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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第3章 南部激闘編
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第204話 魔導士からの依頼

「それらは、移動用や運搬用にトキオが考案した機材なのだが、そのうち出回るだろうから説明は割愛する。それより、このリボルバーとかなり違うように見える自動拳銃の仕組みが知りたい。パーシーは撃って見せるのが早いと言っていたが、見せてはもらえぬか」

「あ、はい。それは大丈夫です。では、こちらへどうぞ」

 フーゴは、手で奥への通路を指し示した後、先に立って歩いて行った。

 他の4人は、モルナール魔導士を先頭に、そのあとに付いて行った。



 途中、剣や銃を製造していると思われる工房を通ったので、魔導士たちは興味深げにそれを見ていた。


「街の鍛冶屋なので治具じぐかまなどは造兵局のものより簡素だが、見たことのない機材があるな」

 イディアス魔導士が、うしろからモルナール魔導士にそう声をかけた。


「そうだな。このあたりの技術や知識も提供してもらう必要がありそうだな」

 モルナール魔導士は、小声でそう返答した。



「ここです」

 フーゴが一番奥の部屋のドアを開けながら言った。


 魔導士たちとパーシーが中に入ると、そこは、10マインほどの奥行きのある幅1.5マインほどの縦長の部屋だった。

 そして、向こう側は土壁になっていて、その手前に四角い木製のまとと思われるものが左右に2つ置いてあった。


「ここは、元々、作った弓の精度調整のための部屋だったんですが、銃が出来てからは四方の壁に防音を施して銃の調整を主に行うようになりました。銃がみんなに行き渡ってからは、弓は全然売れなくなっちゃいましたからね」

 フーゴはそう言って苦笑した。


「ここなら外に音はほとんど漏れないので大丈夫です」

 フーゴはそう言うと、右手の棚に行き、自動拳銃を1丁手に取った。

 それから、その棚の別の段に収めてあったマガジンを一つ取って弾が入っているのを確認すると拳銃に装填した。


「リボルバー式拳銃と決定的に違うのは、弾を銃身の位置へ送り込む動作が必要だと言うことです。リボルバー式なら、そのような動作は必要なく、弾が入っている回転弾倉を回すだけです。今、お見せします」


 フーゴはそう言うと、3人の魔導士目の前、顔より少し下に拳銃を持って行き、左手で拳銃の上部を掴んだ。


「今から、この銃の上の部分だけを後方にスライドさせます。その時に、弾の動きが見えますから上から見ててください」


 その言葉で、3人の魔導士は顔を寄せ合うようにフーゴが持った拳銃を上から覗き込んだ。


「では、ゆっくりスライドさせますよ」


 フーゴが、その言葉通りに銃の上部を後方にスライドさせると、マガジンに収めてあった弾丸が先端をやや上にして飛び出して来て、前に戻す動作とともに銃身に収まった。


「ほう、こうなるわけか」

 モルナール魔導士が感心したように言った。


「はい。あとは、リボルバー式と同じで引き金を引くだけです。違うのは、リボルバー式だと薬きょうが銃の中に残ったままになるのに、この自動拳銃だと上から飛び出して来て地面に落ちるということです。ちょっと撃って見せますね。大きな音がしますからから耳をしっかり塞いでてください」


 そう言われて、魔導士たちとパーシーはあわてて両耳に人差し指を突っ込んだ。


「いきますよ」


 フーゴはそう言うと、立て続けに3発撃った。

 魔導士たちは、それと同時に、薬きょうが銃の上部から飛び出して来て地面に落下して行くのを見た。


「なるほど。ライフル銃と同じということか」

 モルナール魔導士が言った。


「あ、ライフル銃の射撃はご覧になったことがあるんですね。そうです、その通りです」

 フーゴは頷きながら言った。


「ライフル銃で思い出したが、本日の戦闘を見た限りだと、兵士のほとんどがライフル銃を持っていたのに対し、冒険者たちはほとんどが拳銃しか持っていなかったようだったな。あれはどういうことなのだ?ライフル銃の方が銃弾が長い分火薬量が多く、銃身も長いので威力が圧倒的に高いと聞いたのだが。そなたは、本日の勝因はホロ―ポイント弾だと言っていたが、先ほどのフーゴの話からすると、ホロ―ポイント弾を持っていたのは冒険者だけなのだろう?それなのに、兵士もトロールを倒せていたのは、やはり拳銃とライフル銃の威力の違いがあったからではないのか?」

 モルナール魔導士は、パーシーの方を向くと聞いた。


「・・・はい、その通りだと思います。俺たちの多くが拳銃しか持っていないのは、冒険者の討伐対象が動物型魔物だからです。動物型魔物は、ほとんどが森の中にいるため、当然、俺たちは森の中で討伐をすることになります。そうすると、不意に魔物に遭遇することが多いですから、取り回しの悪いライフル銃では素早く狙いを付けるのが難しいため使い勝手が悪いんです。遠くから魔物を発見することもありますが、木々が邪魔になって狙えないことが多いので、結局は接近してから仕留めますし」

 パーシーは、いきなり話を振られて面食らったたため一瞬言葉に詰まったが、その後の返答はスムーズだった。


「ああ、そういうことか。言われて見れば確かにそうだな」

「はい、だからこそホロ―ポイント弾は有り難いですし、今、拳銃用の徹甲弾も作ってもらってるところです」

「拳銃用の徹甲弾もあるのか」

 モルナール魔導士は、フーゴに視線を戻すと聞いた。


「作っている途中で、まだ売りには出していませんが、ほぼ完成しているのでもう少しです」

「そうなのか。それでは、ますますそなたの力が必要だな」

「はい?」


 そこで、モルナール魔導士は姿勢を正し顎を引くと、フーゴをしっかりと見つめて言った。


「王都では今、拳銃とライフル銃の量産を始めたところで、銃弾に関しては1種類ずつしか作っていない。そなたが作った最初の拳銃とライフル銃は、トキオから密に助言を受けつつ作ったのだとトキオから聞いた。実を言うと、王都では、銃本体の試作もトキオが王都に来て助言をするまでうまくいっていなかったのだ。先月と本日の戦闘で、徹甲弾とホロ―ポイント弾というものが魔物討伐に有効な銃弾だというのが認識できた。そこでそなたに頼みがある。徹甲弾とホロ―ポイント弾、さらには、今回見せて貰った自動拳銃と、ジークフリートが気に入ったこともあり、この先王都でも生産することになると思われる刀についても、ぜひ、そなたが王都に来て造兵局の者に作り方を助言してもらいたい」


「あ、はい・・・・・ええっ!?」

 フーゴは、予想もしていなかったことを言われたので、一瞬の間をおいて驚いた。


「もちろん、そのための報酬は支払うし、旅費も負担させてもらう」

「え?ええっ!?・・・ちょ、ちょっと待ってくださいよ。いきなりそんなことを言われても、この店もありますし・・・」

「生産が軌道に乗るまでで構わないので、1、2週間・・・長くても1か月程度だ。その間に休業した分の損失も支払おう」

「いえ、申し訳ないですが、お金の問題ではありません。この街の冒険者たちの武器の面倒を見なければいけませんので。特に、銃弾は消耗品ですから、常に作り続けて在庫を確保しておく必要があります」

「パーシーに聞いた話では、近隣の街を含めた複数の鍛冶屋で量産体制がとられているとのことだった。そなたの店が休業していても他の店から調達できるのではないか?」

「え?・・・ああ、まあ、確かにそれはそうなんですが・・・」


(うー、イヤな予感が当たったな。王都は遠いからできれば行きたくないぞ・・・)

 フーゴはそう思ったが、実のところ、それがフーゴの本音だった。


「俺たちなら大丈夫だ。確かに、お前に武器の面倒を見てもらった方が俺たちも安心できるが、1か月程度なら他の店を利用しても問題はないと思うぞ」

 パーシーが言った。


「そうは言うがなあ、今まで、この店を2日以上閉めたことがないから、俺としては不安なんだよ」

「今の話をお前も聞いていただろう?少なくとも、徹甲弾とホロ―ポイント弾については、お前が行って助言した方が早くて確実なものが作れると思うぞ。作っていく過程で色々と試行錯誤したみたいだから、こればっかりは発案したトキオでも無理だろう」

「いや、しかし・・・」


「大丈夫ですよ。行ってきてくださいよ。店なら、俺が何とかしますから」

 突然、後ろから声がしたので皆が振り向くと、そこには若い男が立っていた。


「アントン、お前までなにを言うんだ!」

 フーゴは慌てた様子でその男を叱責した。


「この者は?」

 モルナール魔導士が聞いた。

「はい、ここに住み込みで働いている私の内弟子です」

 フーゴが答えた。


「一緒に、拳銃も銃弾も作って来たんですから、俺一人でもできますよ。大丈夫ですって」

 アントンは、微笑みながらさらに言った。

「いや、まだ、お前一人に任せるのは不安だ」

「1カ月ぐらいなら大丈夫ですってば」

 アントンは、微笑みを絶やさずに続けて言った。


「ふむ、確かに突然の申し出では決心もしかねるだろう。我々は明日の朝、王都に戻るので、それまでにこの者とよく話し合って決めてくれるか」

 モルナール魔導士が言った。


「え?・・・は、はい、わかりました」

 フーゴは、そう答えるしかなかった。


「良い返事を期待しているぞ。それでは、長々と邪魔をしたな。失礼する」

 モルナール魔導士がそう言うと、3人の魔導士は軽く会釈してから部屋を出て行った。


 フーゴは、慌ててその後を追うと、店の外まで見送った。アントンもついて来た。


「それでは、頼んだぞ」

 モルナール魔導士は最後にそう言って、パーシーや他の魔導士と一緒に冒険者ギルドの方へ戻って行った。



「お前なあ、余計な事言うんじゃないよ!」

 店の中に戻ると、フーゴは不機嫌な顔でアントンに言った。


「部屋の外まで声が聞こえてたので話は聞かせてもらいましたが、俺は行って来た方がいいと思いますよ。だって、それで王都で徹甲弾とホロ―ポイント弾の生産が軌道に乗ったとしたら、師匠の名前は国内に知れ渡って、他の街からもこの店にお客さんが来るようになると思いますから。それに、刀を勇者様が使うようになったら、刀についても各地の冒険者たちが買い求めに来るようになると思いますよ。だって、刀はうちでしか作ってないんですからね」

「う・・・お前、痛い所を突くなあ・・・」


 フーゴはそう言うと、そこにあった椅子にどっかと腰を下ろししばらく考え込んだ。




 この後、アントンの言ったことは現実になった。


 少しずつ王国内に広まっていた「アティムは冒険者の聖地」という噂を真に受けて各地から冒険者がアティムに殺到することになり、フーゴの噂も耳にしていたその冒険者たちが、この店で銃弾と刀を争って買い求める事態になったのだ。


 しかし、それはもう少し先の話・・・

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