第52話:お詫びにハグ
教室のドアが開く。なんとかアドリブで乗り切る!
「おかえりなさいませ! ご主人様!」
(ここまではなんとかできる)
「席ご案内いたします! こちらへ!」
私が覚えていないのはここからだ。
席を案内して、何を言うのか。助けてほしいくらい絶望的な状況です。
「席はこちらになります。えっと……」
(なんだっけなんだっけ……! 思い出すんだよシャルル!)
「どうしたの?」
「い、いえ! お気になさらず! アハハ……」
お客さんに心配されてしまう。
そのコテンと首を傾げられると余計きつくなった。私のせいで時間がどんどん潰れてる……
と、その時私が見たのはメニュー表だった。
(あ!)
思い出した。このあと言う言葉を。
「メニューが決まり次第お呼びください! では!」
私はそのままドアの前まで戻る。そして……
(言えたー!)
内心大喜びでガッツポーズ。あの絶望的な状況下の中の奇跡だったからもう嬉しくて涙出そう。
……その十数分後だった。
私が案内したお客さんからなにかしたいことがあるとクラスメイトから通達があった。なんなのかな?
「あの……ご主人様、一体なんでしょうか?」
「……これを言うのは少し悩んだんだけどね……」
「?」
私はずっと戸惑っていた。
ようやく勇気を振り絞ったのか言葉を零す。
「よ、よかったらハグしてもらえませんか!」
「……はぐ?」
まさかのハグ。意味がわからない。
「な、なぜでしょう……?」
「理由なんかありません。無性にハグがしたくなったんです」
「な、なるほど……?」
ようするに、ハグがしたいらしい。すごい人だね。
「ご主人様の命令は絶対なんですよね……? 大丈夫ですよね……?」
「まあハグくらいなら……」
「じゃあお願いします!」
すごい食いつきだ。どんだけハグしたいのかが嫌でもわかってしまう。
「で、ではご主人様、こちらへ」
私は腕を大きく開いて受け身の体勢をとる。相手は小柄なので胸くらいに顔がくるかな?
「あ、ありがとうございます……」
そのままお客さんとハグをする。胸におさまってるからなんか苦しそう。
「ご主人様? まだですか?」
「もう少し……」
そこから数分、ようやく離れた。
「満足されましたか?」
「……ありがとう」
一体何が目的だったのか、知ることはできなかったがとりあえずなんとかなった。最近不思議なことばかりで困ってしまう。
「続きが気になる……!」
「もっとないの!?」
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