあり」

「世界が……染まるとき、三つの座に眠る……は、目覚める」

「繋ぐ者の……里、アストリア……」


セシルの声はそこで止まった。


「ごめん。欠けてて、読めるのはここまで」


ベルは動けなかった。

「……アストリア?」


自分の姓だった。

孤児院で与えられた名前だと思っていた。


けれど…

(悪夢の中で聞いた、あの唸り声)

低く、長く、闇を這うような声。


さっき、5階層で聞いた遠吠えと同じだった。


「あの夜村を襲ったのは…」

声が震えた。

「この霧に染まった魔物だったのか」

誰も何も言えなかった。


そのとき、ベルの胸元で鈴がまた鳴った。

チリン。


――いつか、この鈴が鳴る日が来る。

母の声が頭の奥で重なった。


鈴がひとりでに浮き上がった。

石像の窪みへ吸い込まれるように収まる。

石像の目が淡く光った。


光はルナを包んだ。


「ルナ!」

ベルが手を伸ばした。


光が収まると、ルナはベルの足元に座っていた。 いつもと同じ小さな銀色の狼。


ただ、ベルの視界にはステータスが浮かんでいた。


【ルナ】

【種族:??? (封印 1 / 3)】

【スキル:クローエッジ ???】


「…封印?」


3つ。

この街には迷宮が3つある。


「残りの2つにも同じ石像があるのか」

ルナがベルを見上げた。

その瞳は、窓辺で見たときと同じ光を宿していた。


けれど、今度は怖くなかった。


    ◇


ギルドに戻って報告を済ませると、ガレスが静かに頷いた。


「黒塔の異変はこれで収まるだろう」

「あの。ガレスさん」


ベルはまっすぐに尋ねた。

「俺の名前を見て手が止まりましたよね?アストリアという名前に心当たりがあるんですか?」


ガレスはしばらく黙っていた。

やがて、窓の外を見た。


「10年前、一夜で滅んだ里がある。名はアストリア。ギルドも調査に入った」

「…」

「俺はその調査隊にいた。生き残りはいない…そう報告した」


ベルの喉が鳴った。

「だから、お前の名を書類で見たとき、驚いた。確かめたかったが、先に自分の目で、お前を見ようと思った」

「教えてください!俺の故郷の事を!」

「当時の調査記録は、ギルド本部にある。だが、閲覧できるのは、Aランク以上の冒険者だけだ」

「Aランク…」


ガレスはベルに向き直った。

「それと、黒塔の異変が出始めたのは、10日ほど前。お前がこの街に着いた頃だ」


ベルはルナを見た。

「偶然とは思えん。残りの2つの迷宮にも、同じ石像があるという話だ。行くなら覚悟しておけ」


ベルはまっすぐに頷いた。


「行きます。…Aランクにも必ずなります」


レオンが肩を叩いた。

「付き合うよ」

「私も!」

「…俺もだ」

「もちろん!」

4人の声が重なった。


その夜、星降り亭の部屋でベルは窓を開けた。

街の灯が遠くまで広がっている。


首の鈴が風に揺れた。

チリン、ともう一度鳴った。


ルナがその音に耳を傾けて顔を上げた。


街の遠く、闇の向こうから。

鈴の音に答えるように、低い遠吠えが、一度だけ響いた。


黒塔とは別の方角からだった…

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