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仰げば尊し  作者: 孤鶴
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1-10

秋晴れの爽やかな朝、城門から豪奢な馬車とそれを護衛する騎馬隊が整然と出立する。


アウルムは、ルシアスをとても豪勢に送り出してくれた。自分側の人間であることを示すためだ。そんな光景を見た者たちにより、ルシアスが帰るころには、城内は色々な思惑が渦巻いていることだろう。


城門を出て窓のカーテンを閉めようかと目を向けた時、ルシアスは街並みの中の長い行列に気がついた。とある建物の前に30人ほどが並んでいる。向かいに座るロイに尋ねる。

「ロイ、なかなかに長い行列があるぞ。あそこの店は何だったかな。近頃、街に行くことがなくなってしまったから、忘れてしまったよ。」

ロイがやや呆れた様に答える。

「壁に貼ってある紙をよく見てみろよ。」


身を乗り出して、店の壁に貼ってある紙を凝視する。『ルシアス殿下御用達』『ルシアス殿下大絶賛』と書いてある。

何のことだろうかと一瞬考え、思い出し、驚いた。

ーあの時、褒めた散髪屋かー

ありがとうの言葉がここまで拡大解釈されるとは、王族とは難儀なものだ。ロイの言葉もあながち間違っていなかったのだ。王位継承権が上がると、町中での対応も変わり、その宣伝効果もなかなかのもののようだ。乾いた笑いが出てしまう。


気を取り直してカーテンを閉め、ルシアスは隣の側仕えの青年に声をかける。サスだ。今日は、こげ茶色の鬘を被って、変装かつ日焼け防止をしている。この後、休憩地点で役目交代予定だ。

「サス、旅はいいものだな。その土地で育ったものを食べ、雰囲気を味わう。旅の醍醐味だな。」

「そうですね。私はこの街を出た記憶がないので、とても楽しみです。この街の外はどんなところなのか、見てみたくてたまりません。」

「ウーベル地方は穀倉地帯でもあるが、放牧も盛んらしい。チーズなんかも美味しいらしいぞ。」

ロイも話に加わり、楽しい会話が繰り広げられる。

馬車の中は三人だけだ。こういう時だけは、幼いころのように寛いで話せる。貴重な時間だ。


馬で行くと二日の行程も、馬車では4日ほどかかる。夕刻の宿泊時にはルシアスが馬車から登場せねばならないので、それまでには馬車に戻らないといけない。ルシアスは、サスに自分の上衣を渡す。今日の衣装はエンジ色の装飾過多な衣装だ。アウルム自らが仕出せさせた特別仕様である。ルシアスの好みではない。そして、その衣装に合わせたつばの大きな帽子には、長くてフワフワの大きな羽飾りが付いている。なんだか頭が悪そうに見える帽子だ。これも、ルシアスの好みではない。好みではないので、そのフワフワを引き抜いて、適当に放り投げ、サスに手渡す。

サスが驚いて目を見開く。

「良いのですか?アウルム殿下からのものを、こんなにして。」

「構わない。邪魔だ。何か言われたら、羽根が大きすぎて風で飛ばされたとでも言えば良い。」


ルシアスは不思議な人だと、サスは思うことがある。サスがルシアスに初めて会った時のことは、意識が朦朧としていてよく覚えてない。しかし、後に会った時、子供ながらにその整った容姿に驚いた事を覚えている。優しく微笑むその人は、繊細で、儚く、そっと触れないと壊れてしまいそうな人に見えた。


しかし、そう見えただけであって、実際は少し異なっていた。繊細で、聡明で、情が深くはあるのだが、よく毒を吐き、己を曲げたがらない、気難しい人間でもある。時々、とんでもない事を言ったり、やったりする。見かけによらず、行動的で頼もしい人だ。


渡された上衣を羽織りながら、そんな事をサスは考えていた。一方、ロイから渡された外套をさっと纏って、使い込まれた帽子を被り、腰に剣を履けばルシアスの準備は完了だ。ロイも身軽な格好になっている。馬車が程なく最初の休憩地点に着くと、ルシアスとロイは予め待たせておいた馬にそれぞれ騎乗し、あっという間に去っていった。いつか自分も同じように旅ができたら良いのにと思いながら、サスは二人を馬車の中から見送った。

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