第14話 進化
「これって……」
ベルはすぐに思い当たった。
魔物は一定のレベルに達し、魔素が濃い場所など、決められた条件を満たすことで進化することがある。
迷宮は魔素が濃い。
フィンはちょうど、その条件に届いていたのだ。
光が弾けた。
風が巻き起こり、ベルは腕で顔を覆った。
そして目の前に、淡いウィンドウが浮かんだ。
【進化を確認】
【リンカーによる補正を確認】
【進化先に補正を加えます】
「……補正?」
光が薄れると、そこには一回り大きくなったフィンがいた。
翼には鮮やかな青い羽が並んでいる。
羽ばたいた瞬間、バチッと青白い光が弾けた。
「電気……?」
ミリアが目を細める。
ベルのステータスに、新しい名前が浮かんだ。
【フィン】
【種族:ボルトウィング】
【速度 25 → 41】
【魔力 22 → 36】
【属性:風 + 雷】
(進化の前より、明らかにステータスが伸びてる。…リンカーは進化にまで関わるのか)
「ベル、今何て言った?」
「あ、いや。何でもない。この種類は俺も初めて見る」
ステータスはベルにしか見えない。
だから嘘ではなかった。
「ピィ?」
フィンが首を傾げる。
自分の翼を見て、不思議そうにしていた。
「なんか、進化したのに、本人が一番分かってなさそう」
ミリアが笑い、ベルも思わず笑った。
◇
「…来る」
カイルが顔を上げた。
通路の奥で、羽音が響いた。
黒い影が群れになって押し寄せる。
「ケイブバット!」
レオンが盾を構える。
「数が多い。厄介だぞ」
ベルは頭を回した。
(ケイブバットは、超音波で獲物の位置を探る。音の乱れに弱い)
「フィン!」
「ピィッ!」
フィンが、大きく羽ばたいた。
風が通路を走る。
風の中を、バチバチと光が弾けた。
ケイブバットたちが、空中で動きを乱した。
そこへ青白い光が一直線に走る。
バチンッ!
先頭の数匹が痺れて落ちた。
「今だ!」
レオンが叩き、ミリアが斬る。
セシルの魔法とカイルの矢が、残りを片付けた。
静寂が戻る。
「すげえな、今の」
「フィン!すごいよ!」
フィンは少し得意そうに胸を張った。
ベルは、フィンの頭を撫でながら小さく呟いた。
「……ありがとう」
そのときだった。
迷宮の奥から叫び声が響いた。
「誰か…! 誰か、助けてくれ…!」
聞き覚えのある声だった。
ギルドでベルをハズレ職と呼んだ、大柄な男の声。




