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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第3章 南部激闘編
195/566

第195話 冒険者たち、動く

 今回から、話が現在に戻ります。

 フォスは、アウレラの右手からチドリを引き剥がそうと指を掴んだが、渾身の力で握られていたためうまくいかなかった。

 そこで、アウレラの右腕を両手で掴み、思い切り噛みついた。


「ぐあっ!」

 アウレラは、そう呻いてチドリから手を離した。

 チドリは、切っ先を下にして落ち、そのまま地面に突き刺さった。


「があぁぁぁ―!」

 アウレラは、今の痛みで余計に逆上し、左足を押さえているエドの頭を右足で蹴った。


 エドは、ふっ飛ばされて思わず手を離してしまったが、その瞬間、ブロームが叫びながらアウレラに後ろから飛びつき、羽交い絞めにした。

「ダメだアウレラ!」


「離せー!」

 アウレラは、さらに暴れて両足を激しくバタつかせた。


「落ち着け!お前が一人で行ってもどうにもならないだろうが!」

「うるさい!離せ―!」


 ブロームは、アウレラが完全に我を忘れて自分の言葉が耳に入っていないことを感じた。


「しょうがない」

 ブロームは、アウレラの首に右腕を回し左手でその手首を引くようにして強烈に締め上げた。


 アウレラは、すぐに意識をなくした。


(トキオに教わった絞め技がこんなところで役に立つとはな。なんてこった)


 ブロームは渋い顔をして、アウレラを肩に担ぎあげた。



「みんな、すぐ戻るから、すまんが軍から指示があったら対応してくれ」

「わかった」

 横にいたフォスが答えた。



 ブロームは後方の林に入ると、高さ1メートルほどの藪の向こう側に行き、アウレラを細めの木の根元に降ろしてそこに背中をもたせかけた。

 そして、アウレラの手を木の後ろに回すと自分の腰に下げていた紐を外し、両手首を合わせて縛った。


 それから前に戻り、左手を顎の下に当てて顔を上げさせると、右手で思い切りアウレラの頬を平手打ちした。


「・・・うん・・・」

 それでアウレラは目を覚ました。


「あれ?ブローム、あたしどうしたの・・・」


 ブロームは、それには答えず無言でアウレラを見つめていた。


「えーと・・・あ!トロールが!」

 アウレラはそう言うと、その顔に再び怒りの表情を浮かべた。


 その瞬間、ブロームはまたアウレラに平手打ちを食らわせた。


「痛っ!・・・何するのよ!」


「・・・お前が完全に冷静さを失ってるからだ」

 ブロームは、少しの間アウレラを見つめてから言った。


「だって、トロールがいるんだよ!」

「だからなんだ」

「トロールだけは許せない!」

「だからと言って、お前一人で何とかできるのか?」

「それは、やってみなきゃわからないじゃない!」


 そこで、ブロームは大きく息を吸い込むと、少しきつい顔でアウレラを睨みながら言った。

「お前が冒険者になる時、逆上して我を忘れるとその瞬間に命を落とすから常に冷静でいるようにとテリットが言ったよな」

「・・・それは」

「言ったよな!」

 ブロームは、語気を強めて言った。


「・・・うん」

「そして、それを守るとお前は約束したよな」

「・・・うん」

「だったら、その約束を守れ。トロールを討ちたいという気持ちは分かるが、それならば余計に、どうすれば討てるかを考えろ。今、お前がやることはがむしゃらに突っ込むことじゃない。魔物を討伐することだ」


 アウレラは視線を落とし、無言になった。


「今から、他の仲間とどう対処するか話し合って来る。それが終わるまで、お前はここで頭を冷やしてろ」


 ブロームはそう言うと、立ち上がってアウレラに背を向け、先ほどまでいた場所に向かって速足で歩き出した。


「ちょっと!ブローム!」

 アウレラは、立ち上がろうとしたが、腕が木の後ろで縛られていたためそれはできなかった。


「痛っ!・・・え?なに?」

 アウレラは、手を左に引っ張りながら肩越しにその手のほうを見て、縛られているのを確認した。


「なによこれ!・・・ブローム!」


 アウレラは、歩き去っていくブロームの後ろから怒鳴ったが、ブロームは振り返りもせずに藪の向こう側に消えて見えなくなった。



 ブロームが元の場所に戻ると、兵士だけでなく、冒険者たちもいなくなっていた。

 前に進みながら林の中を見ると、人が動いているのがわかったので、そのまま林に入って行った。


 林の中にいたのはほとんど冒険者だった。兵士は連絡係と思われる者が数名いただけで、残りは林の向こう側に出て魔物たちと戦っているようだった。


「大事な時に離れて悪かった。で、どうなった?」

 ブロームは、冒険者たちの一番後ろに立って前方を見つめていたマルケルの隣に来ると言った。


「ああ、ブローム。今のところ軍から指示はない・・・アウレラはどうした?」

「少し頭を冷やさせるために木に縛り付けて来た」

「そうか。あの様子じゃ、それがいいだろうな」


「それで、戦況はどうなんだ?」

「トロールに手こずってるようだ。ゴブリンはライフル銃で狙い撃ちにしてるが、距離が遠くてあまり当たっていないものの、当たれば倒せてる。トロールには当たっても全然効かないようだ」

「徹甲弾は使ってるのか?」

「どうだろうな。ここから見てるだけじゃ、どの弾を使ってるかまではわからんな。まあ、使ってたとしても、ハードオークほどは皮膚が硬くないみたいだから、あまり関係ないんじゃないか?」

「ああ、そうだな」


 ブロームが林の先に視線を向けると、林よりかなり前方に移動した王国軍の兵士たちが、立ったままライフル銃を構え、続けざまにトロールとゴブリンに向かって発砲しているのが見えた。


「こうなると、強力な魔法の使い手か、勇者張りの強さを持ったヤツでも来ない限り、もう、あまり長いことは持ちこたえられないかもしれん」

「そう言えば、今日は上級魔法使いの姿を見てないな」

「俺も気になったから兵士に聞いてみたんだが、もう少しすると王子様と王女様が王都から到着するため、その歓迎式典に呼ばれているらしい」

「ちっ!まったく、こんな時に」

「ああ・・・ただ、南部方面軍と先に王都から到着していた援軍がこっちに向かってるらしいぞ」

「そうか!大人数で、一斉に撃てば、さすがのトロールも倒れるかもしれないな」

「そうだな・・・あとは、さっきもらった新しい弾だな。俺たちは、あれに頼るしかないだろう」

「そうだな・・・あれ?強力な魔法で思い出したが、リディアもいないじゃないんじゃないのか?今日は見てないぞ」

 ブロームは、自分より前にいる冒険者を一通り見渡して言った。


「そうだ。今回は、魔導士と共闘する作戦があるとかで、王子様たちと一緒に来る魔導士様からの手紙を受け取って、同じく歓迎式典の会場に行ってる」

「なんてこった!そうなると、魔導士様たちに少しでも早く来てもらうしかないぞ」

「さすがにこの状況だから、歓迎式典は取りやめになるんじゃないか。やったとしても、魔導士様たちはバカじゃないから、到着次第ここに来るだろう」

「ああ、そうだといいな」



 そこで、林の外に出ていた兵士の一人がもどって来て、林に入るなり、冒険者の中で一番前にいたパーシーに話しかけたのが見えた。


 すると、パーシーがこちらを向き、冒険者全体に視線を送りながら言った。


「軍から協力要請が出た。銃を持ってる者は前に行くぞ!」


 その言葉で、拳銃を持っている冒険者たちは、一斉に腰のホルスターから拳銃を抜いた。

 パーシーと話していた兵士は、後方にいる将校に伝言があるのか、軍のテントがある方向へ走って行った。


「ちょっと待て!」

 そこでブロームが叫んだので、冒険者たちは足を止めてブロームの方を見た。


「ちょっとリーダーは集まってくれ。他の者もその場で待っててくれ」

 ブロームは、前に進みながら言った。


 パーシー、ハイケルなどのリーダーがブロームの方に小走りにやって来た。


「なんだ、どうした?」

 ハイケルが聞いた。


「軍の兵士たちが発砲するのを見ていたが、ただやみくもに撃つだけじゃ効果がないと感じた。ちょっと、作戦を考えた方がいい」

 ブロームが、集まって来たリーダーたちを見渡して言った。


「ああ、確かにそうだな」

「何かいい考えがあるのか?」

 エドが聞いた。


「さっき、アウレラに一人でトロールに突っ込んでも無駄だという話をしたんだが、その時に思ったことがある。トロールには普通の弾は効かないみたいだから、やっぱり、今日貰ったホロ―ポイント弾を使うのがいいと思うんだが、個別に狙っても仕留めきれない気がする」

「というと?」

「ホロ―ポイント弾を支給された者は、全員で一斉に同じトロールを狙うんだ。その方が、倒せる確率が高くなるだろう」

「ああ、それはいい考えかもしれない」

「やってみる価値はあるな」

 マルケルも同意した。

 他のリーダーたちも頷いた。



「じゃあ、前に出たら、マルケルとパーシーで、どのトロールを狙うか決めてくれ」

「わかったけど、お前はどうするんだ?」

 マルケルが聞いた。


「アウレラを連れて来る」

「え?大丈夫なのか?」

「まだ、冷静になっていないようならそのままにしてくる。でも、あいつに家族のかたきをとらせてやりたいからな」

「ああ、そうか、そうだな」

「じゃあ、頼んだぞ!」

「わかった」


 ブロームは、そう言うと回れ右をしてアウレラを縛り付けた方へ駆けだして行った。

 他の冒険者たちは、固まって林の外へ向かった。



 ブロームが林を出たところで、向こうからアウレラが走って来るのが見えた。


「あ、お前!どうして?」

 ブロームは驚いて足を止めた。


「縛り方が緩すぎたのよ。力任せに引っ張ってたら緩んで来て抜けちゃったよ」

「ありゃ・・・ちょっと、こっちを見ろ」


 ブロームはそう言うと、目の前に来たアウレラの顔を正面からしっかりと見据えた。


「落ち着いたか?」

「うん。もう、大丈夫」

「わかった。じゃあ、行くぞ。でも、俺から離れるな。トロールを見て逆上するようなら殴ってでも止めるからな」

「もう、そんなことにはならないよ」

「そうか」


 それから二人は、並んで皆が向かった方へ駆けだして行った。


 途中でアウレラは、地面に突き立っていたチドリを引き抜くと腰の鞘に納めた。

 また、仕事が来たので、更新ペースが落ちると思います。しかも、オリンピックやってるから、そっちも見ちゃうと思うし(笑)


 なるべく、長期間更新が止まるようなことはしないようにしたいと思います。


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