表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第3章 南部激闘編
194/567

第194話 サーヤとの約束

「大丈夫か?」

 キッテルが心配そうな顔でアウレラのところに寄って行った。

「あたしは大丈夫だよ」

「そうか、しかし、いつの間にこんなに上達したんだ」

「伯父さんが、もう適わないって言って相手してくれなくなったから、朝夕だけじゃなく、昼間も時間がある時は練習してたんだよ」

「そうか・・・剣は面白いか?」

「うん。なんだか、自分に合ってるみたい」

「そうかもしれないな。少なくとも、お前には剣士としての素質があるよ」

 そう言ってキッテルは微笑んだが、その微笑みは少し寂しさを帯びていた。



「ちょっと!話が違うじゃないの!」

 テリットがブロームのところに戻ったところにサーヤが来て言った。かなり不機嫌な顔をしていた。

「ああ、すまない。ちょっと俺の見込み違いだったな。あの子の実力は本物だ」

「俺もそう思う」

「そんな・・・そうだとしても、何か理由を付けて止めてくれないと!」

「いや、あの子のスピードと剣を振るうセンスを見て気が変わった。あの子は、サーヤの店の跡継ぎにするには惜しいよ」

「でも、女の子なのよ!冒険者なんて危険な仕事はやらせたくないわ!」

「まあ、サーヤの気持ちもわかるが、俺は一つ考えたんだ」

「なによそれ」

「まあ、聞け」

 テリットはそう言うと、サーヤの肩を抱き、口を耳元に近づけた。

 それを見たブロームは、その会話を聞こうと二人に近づき、右耳を向けた。

 テリットは、アウレラの方をチラッと見て、キッテルとの会話に集中しているのを確認すると、アウレラに聞こえないように小声で囁いた。

「あいつが時々見せる厳しい表情は、きっと、母親と姉さんのかたきを討ちたいという思いなんだと思う。だから、このまま冒険者にならなかったとしても、そのうち、剣を持って一人で魔物退治に行くようになると思うんだ」

「そんな!・・・そんなことないわよ!」

「いや、俺もその可能性が高いと思う」

 ブロームが真顔で言った。

「だから、冒険者にしてあの子を俺たちに預けてみないか?一人で森に行くようになるより、俺たちと一緒にいた方が、むしろ、命の危険が減ると俺は思うんだ」

「そうだよ。俺たちがあの子を守るから」

「それでも、やっぱり魔物の討伐に出るなんて・・・」

 サーヤは、言葉では否定したが、その声のトーンには、先ほどまでの拒絶するような響きがなかった。

「いや、あの子の運動能力の高さからしたら、すぐに一人前の剣士になれると思う。あんただって、あのアウレラのスピードを見ただろう?・・・それと、普通は真剣を渡して切りかかって来いなんて言っても躊躇するもんだが、あいつは真っすぐに俺に切りつけて来た。避けなかったら間違いなく顔を切られてただろう。そういう肝が据わったところも実に冒険者向きなんだよ」

「・・・・」

 それを聞いて、サーヤは言葉をなくし少し俯いた。

「・・・本当にあの子を守ってくれるの?」

「ああ、保証するよ。俺たちも、パーティー仲間が魔物にやられるなんてことは二度とごめんだからな。それと、あんな美人でオッパイの大きい子を死なせたら、俺たちはアティム中の男どもに恨まれちまうよ」

「間違いないな」

 そう言って、テリットとブロームは軽く笑った。

「クスッ!」

 その言葉につられて、サーヤからも笑いが漏れた。


「・・・わかったわ。でも、必ずあの子を守ってよ!約束よ!あの子が死なないまでも、大ケガでもさせたら、私はあんたたちを一生許さないからね!」

「ああ、わかった。約束するよ」

「俺も約束する」



「なに楽しそうな話してんの?」

 そこで、アウレラがキッテルと一緒にやって来て言った。

「まあ、ただの世間話だ・・・そんなことより、アウレラ、お前って元々かなり運動が得意だったんじゃないのか?」

 テリットが聞いた。

「え?・・・まあ、そうね。走るのは、短距離も長距離も女子ではいつも学校で一番だったよ」

「ほう、両方速いってのはなかなかすごいな」

「そう?他にもいるんじゃない?」

「いやいや、両方速いヤツってのはスゴく珍しいぞ。納得だ・・・ということで、薬草の採取が終わったら俺たちと一緒にギルドに行くぞ」

「え?・・・じゃあ・・・」

「ああ、お前を冒険者に推薦してやるよ」

「ホント!やったあ!」

 アウレラは無邪気に喜んで、その場で飛び跳ねた。



 アティムの街に戻ると、途中でサーヤ夫婦と別れて、テリット、ブローム、アウレラの3人は冒険者ギルドへ向かった。


 その道すがら、テリットがアウレラに言った。

「いいか、冒険者として一番大事なことだから良く聞けよ」

「なに?」

 アウレラは、嬉しそうな顔で聞いた。

「お前には間違いなく、魔物を討伐することに対して母親と姉さんへの想いがあるよな?」

 その言葉で、アウレラは一気に表情が曇ったが、それに構わずテリットは言葉を続けた。

「だが、魔物と対峙した時は、常に冷静でいなきゃダメだ。逆上して我を忘れると、その瞬間に命を落とすと思え。お前が少しでも多くの魔物を退治したいと思ってるんだったら、お前がまずしなきゃいけないことは生きることだ。だから、状況が不利だと思ったら逃げろ。これは、恥ずかしいことでもなんでもない。別の魔物を倒す機会を作ることだと考えるんだ」

 アウレラは少し俯いてしばらく何かを考えていたが、顔を上げるとにっこりと微笑んで言った。

「わかった。じゃあ、少しでも早く魔物を討伐できるようになりたいから、剣はテリットが教えてね」

「ああ、まかしとけ。その代り、俺の稽古は厳しいぞ。覚悟しとけよ」

「いいよ!あたし、頑張るから!」

 そう言って、また、アウレラは微笑んだ。



「おかえりなさい」

 ギルドに入ると、受付に座っていたミレリアが言った。

「ああ、ただいま。本日の任務は完了だ」

 テリットはそう言って受付に行くと、依頼主であるキッテルのサインの入った依頼票をミレリアに手渡した。

「はい、確かに・・・あれ?あなたはサーヤのところの・・・」

 そこで、ミレリアはテリットの後ろにアウレラがいるのに気付いた。

「ああ、そうだ。この子を冒険者登録してくれるか?」

「え?こんな若い女の子を?・・・本気ですか?」

 テリットの言葉に、ミレリアは目を丸くして答えた。

「こんなこと冗談じゃ言わないよ」

「・・・でも、適性は・・・」

「それは、さっき俺が確認した。この子には間違いなく冒険者としての素質がある」

 ミレリアは、しばらく真顔でじっとアウレラを見ていたが、少し表情を崩すと言った。

「わかりました。テリットさんがそうおっしゃるのなら問題ないでしょう・・・じゃあ、これに手を当てて貰える?」

 そう言って、カウンターの内側から能力を測定する機械を取り出した。


 アウレラは、前に進み出ると、

「よろしくお願いします」

 と、言って、頭を下げてから右手を測定器の上に置いた。


「・・・あら?治癒魔法も使えるのね。Lv3なら実用レベルだわ。名前は、確かアウレラだったわね」

「はい、そうです」

「それじゃ、手続きをするからちょっと待っててね」

 ミレリアはそう言うと、測定器をしまってから奥へ入って行った。



「え?これでいいの?」

「ああ、そうだ。ミレリアが今から登録証を持ってくるから、それを貰ったら、お前も晴れて冒険者の仲間入りだ」

「やった!嬉しい!」

 アウレラは、本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。




 それから3年後・・・



「ねえ、昨日、冒険者登録してた見慣れない男、何か変なこと言ってなかった?」

 この日の朝、アウレラたちは、討伐に出かけるためにマルケルのパーティーと一緒に朝食を食べていた。

「ああ、なんかウルゴンの頭には毒がないとかなんとか?」

 マルケルが言った。

「そうそう。そんなことあるわけないと思わない?」

「そうだよなあ。今まで、魔物の頭を破壊して毒にやられたヤツが何人もいるってのに」

「しかし、よくよく考えて見たら、俺自身は実際に魔物の毒にやられたヤツを見たことないんだよな。誰か、見たことあるヤツいるか?」

 テリットがそう聞いたら、その場にいた全員が首を横に振った。

「やっぱりか」

「でも、それって、みんなが魔物の頭を破壊しないように注意して討伐してるからじゃないのか?」

 フォスが言った。

「まあ、それもあるんだが・・・もしかして、ただの噂をみんなで真に受けてたってことはないか?」

「え~?かなり以前から言われてることだぞ。それはないんじゃないか?」

「でもな、昨日の男、ちょっと不思議な雰囲気があったと思わないか?」

 ブロームが言った。

「不思議って?」

「今から冒険者をやるってのに、やけに堂々としてたし、なんか、魔物の討伐に行くってのに凄く楽しそうだったんだよなあ」

「ああ、それは俺も思った。でも、そのあと、3時間でウルゴンを30匹も討伐して来ただろ?だから、あれは相当に自信があったからなんじゃないかって思ったんだ」

「う~ん・・・」

 そこで、皆は難しい顔になってしばらく沈黙したが、その時、昨日の男が階段から降りて来るのが見えた。

「お!噂の主が起きて来たぞ」

 皆は、その男がエレザベスのいるカウンターの方へ行くのを目で追った。



 その姿を見たアウレラは思った。

(あれ?昨日は良く見なかったから気づかなかったけど、体は締まってるし、顔立ちも整ってて、なかなかカッコいいんじゃない?)

「あたし、昨日の話を確かめて来る!」

 アウレラはそう言うと、その男の方へ駆けだして行った。


 皆が二人を目で追っていると、その男はアウレラを見るなり、

「パーフェクツ!」

 と、叫んだ。


「え?アイツ今、なんかへんな言葉叫んだぞ!どこの言葉だ?」

「もしかして、頭おかしいヤツだったのか?」

 そんなことを言いながら会話している二人をしばらく見ていたら、突然、アウレラが血相を変えて戻って来た・・・



 ・・・そして、その時は、その男が魔物討伐に多大な貢献をする人間になるということを誰も知らなかった。

 4話に渡ってお送りしたアウレラの過去のお話ですが、第12話でテリットがトキオに語ったことの回収になります。回収するのに180話ちょっともかかったということですねw

 ただ、殺された家族は母親と姉だと思い込んでいたのが、12話を読み返したら「親と妹」になっていたので、あわてて12話の方を修正しました(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ