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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第3章 南部激闘編
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第199話 翻弄される魔人

「よう、これからどうする?」

 パーシーがブロームに聞いた。


「そうだな・・・ゴブリンは王国軍に任せとけばいいだろうから、トロールの残りも多い西側に行った方が良さそうだな。ほら、兵士たちもそっちに移動しようとしてるし」

 ブロームが顎でその方向を指すと、皆がそっちへ視線を向けた。

 言った通り、兵士たちは逃げ惑うゴブリンを掃討しつつ西側に移動して行くところだった。


 ブロームは東側へ視線を向けてみたが、その方面の残りのトロールは1体だけで、それは兵士たちが片付けてくれそうだった。



「なあ、また魔人に寄って来られたら俺たちじゃどうしようもないから、一気に魔導士様たちのところに行った方が良くないか?兵士たちの後ろを通ってこっそりと」

 エドが伺うような顔で言った。


「お前なぁ・・・でも、確かに俺たちが魔人に向かって行っても犬死する可能性が高いな」

 パーシーは、一瞬怒ったような顔をしたが、すぐに考え込むような顔になって言った。


「それでいいんじゃないか?大体、本当はトロールみたいな大型の魔物は俺たち冒険者の討伐対象外だからな」

「ああ、そういえばそうだな」

 マルケルの言葉にパーシーが答えた。


「よし!そうと決まったらとっとと行くぞ!」

 ブロームはそう言うと、何食わぬ顔で回り込むよう歩いて兵士たちの後方へ向かった。

 他の冒険者たちも、同じような様子でブロームのあとに続いた。


 そして、兵士たちの後方の少し離れた位置まで来ると、なるべく足音を立てないように小走りで魔導士たちがいると思われる方向へ向かった。

 兵士たちは、トロールとゴブリン、そして魔人の挙動に注目していて冒険者たちの動きには気づいていなかった。



 ブロームは、走りながら魔人はどうなったのかと飛び去った方を目で追った。


 先ほど目の前にいた魔人は、倒された魔人の残骸が入った光の箱にとりついていたが、それに触れようとした瞬間、光の箱が消え、魔人の残骸は地面へと落下して行った。


 その様子を、魔人は空中に浮かんだまましばらく見ていた。

 もう1体の魔人は、やや手前側の離れた位置に浮かんだまま、同じように落下して行く魔人の残骸を見つめていた。



 そこで、兵士たちが一斉に魔人たちに向けて発砲した。


 手前にいた魔人は素早く上昇したが、光の箱のそばにいた魔人は、その瞬間に忽然と姿を消した。



 しかし、次の瞬間、5マインほど前進した位置で何かにぶつかったように姿を現し、後方に弾き飛ばされて地面に落下した。


「なんだ!?」

 パーシーが驚いた声を上げたのでブロームが見たら、パーシーだけでなく、他の冒険者たちも走りながら魔人の方を見ていた。


「あれは、光系の反射魔法じゃないかな」

 マルケルが言った。


「ああ、それに弾き飛ばされて落下したってことか・・・確かに薄っすらと見えるな・・・それと、血が付いてるんじゃないか?」

「確かに・・・ということは、魔人はダメージを負ったってことか。スピードや攻撃力は高いが、防御力は弱いってことかな?」

 エドが言った。


「いや、多分、自分のスピードが速すぎたってことだろう。反射魔法って、攻撃した力がそのまま自分にダメージとして返って来るんだろ?高速でまともにぶつかったみたいだから、相当な力で殴られたのと同じなんじゃないか?」

 マルケルが答えた。

「なるほど~。スピードがあり過ぎるってのも困りもんだなあ」



 そこで、3人の魔導士が見えて来た。

 すぐそばにリディアも立っていたが、全員、緊張した面持ちで魔人の方に視線を向け、すぐにでも魔法を出せるようにか、両手を開いて前方に向けていた。



「魔導士様たちだ。リディアもいるぞ・・・でも、一人は、前回来てなかった人だな」

 パーシーが言った。


「あれがイディアス魔導士だ。たぶん、さっきの複合魔法はあの人が放ったんだと思う。俺とアウレラは1度見てるからな」

 ブロームが言った。


「ということは、あの人が1度見ただけでで複合魔法を放ったって人か?」

 マルケルが驚いた顔で聞いた。


「そうだ」

「ひゅ~!さすが魔導士様だな」



 ブロームは、そこで魔人たちの方を見たが、上昇した魔人は、落下した魔人の方を見ながら、その高さのまま後方に移動して行くところだった。


 その様子を見た3人の魔導士は、魔人に向かって歩き出した。


「魔導士様たちが通る!道を開けろ!」

 兵士の中から誰かがそう叫ぶと、兵士の集団が左右に分かれたので、魔導士たちはその間を速足で移動して行った。


 リディアだけはその場に残り、少し違う方向を見ていたが、いきなり、


「フライショット!」


 と呪文を唱えて、両手を左右に開いた。


 すると、その両手の間から先ほど見たのと同じような水平に広がった薄い光が飛び出した。

 それは、やや左手にいる兵士たちの目の前に迫っていたトロール目がけて飛んで行き、その首を刎ね飛ばした。


「え!?さっきのって、リディアがやったのか?」

 パーシーが驚いた顔で大声を上げた。


 その声が聞こえたらしく、リディアはこっちを向いた。


「あ、パーシーさん、皆さん、お疲れさまです」

 そう言って頭を下げた。


 そこで、冒険者たちは、小走りでリディアのところまで行った。



「さっきの2体のトロールもお前がやったのか?」

 パーシーがリディアに聞いた。


「え?・・・あ、はい」

「お前、そんなにすごいヤツだったのか!」

「いえ、そんな大したことはしてませんけど・・・」

「一人でトロールを倒しちゃうなんて十分スゴいだろうが!」

「そうですか?」

「そうだよ!」

「ホントだ!」

「とんでもないよ!」

 他の冒険者たちも口々に言った。


「そうなんですか・・・それより、魔人が気になるから、前に行きましょう」

「あ、ああ、そうだな」


 それから、皆はリディアのあとをついて、先ほど魔導士たちが通った兵士の間を通って前に出た。



 地面に落ちた魔人は、立ち上がろうとしていたが、額からは大量の血が流れており、かなりのダメージを負っているのが誰の目にも分かった。


 魔人は、それでもしっかりとした足どりで立ち上がって魔導士たちを睨んだ。

 しかし、それと同時に、魔導士たちが光魔法を放ったらしく、魔人は先ほど倒された魔人よりやや大きめの光の箱に囲まれた。



 次の瞬間、一瞬、魔人の姿が消えた。


 しかし、すぐに姿を現すと、先ほどと同じように光の壁に跳ね返されて後方にふっ飛ばされた。

 そして、今度は後方の光の壁に跳ね返されて前に飛ばされ、そのまま数回、光の箱の中で体が前後に弾かれる状態が続いたが、5回ほど往復した後、真ん中で静止した。

 自力で止まったようだった。


「きさまら、ふざけおって・・・」

 魔人は、光の箱の中央に浮いたまま魔導士たちを睨みながら力のない声でそう言った。



「よし!次だ!」

 モルナール魔導士がそう言うと、3人の魔導士は前方に手を突き出した。

 すると、一瞬、左右と後方の光の壁が消えた後、すぐに、魔人にかなり近い位置に、魔人の四方と上を取り囲むように光の壁が生成された。四方の壁と地面の間にはわずかに隙間があるようだった。

 それから、先に展開されていた前方の反射魔法の壁が消えた。


「仕上げだ!」

 そのモルナール魔導士の言葉で、ブルーメ魔導士が前方に手を突き出した瞬間、地面の中から手が伸び出来て魔人の足を掴むと地面の中に引きずり込んだ。


 一瞬にして、魔人の姿は地中に消えた。


「しまった!」

 モルナール魔導士は、そう叫んで魔人がいた方へ駆けだした。

 他の2人の魔導士も後に続いた。


 しかし、3人が光の箱に到達する前に、その20マインほど後方の地中から何かが飛び出して来た。


 頭の両端から曲がった角が生えた魔人で、その左手には、先ほどまで光の箱に閉じ込められていた魔人の足が握られて逆さに吊るされていた。


 その魔人は、豊満な胸と曲線的な体のラインから女性であることは明らかだった。

 服は、黒を基調として装飾が施された体にピッタリとしたもので、下半身はくるぶしまである、これまた体にピッタリとしたパンツだったが、くるぶしから下は、毛むくじゃらで爪の長い足がむき出しになっていた。



「これでもこいつは師団長だからね。返してもらうわよ。お前たちへのお返しは私が別の機会に与えてあげるわ」


 女の魔人は、そう言うと右手を素早く振った。


 その途端、猛烈な突風が巻き起こって魔導士たちに向かったが、魔導士たちは瞬時に自分の前に光の防壁魔法を展開してそれを防いだ。


 しかし、突風は横にかなり大きなものだったため、魔導士たちの左右のものは後方の兵士まで到達し、そのうちの何人かを空中に巻き上げた。


「ぎゃあ!」

「うおー!」

 何か所かで兵士の悲鳴が上がり、それから、巻き上げら兵士たちは地面に落下して来た。



 突風は、冒険者たちにも向かって来たが、それは、一番前にいたリディアが防壁魔法を展開して防いだ。



「リディア、すまない!」

 突風が収まると、ブロームが言った。


「いえ・・・それより、兵士の何人かがやられたようです」

「ああ、そのようだな・・・」


 次に、ブロームは女の魔人がいた方に視線を向けたが、すでにかなりの高さに上昇していた。

 もう1体の魔人も、女の魔人のそばまで来ていて、ブロームがしばらく見ていると、突然、2体とも姿を消した。



「女の魔人もいるのか・・・」


 魔人たちが消えた瞬間、エドがぼそりとそう言った。

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