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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第4章 北部冒険編
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第209話 フーゴとの再会

「すみません、遅くなりました」

 造兵局に入るなり、トキオはそう声をかけた。


 入ってすぐのところでウェスターが他の局員と話をしていたが、その声でトキオの方を向いた。

「ああ、トキオさん、お疲れさまです・・・どうしました、暗い顔をして」

「え?・・・まあ、ちょっと・・・」

「・・・さては、王女様になにか無理な要求をされましたね?」

「え?どうしてわかったんです?」

「いつものことですから」

 そう言ってウェスターは微笑んだ。


「ああ、そうなんですか・・・わかる気がする」

 トキオは、ため息をつきながらそう言った。


「あの人は、言い出したらききませんから、あきらめることですね。何を言われたんです?」

「毎日10時から個人的に合気道を教えろと・・・」

「え!?そりゃまた突然ですね。しかし、合気道?・・・ああ、トキオさんは柔道の他にも格闘技をやられてるんですよね。その一つですか」

「そうです」

「私も興味ありますね。いつか、見せていただくことは可能でしょうか」

「それは全然構いませんよ。王女様との練習を見に来られたらどうです?」

「いえ、それは遠慮しておきます。何を言われるかわかりませんから」

 ウェスターは苦笑しながら言った。



「王都じゃ色々と苦労してるみたいだな」

 そこで、左手の柱の方からどこかで聞いたような声がしたのでトキオはそちらを見た。


「フーゴ!フーゴじゃないか!」

 トキオは、思わず小走りでフーゴに歩み寄った。


「どうしたの?なんで王都に?」

「兵器開発の助言を頼まれた。お前だけじゃ不安なんだってさ」

「ええっ!?・・・でも、確かにフーゴがいてくれると色々と助かるよ」

「ははは、冗談だよ。最初に銃を作った人間だってのと、まだ、王都じゃ作られていない徹甲弾とホロ―ポイント弾、それと、自動拳銃や刀を作る手順を知りたいってことで呼ばれたんだ」

「ああ、そういうことかー。確かに、実際に作ってるフーゴに聞くのが確実で早いね」

「そういうことだな」

「でも、刀も作ることになったんだね」

「先月、お渡しした刀を勇者様が気に入ったみたいで、試しに数振り作ることになったんだってさ」

「ああ、勇者様、気に入ってくれたんだね。なんか、うれしいな」

「まあ、切れ味は抜群だし、軽くて振りやすいからな・・・それより、なぜ、王都で自動拳銃とホロ―ポイント弾を作るよう進言しなかったんだ?」

「それは、まず、ライフル銃とリボルバー式拳銃の生産を安定させたかったからだね。王都では、まだ、兵士への銃の普及率が低いから、まずはそれを高める必要があったんだよ」

「やっぱりそういうことか。了解だ」

「ホロ―ポイント弾も同じことだね。通常弾として作ってるマグナム弾の生産優先と、徹甲弾も試作を始めたところだから、そこにホロ―ポイント弾も、ってことになったら生産現場が混乱すると思ってね」

「まあ、そうだろうな」

「でも、アドバイスに来たってことは、ホロ―ポイント弾は出来たの?」

「ああ、今回のトロール討伐になんとか間に合ったよ」

「そうか!それは良かった!」

「ほら、これだよ」

 フーゴは、ポケットからホロ―ポイント弾を取り出してトキオに渡した。


「おおー!ちゃんとできてるじゃない!サスガだな~」

 トキオは、本当に嬉しそうな顔で言った。


「かなり苦労したんだぞ。お前がいなかったしな」

「あ、ごめん、ごめん。でも、ちゃんと作れてるから問題ないね」

 トキオはそう言って笑った。


「・・・まったく」




 それから、トキオも交えて、フーゴからの徹甲弾とホロ―ポイント弾を作るうえでのポイントを聞いた上で、今後の生産計画を話し合った。



「では、午前中はこのへんにしましょう。ありがとうございました」

 ウェスターは、そう言うとトキオとフーゴに向けてお辞儀をした。


「とんでもないです。午後もよろしくお願いします」

 フーゴはそう返答して、お辞儀を返した。


「ちょうどお昼だな。いつも、兵士用の食堂で食べてるから一緒に行こう」

「お、そんなところがあるのか。興味深いな」


 そうして、トキオとフーゴは並んで兵士用の食堂へ向かった。



「ほう、ここがそうか。すごく広いんだな」

 フーゴは、食堂全体を見渡しながら感心して言った。


「クロアはもう来てるね。ほら、あそこ」

「お、そうか!・・・ああ、確かに・・・え?」


 フーゴはクロアの姿を確認したが、それと同時に、周りを若い男の兵士たちに囲まれて色々と世話を焼かれているのを見て面食らった。


「・・・あれは一体どういうことなんだ?」

「え?・・・ああ、あれね。ここの兵士たちは男ばっかりだから、クロアは凄くモテモテなのさ」

 トキオはそう言って苦笑した。


「ほ、ほお~・・・・アティムでの扱いとは全然違うな」

「ああ、アティムに来る早々に偉そうな口を聞いちゃって第一印象が良くなかったからね。まあ、その後、あいつの実力が本物だってのはみんなもわかったから邪険には扱わなかったけど、他にも若い女の冒険者がいたしね」

「そうだったな」

 フーゴはそう答えたが、まだ、驚いた顔をしていた。


「さあ、行こう。ここは、このトレーに自分の好きな料理を取る形式になってるんだ」

「ふーん、よくわからないから教えてくれよ」

「うん。俺の後からついて来て、俺のやることを真似してくれればいいよ」

「わかった」



 トキオは、フーゴを連れて料理を一通りとると、フラビアが一人でポツンと座っているテーブルに行った。


「失礼するよ」

 トキオのその声で、フラビアは顔を上げた。


「ああ、今日は遅かったな・・・ん?この人は?」

 フラビアは、フーゴを見ながら聞いた。


「アティムの鍛冶屋さんでフーゴだよ。王都で兵器開発の助言をするために呼ばれたんだって」

「ほう、アティムの人か。よろしくな」

「よろしくお願いします」

 フーゴは、少し驚いた顔でフラビアを見つめながら言った。


「兵器開発の助言をするってことは、かなりの腕利きの鍛冶屋なんだろ?」

 フラビアは、トキオに向かって聞いた。

「フーゴはね、拳銃、ライフル銃、刀を南部で最初に作った人なんだよ」

「ほお、そりゃスゴいね!いいものが出来そうだね!」

 フラビアは、本当に感心した顔をしていた。


「いえ、それほどでも」

 フーゴは、なぜか、フラビアの言葉にひどく照れていた。


「この人はどういう人なんだ?」

 フーゴは、トキオに小声で聞いた。


「近衛師団の兵士長だよ。つまり、クロアの周りで飯を食ってる兵士たちの親分ってこと」

「え!?そんなスゴい人なのか!」

 フーゴは驚いて、フラビアをじっと見つめた。


「おいおい、そんなに見ないでくれよ。そういうのには慣れてないから恥ずかしいだろ」

「あ、すみません」

 フラビアの言葉に、フーゴは慌てて頭を下げた。


「じゃあ、食べよう食べよう。王女様にいたぶられて腹ペコだからな」

 トキオは、フラビアの対面の席にフーゴと並んで座るとそう言った。


「え?セシル王女と何かあったのかい?」

 フラビアが怪訝な顔で聞いた。


「いやあ、朝、お城に着いたら、王族と勇者様専用っていう訓練場に連れていかれてお相手をさせられたんだよ」

「はあ?何をしたんだよ」

「槍で剣のお相手をさせられて、弓の腕を見られて、最後に合気道を見せたら面倒なことになってね」

「面倒?」

「毎日、合気道を教えろってさ」

「わはははははは!」

 トキオの返答で、フラビアはけたたましく笑った。



 その笑い声を聞いて、クロアがこっちを見た。


「あれ?フーゴ、フーゴじゃないの!」

 クロアは、そう言うとこっちのテーブルに速足でやって来た。


「おお、クロア。元気そうだな」

「そっちもね!どうしたの、いきなりこんなところに現れて」

「兵器開発の手伝いに雇われたのさ」

「え?そうなの?スゴいじゃない!」

「うーん、まだこれからだからな。ちょっと責任を感じて緊張してるよ」

「なに、らしくないこと言ってるのよ。自信持ちなさいよ」

「自信がないわけじゃないけど、失敗できないってのがなかなかに重圧だな」

「ああ・・・それは、そうね。まあ、頑張ってね!しばらくいるんでしょ?」

「最長で1か月って約束だ」

「そうなんだ。じゃあ、食事の途中だからまたあとでね」

「ああ、またな」


 クロアが元の席に戻ると、フーゴは、前を向いて食事を食べ始めたが、相変わらずフラビアをチラチラと見ていた。


 途中でトキオがそれに気づいた。


「どうしたの?フラビアが気になる?」

 トキオは、口元に笑みを浮かべながら聞いた。


「あ、いや、女の兵士はいないって言ったくせに、こんなキレイな人がいるじゃないかと思ってな」

「ああ~・・・フラビアは、美人でスタイルも抜群だけど、かなりの豪傑だから兵士たちに怖がられてるんだよ」

 トキオは、フラビアをチラッと見て言った。


「お前なあ、もっとマシな紹介の仕方があるだろうが!」

 フラビアは、怒った顔でそう言ったが、頬が少し赤くなっていた。


「ウソは言ってないよ」

 トキオはそう言って舌を出した。


「上官は部下に厳しくて当たり前だ!そのくらいじゃないと統率が取れなくなるだろ!」

「別に悪いとは言ってないじゃない。それに、フラビアが美人だってのは俺も同意だからね」

「そういうのはやめろって言ってるだろ!調子狂っちまうんだよ!」


 フラビアはそう言うと、俯いて黙々と食事を食べ始めたが、顔全体がかなり赤くなっていた。


 その様子を、フーゴは微笑ましそうに見ていた。

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