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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第3章 南部激闘編
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第198話 迫り来る魔人

「くっ、このタイミングでか!」

 上級士官がそう叫んだが、その言葉は魔人が現れることは想定していたことがわかるものだった。


「右の3人、他の部隊に伝えろ!他はそのままトロールに応戦を続けるんだ!」

 上級士官は、兵士たちにそう指示を出してからブロームの方を向いた。


「おい、お前! 冒険者たちはトロールを2体倒したようだが、どうやったんだ!」

 それは、人にものを訪ねているとは思えないような命令口調だったが、いつものことだったのでブロームは特に何も思わなかった。


「銃弾が散発的に当たっても効果が薄いようだったので、集中的に胸を撃って動きを止めてから次に片方の膝に銃弾を集中して転倒させ、最後に頭部を狙ってとどめを刺したんです」


 ズーン!


 そう答えたところで、大きな地響きが起こったのでブロームが振り返ると、冒険者たちの左から迫っていたトロールが地面にうつ伏せに倒れたところだった。

 どうやら、先ほど会話した兵士たちが倒したようだった。


「あんな感じです」

 ブロームは、倒れたトロールを指さしてそう言った。


「わかった!・・・よし、全員、胸を狙え!」

 その言葉で、兵士たちはライフル銃を一斉にトロールの胸に向けた。


「用意・・・撃て!」


 ババババン!


 上級士官の号令で一斉に銃弾がトロールの胸目がけて放たれた。

 トロールはたまらず足を止めた。


「次は右膝だ!・・・用意・・・撃て!」


 ババババン!


 命令通り、銃弾は右膝に集中して放たれた。

 ブロームは、通常の弾では効果が薄いかもしれないと思い、同時に、ホロ―ポイント弾が装填されている自分の拳銃から続けて2発撃ち込んだ。


「グアァァ!」

 トロールは、苦しそうに絶叫すると前のめりに地面に倒れた。

 倒れながら右手を付こうとしたが、その手首にブロームが弾を撃ちこんだため、右後方に弾かれて頭から地面に突っ込んだ。


「頭だ!・・・撃て!」

 その号令で兵士たちの銃弾がトロールの頭に集中した。



 ブロームはその結果を確認せず、魔人の方へ視線を向けた。


 魔人は、さらにこちらに迫ってきており、数十秒後にはここに到達すると思われた。


 さらに、右と左の魔人も確認したが、同じようなスピードで迫っていた。



「よし!魔人が来るまでには少し時間がある!右にいるトロールの方へ移動しろ!」

 そこで、上級士官が兵士たちにそう命令するのが聞こえた。

 トロールの背後にいたゴブリンたちは、すでに撃ち取られたようだった。



 それを見たブロームは、冒険者仲間がいる方へ戻るために走った。


 走りながら見ると、冒険者たちもゴブリンたちを攻撃していたが、拳銃ではなく、手に持った剣や槍で白兵戦を仕掛けていた。


(銃弾を節約するためだな。パーシーもなかなかわかってるじゃないか)

 普段なら、ほくそ笑みの一つでも漏らすところだったが、魔人が気になってそんな感情は沸かなかった。



 その向こうにいた兵士たちも、同じように自分たちが倒したトロールの後方にいたゴブリンを白兵戦で倒していた。


 それが終わると、さらに左にいるトロールに向かって行ったが、冒険者たちはその場にとどまり、迫って来る魔人を見つめていた。


 そこで、ブロームは冒険者たちのところへたどり着いた。


「ブローム、戻ったか。しかし、あいつをどうする?」

 パーシーが、魔人を指さしながら言った。


「すまんが俺にも考えがない。現れることは想定していたが、王国軍や上級魔法使いと連携して戦うことを想定していたから、この状況では手が思い浮かばない。今日は、リディアもいないしな」

 皆は、期待の籠った顔でブロームを見ていたが、その言葉で落胆の表情に変わった。


「ただ、このまま俺たちだけでここに孤立しているのは危険だ。より多くの兵士がいる右の方へ移動しよう」

「わかった」


 その言葉で、皆は右に向かって走り出した。

 ブロームは、走りながら魔人の方を時々見たが、ここに到達する前に兵士たちに合流でるな、と、思った。



 ところが、そのまましばらく走って再び魔人を見たら、その距離がいきなり詰まっていた。よく見ると、魔人が飛行速度をかなり上げていた。

 しかも、なぜか、まっすぐ自分たちに向かって来るようだった。


「まずい!スピードを上げたぞ!しかも、こっちに来る!」

「なんだと!なぜだ?」

 パーシーが聞いた。


「もしかすると、リディアを捜してるんじゃないか!?光魔法を使う人間を警戒してたみたいだからな」

 マルケルが言った。


「そうか!くそっ!とにかく走れ!」


 ブロームは、走りながら視線の先にいる別の魔人を見たが、その魔人もスピードを上げて王国軍に迫っていた。


 兵士たちからはしきりに魔人向かって銃弾が放たれていたが、まだ距離があったせいもあり、まったく当たっていないようだった。

 逆に、魔人に銃を向けた分、トロールへの対応が疎かになり、トロールの接近を許していた。


「まずいな」

 ブロームは思わず呟いた。


 そして、自分たちの方へ迫って来る魔人を見るため再び視線を左に向けたが、驚いたことに魔人の姿はそこにはなかった。


「なに!」

 ブロームは思わず足を止めた。


「どうした!止まるな!」

 ブロームの後ろを走っていたエドが言った。


「魔人が消えた!」

「なんだと!」


 その言葉で全員が足を止め、今まで魔人が向かって来ていた左を向き、剣や槍を構えて周りを警戒する体勢を取った。


「こっちだ」

 後方で低い声がした。


 全員が振り返ると、わずか3マインほどの距離に魔人が立っていた。

 その姿は、黒ずくめの豪華な装飾が施された服を纏っており、まるで貴族のようだった。


「なっ!」


 冒険者たちは、慌てて魔人の方に向き直り、手に手に武器を構えた。


「無駄なことはやめるのだな。お前らごとき、その気になれば一瞬で片付けられる」

 魔人は、不敵な笑みを浮かべてそう言った。



 ブロームは、この状況をどうすれば打開できるかを考えようとしたが、何も良い考えが浮かばなかったので、とりあえず時間稼ぎをすることにした。


「何がしたいんだ」

 魔人に向かって聞いた。


「まあ、そう慌てるな。お前たちには、いくつか聞きたいことがある。それに素直に答えてくれれば、命だけは助けてやってもいいぞ」

「魔人の言う事なぞ信用できるか」

「まあ、それはお前たちの勝手だ。しかし、私に対してその口の利き方は許しがたいな。少し、お仕置きをしなければいけないな」

 その言葉で、ブロームは身構えたが、必要以上に刺激するのは危険だと思い、腰の拳銃には手を伸ばさなかった。



 スパァン!



 その時、冒険者たちが向かっていた方から、今までこの戦場では聞かなかったような鋭い音がした。


 反射的に皆はそっちを見た。


 ブロームは、魔人がそっちを見たのを確認してから、右目の端で魔人をとらえたままそっちへ視線を向けた。


 すると、トロールの1体の首が体から離れて後方に落下していくところだった。

 それから、そのトロールはゆっくりと前のめりに倒れて行った。


 さらに見ていると、その先にいた魔人がいきなり空中で静止した。

 それは、止まったと言うより、何かにぶつかって止められたように見えた。

 目を凝らしてみると、薄青い光の箱に閉じ込められているようだった。


 次の瞬間、兵士たちの後方から黄色い光線がその魔人に向かって放たれ、魔人に命中した。


 すると、魔人の胴体が消失し、頭と手足だけになって光の箱の中に落ちた。



「なにっ!」


 目の前にいた魔人は、そう言い放つと、今、倒された魔人に向かって飛んで行った。



 冒険者たちは、状況が呑み込めずしばらくその場で呆然としていた。


「今だ!兵士たちのところへ走るぞ!」

 マルケルのその言葉で、皆、我に返り、あわてて兵士たちの方へ走り出した。


「今のは・・・クロアの複合魔法じゃないか?」

 走りながらパーシーが言った。


「えっ?・・・じゃあ、クロアが来たの?」

 アウレラが嬉しそうな顔で聞いた。


「・・・いや、かなり細かったから、どうも、クロアのとは違う気がする」

 パーシーが難しい顔で答えた。


「ああ、そういうことか」

 ブロームが言った。


「え?・・・だって、クロア以外に・・・あ!」

「思い出したか。そうだ、きっとイディアス魔導士だ」

「ということは、魔導士様たちが来たのね!」

「そうだ。これで、何とかなるかもしれないぞ」


 そう会話しながら走っていると、複合魔法と思われるものが飛び出したのとほぼ同じ位置から、今度は水平に広がった薄い光が飛び出し、別のトロールの首を刎ね飛ばした。


「あれも光魔法だ。魔導士様たちが来たのは間違いないぞ!」


 そのブロームの言葉で、皆はこわばっていた表情を緩めた。


 それからすぐに兵士たちのところにたどり着いたが、それと同時に横長の陰が通り過ぎて行ったので上を見上げたら、もう一体の魔人が、先ほど冒険者たちのところから飛び立った魔人を追って飛んで行くところだった。



 ブロームが後方に振り返ると、先ほどそばで戦っていた兵士たちが、もう1体トロールを倒したのが目に入った。


「これで、あと5体」



 ブロームがそう呟いて視線を前に戻すと、簡単にトロールが倒されていく状況にパニックに陥ったゴブリンたちがバラバラに逃げだすところだった。

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