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ルシアスには、幼馴染が二人いる。
自身の護衛をしている公爵家次男ロイド・ノックスと、侯爵家長女のウィリディス・ミリアだ。王城という限られた世界の中で暮らしていた幼少期のルシアスにとって、この二人こそが小さな世界のほぼ全てであった。彼らがいたから、毎日が輝いていた。やがて、10代も後半になると、ウィリディスとはいつも一緒に遊ぶということは流石になくなったが、かけがえのない存在であることにはかわりない。
今は、そのウィリディスこと、ウィリの邸宅を訪れている。少しの間王都を離れる挨拶と、引取りのためだ。
ルシアスは、ロイとソファで寛ぎながら焼菓子を頬張る。ここでは、ロイもルシアスの後に控えることはない。いつもの昔からの三人となる。
「それで、解決できなかったらどうなるの?ルシアスは何か罰を受けるのかしら。もしかして、王子剥奪とか。それはそれで面白そうだけど。」
ウィリが、ガラス玉のように美しい緑色の瞳を輝かせながら問いかける。定例報告会議でいただいた課題のことだ。
「ルシアスが王子じゃなくなったら、私も職を失ってしまうなあ。折角、王族の護衛まで上り詰めたのに。公爵家といっても、次男は大変なんだぞ。ルシアス、ちゃんと結果を出してくれよ。」
言いたい放題だ。でも、母も兄弟姉妹もいないルシアスには、こんな会話が嬉しいのだ。
「実際解決できなかったらどうなるのか、私も全然想像がつかないな。そもそも私は今のところ、全然期待されてなさそうだし。」
ロイが続ける。
「前評判が悪いからなあ。駄目だったら、『やっぱり使えないヤツ』認定で消えるのが関の山ってところかな。」
「消えるって、暗殺とかされちゃうの?もしそんな事になりそうなら、ルシアス、私が匿ってあげるわよ。」
「殺すほどの価値がないだろ。」
ーロイよ、なかなか言ってくれるな。ー
ルシアスは、砕けた雰囲気のまま、多少戯けたように話す。
「私の地位向上と後顧の憂いを絶つ為にも、これは解決しないといけない案件だな。皆が私と繋がりたくなる程、魅力的な人間にならねばならないな。」
「あら、見かけはとても魅力的よ。」
「見かけだけなら、私はハリボテ王子ではないか。中身の話をしてるんだよ。」
「わかってるわ。でも個人的には、ルシアスの中身の良さまで他の人に教えたくない気もするけど。皆のルシアスになってしまうのは、なんだかつまらないわ。」
「ウィリのいうこともわからないでもない。が、ルシアスはやっぱり王子なんだよな。逃げられない立場なんだよ。逃げられないなら、自分の立ち位置を確固たるものにしたいってことなんだろ?」
やはりロイはよくわかっている。
「そういうこと。やらねばならないなら、受けて立たないとね。やれるところまで、やってみるよ。」
「らしいね」
「らしいわ」
二人が同時に同じ言葉を発する。
ついでにウィリがしみじみと余計な事を言う。
「そうね、はたから見たら、伸び代しかないわね。」
色々な意味で、感無量である。




