第38話:プール
「マリー、今日からプールでしょ? 私すっごく楽しみ!」
「そ、そうね……楽しみだわ……」
「? てかみんな暗いじゃん。どうしたの?」
私が指す『みんな』とはクラスの女子たちのこと。男子たちはかなり喜んでいた。性別が違うだけでこんなに差が出るの?
「(なあ、アクアさんとかマリーさんやばいと思わん?)」
「(それな。目に焼き付けないと)」
「(おっけ)」
――めちゃくちゃ聞こえてくるんだけど。まあなんともなさそうだし大丈夫か
楽観視するのが私の悪いところなのかもしれないが、もう時間がないので更衣室に向かった。
「アクアさん、男子には気をつけてくださいね」
「あ、うん。注意ありがと」
「ほんと男子ったら変なところ見てくるんだから。獣みたい」
「マジそれな。だからプール嫌いなんだよね」
「あ〜……なんかわかるかも」
そう、私はそういう経験をしたことがある。海旅行のときのあの男の人。超気持ち悪かった。
「だよね!」
「アクアさんも同じでよかった……もしそういうのなかったら危機感ないからすぐ捕まったりするから……」
「うぐっ……」
「どした?」
「な、なんでも……」
すごく鋭い。もう一生分のトゲを食らった気がする。マリーたち含めたら何回なんだろ。
更衣室に到着し、扉を開けると塩素の匂いが鼻を通った。初めての匂いに私は顔をしかめた。
「うえぇ……何この匂い」
「……仕方ないわよ受け入れなさい」
「にしてもさぁ……マリー平気なの? 塩素だよ?」
「……耐えなさい」
仕方ないのでもう諦めることにした。ここでとやかく言っても無駄だと思ったからね。
「よし、着替えるか」
「やっぱスクール水着ってパツパツだよね。見てこれ食い込んでる」
「あはは! なんでそんなことなるの? ワタシならないんだけど?」
そんなクラスメイトの声が聞こえてくる。うん、パツパツなのは同感。なにこれ。
「……みんな、覚悟してね」
「「「「うん」」」」
そうして私たちはプールに向かった。さて、どうなることやら。
到着すると、そこにはいち早くいた男子が。そしてこちらに視線を向けた瞬間……目が開いたように見えた。これが恐れていたことか……
「(やっぱえぐいな)」
「(マジそれ。同じクラスでよかった)」
「(……オレ集中できないわ)」
なにかブツブツ言ってるがきっとさっきと同じ内容だろう。なんとなく予想ができる。
「おーい! 始めるぞー!」
先生の言葉で空気が和む。ナイスタイミングで、まるで狙ったかのよう。絶対先生にそういう意図はないんだろうけど。
先生はプリントを見ながら、水泳をする意味を教えてくれた。短く言えば海のど真ん中にいて魔力がなくなったとき泳ぐ術を持たせるためだとか。
「では今日はクロールをします。みなさんできますよね? 義務教育でやってますからね」
「もちろんです。舐めないでください」
「そうか。マリーには非常に期待しているぞ。もちろん他の人もな」
と、いうことで水泳の開始。クロールはあんまりしたことないけど頑張る!
「あ、ちなみにいないと思うがこの中にクロール苦手な人いるか?」
「はい!」
私は迷うことなく手を上げた。水中の中で泳ぐのは得意だけどそれ以外はできない。溺れないという点があるから習得しなくていいけど、授業だからね。
「そうだな……誰か教えれる人いるか?」
「じゃあオレが――」
「男子はだめ!」
全力の女子による静止によって私は男子の教えを受けることはなくなった。とても残念そうに講義してきたが意味をなさない。
「アクアさん、ちゃんと守ってあげるからね」
「……頼もしいね。ありがと!」
「ふぅ……終わったぁ……」
私にとって水中にいない水泳は地獄だった。上手く泳げないし進まないしで……思い出しただけで震える。しかもこの授業が続くのだからもういやになる。
「みんな早く着替えよ〜」
シャワーを浴びたあとすぐ制服に着替えた。だけど……
「塩素が髪の毛に絡みついて気持ち悪い!」
「そうね……中々厄介」
髪の毛が普通より長い私とマリーを初めとして、ほかの女子たちも同じ状況だった。いつもはすぐサラサラになるのに今は固まってる。
「洗い流したと思ったのにぃ……」
「こればっかりは仕方ないわ。どうせ落とせるんだから終わったらすぐ風呂に行きましょ」
「うん……そうする……」
このあとしっかりと風呂に入って全て落とした。
「続きが気になる……!」
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