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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第3章 南部激闘編
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第205話 フーゴの決心

 その日の夜、3人の魔導士が夕食を終えてお酒を飲みながら今後のことを話し合っていた宿泊場所であるアルアビスのホテルのラウンジに、ホテルの外で警護をしていた兵士の一人が入って来た。



「魔導士様、外にアティムのフーゴと名乗る者が参っておりますが、いかがいたしましょうか」

「そうか!すぐ通してくれ!丁重に扱うのだぞ」

 モルナール魔導士は、表情を緩めてそう言った。


「は!かしこまりました!」

 兵士は急いで部屋を出て行くと、すぐにフーゴを伴って戻って来た。


「おお、フーゴ、良く来てくれたな」

 フーゴの姿を見ると、モルナール魔導士は立ち上がってフーゴのところまで速足で歩いて行き、ブルーメ魔導士とイディアス魔導士もそのあとに続いた。


 モルナール魔導士は、フーゴの目の前まで来ると握手の右手を差しだした。

 フーゴは、あわててその右手を取って握手に応じた。


「それで、良い返事を持って来てくれたのかな?」

 モルナール魔導士は、フーゴの目をしっかりと見ながら聞いた。


「はい、王都に同行させていただくことにしました」

「そうか!それはありがたい!感謝するぞ!」

 モルナール魔導士は、喜びの表情を露わにすると、フーゴの両肩を掴んだ。


「本当にありがたいことだ。よければ決心した理由を聞かせてもらえるか」

 ブルーメ魔導士が聞いた。


「はい・・・最大の理由は、少しでも銃を普及させるお役に立てるならと考えたことです。この1か月で2度も魔族からの大規模な攻勢があったことで、他の土地でも同様のことが起きると考えました。昨日、お伺いした話ですと、王都とその周辺の銃の普及率はまだ低いとのことでしたので、私がその状況を改善できる助けになれるのなら、と、考えたのです」

「そうか!それは必ずそうなるであろうぞ」

「それともう一つは、もう、かなり長いこと武器を作って来ましたが、それはあくまでこの辺境でのことです。私の師匠もアティムの人間で、私は彼から教えられたとおりに武器を作って来ただけですので、以前から、まったく違う製法で武器を作っている者もいるのだろうという思いはありました。それを確信に変えさせてくれたのが、トキオが持ち込んだ刀の製造方法でした。それを思い出した時、今回、王国軍の造兵局というこの国のトップに位置する兵器開発工房で仕事をする機会を頂けましたので、そこにどんな未知の技術があるのか見てみたいということを思いました」

「うむうむ、必ずやそなたに有益な技術や製造法が得られるだろう」

「はい、期待しております。ただ、ひとつだけお願いがございます」


「なんだ?大抵のことは便宜を図るぞ」

 モルナール魔導士が言った。


「私が伝えられることを伝え終わったら、その時点でアティムに帰していただけますでしょうか。そして、それが完全でなかったとしても、滞在期間は最長で1か月ということでお願いしたいと思います」

「ふむ・・・わかった。こちらから無理にお願いしていることだ。その点は約束しよう」

「ありがとうございます」

「他には?」

「いえ、これだけです」


「よし。我々も酒を飲んでいたところだ。そなたも一緒に飲みながら、今後のことを話そうではないか」

 モルナール魔導士が、今まで自分たちが座っていたテーブルを指しながら言った。


「ありがとうございます。しかしながら、長期間王都に滞在するとなると色々と準備が必要なので、本日はこれで戻らせていただきたいと思います」

「そうか?・・・まあ、王都にいる間にまた機会もあるであろう。了解した」

「わがままを言って申し訳ございません」

「なになに、頭を下げるのはこちらの方だ。それでは、明日の朝、8時に出発するからそれまでにここに来てくれ」

「わかりました。王都までは5日かかると聞いています。長旅に同行させていただきますが、よろしくお願いいたします」

「いや、我々も長々と王都を空けるわけにはいかないので、できるだけ早く王都に戻るため、急行便の馬車で戻る。先月は、すでにウゼマスの街が落とされており、急を要したので1日半で王都から参ったが、今回は、魔物から攻撃を受けていたわけではなかったので、少しスピードを落として2日半で参った。戻りも同じになると思うので、そなたも、我々と同じ馬車に同乗して欲しい」

「かしこまりました」

「よろしく頼むぞ」

「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。それでは、失礼いたします」


 フーゴは深々と一礼をすると、兵士に付き添われてラウンジを出て行った。



「良かったな。これで、王都の兵力も増強される」

 フーゴが出て行くと、イディアス魔導士が言った。


「ああ、王もお喜びになられるだろう」

 モルナール魔導士が答えた。


「では、私から王子様にはお伝えして来よう」

 ブルーメ魔導士はそう言うと、すぐにラウンジから出て行った。


「よろしく頼む」

 モルナール魔導士とイディアス魔導士は、背後からそう声をかけた。





 次の日の朝、フーゴの動向が気になったので、パーシーはいつもより早く家を出て、フーゴの店に寄ってみた。

 フーゴの店は開いていた。


「うーす、誰かいるか~」

 パーシーは、店に入ると大きな声で奥に向かってそう呼びかけた。


「はい!ただ今!」

 そう言って現れたのは、フーゴの弟子のアントンだった。


「おお、アントン。おはよう。フーゴは?」

「おはようございます。師匠は王都に旅立たれました」

「え?結局、行くことにしたのか?」

「はい。王都に行けば得られることも多いだろうとおっしゃいまして」

「ああ、そうだろうな。でも、それだけの理由で?」

「いえ、あとはトキオさんのお屋敷が見たいっておっしゃってました。できれば、とんでもなく美味しくて豪華だと言われているお屋敷の料理も食べたいと」

「はあ?なんだよそれ」

「だって、ものすごい豪邸で、食事もこの街では食べられないほど絶品なんでしょ?俺も見たいし食べたいですよ」

「まあ、確かに俺もそう聞いてるけどな」

「でしょ?俺だったら、そのためにだけでも王都に行ってみたいですよ」

「・・・やれやれ、どうなってんだこの鍛冶屋の連中は」

「パーシーさんは違うんですか?」

「まあ、俺も食べてみたいとは思うけどな。屋敷の方は、想像もできないのであんまりどうでもいいかな」

「ええっ?結構、好奇心が薄い人だったんですね」

「やかましい!・・・まあ、理由はどうあれ、フーゴが出かけたんならいいや。店は、フーゴがいない間もお前が開けるのか?」

「はい!そのつもりです。俺も大分腕を上げてますから大丈夫ですよ」

「ホントかなあ・・・じゃあ、邪魔したな」

 パーシーはそう言うと、軽く右手を上げて店から出て行こうとしたが、その後ろからアントンが言った。


「あ、そうそう、少しでも早く銃を普及させて魔物の被害を減らしたい、ってのも言ってました!」

 その言葉を聞いたパーシーは、ピタッと足を止めてからゆっくりと振り返った。


「バ・カ・ヤ・ロ・ウ。最初にそれを言え!・・・ホントにお前に店を任せて大丈夫なのか?」

「大丈夫ですって!」

 アントンは、笑顔でそう言った。


「やれやれ・・・」

 パーシーは、そう言って首を振ると店を出て行った。


「まいどありー!」

 アントンがその後ろから、そう声をかけた。




 そのころフーゴは、魔導士たちが泊まっているホテルのそばまで馬車で来ていた。



「着きましたよ」


 馭者のその言葉に礼を言うと、大きなリュックを背中に背負ってから馬車を降りた。



 8時10分前にもかかわらず、魔導士3人はすでに外に出て来ていて、王国軍の将校と何やら話をしていた。


 フーゴが近づいて行くと、最初にイディアス魔導士が気づいた。


「おお、フーゴ。来たか。よろしく頼むぞ」

 そう言って軽く右手を上げた。


「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 フーゴは、そう言いながら会釈をした。


 その言葉で、モルナール魔導士とブルーメ魔導士もフーゴの方を見た。


「ああ、来たか・・・・なんだ、その大きな荷物は?」

 モルナール魔導士は、フーゴの姿を見ると驚きながらそう言った。


「あ、はい。やはり、使い慣れた自分の道具が良いので、一通り持って来ました」

「それにしても大き過ぎるだろう。その大きさでは、我々が乗る馬車には積めないな。兵士が使う幌馬車に乗せるが、構わないか?」

「はい、急行便の馬車は揺れると聞きましたので、周りに緩衝用の布を詰めてあるから大丈夫です」

「・・・もしかすると、そのために荷物が余計に大きくなったということか?」

「ああ、そうですね。それはあると思います」

「もったく、面白い男だ・・・おい、あれを積んでくれ」


 モルナール魔導士が、そばにいた兵士に声をかけると、その兵士はフーゴのところに行きリュックを受け取った。しかし・・


「うわっ!重い!」


 そう言って地面に落としそうになったので、フーゴが慌てて支えた。


「ほとんどが金属類ですからね。かなり重いですよ。落とさないように注意をお願いします」

「・・・ああ、わかった」

「あ、俺が馬車まで持って行きますよ。どれですか?」

「そうか・・・こっちだ」


 フーゴは再びリュックを背負い直すと、兵士について目的の幌馬車の方へ歩いて行った。



「ふむ、かなり力はありそうだな」

 その様子を見ていたイディアス魔導士が言った。


「このような辺境で鍛冶屋をやっているのだ。力仕事が多いだろうから、そうなるだろうな」

 ブルーメ魔導士が答えた。


「なんにせよ、これで造兵局も喜ぶであろう。戻ってきたら出発するぞ」


 モルナール魔導士の言葉にブルーメ魔導士とイディアス魔導士が頷き、周りにいた将校や兵士たちは、それぞれの馬車に移動して行った。




 アロイス王子は、魔導士たちが乗る馬車の一つ後ろの豪華な馬車にすでに乗っており、フーゴが幌馬車に歩いて行く様子を目で追っていた。


 その隣でセシル王女は、すでに寝息を立てていた。

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