第28話:海旅行 一日目
旅行当日
私はめちゃくちゃ気合いを入れて門の前で待っていた。多分神祭のときよりよくできてる。
髪はハーフアップにし、お化粧もしてきた。夏らしく服は肩出しワンピース。ちょっと透けてるから恥ずかしい……
「お、シャルルちゃん早いな! しかもめちゃくちゃ可愛いやん!」
サインが大きな荷物を持ってこちらに駆け寄ってきた。半身くらいありそう……あ、私も一緒か。
「あ、ありがと! 可愛くなるよう髪型とかお化粧とか勉強したの!」
「シャルルちゃんそういうのは勉強するんやな……」
褒められているようなイジられているようなよくわからない言葉。思わずムッとしてしまう。
「それ、褒めてるの?」
「褒めてるって! てか頬膨らませてる顔かわぁ……」
「——ありがと!」
全部褒め言葉として受け取っておく。ポジティブ思考というのは生きることにおいて重要な役割をもつよ!ネガティブだと何もかもが嫌になるからね!
「そろそろやと思うけど——あ! 来たで!」
少しずつ馬車が見えてきた。先客はいないのでマリーたちはまだ寮の中ということ。
「あ、ちょうどね」
「ごめんね! 服選びとか時間かかっちゃった!」
「わ、私も結構悩んで……」
「……姉さんを待ってた」
それぞれ正当な理由があるらしい。ルイのだけ異様だったが気にしない。シスコンだもんね!
「じゃあ行きましょうか。海へ」
「うわぁ……ここが海!」
私たちは浜辺に到着した。
目の前に広がるのは青色の海。透き通っていて、絶好の旅行日和。
「待ちきれない! 一旦遊ぼ! ね!?」
「リリア……興奮しすぎよ」
「あたいも無理! 遊ぶ!」
二人とも大はしゃぎでビーチに行くものだから、私たちも追いかけた。理由はシンプルだろう、とりあえず遊びたいから。
「あはは! 冷たい!」
「……きれいね」
「っ……しょっぱいです……」
「当たり前だ。常識として知ってるだろ」
「でも経験は初めてで……」
私はいいとして、五人は初めてここに来ただろう。そうじゃないとこんなリアクションはしない。
「そうね。常識だとしても体験しないと意味がないから」
「……姉さんがそう言うならそうなんだろうけど……」
「必ずしも常識が通用するわけじゃない。ほら見なさい、あれが非常識よ」
マリーが指を指したのは……私。
「えぇ!? 私非常識だったの!?」
「何今更! ウチらにとってシャルルは非常識だよ!」
「気づいてなかった感じ? まぁ自覚なしやからな!」
「私がバカみたいに言わないで!」
「事実でしょ」
「ぎゃふっ!」
どう頑張っても言い返しができない。うん、マリーに言葉で勝つことは絶対ない。
「遊びはここまでよ。荷物があるでしょ」
「えぇ!? まだ遊び足りないよ!」
「リリア、流石にやめよか。また明日遊べるやん」
「……はぁい……」
まぁ一週間もあるし、初日はこれくらいにして荷物を片付けるとしよう。
「じゃ、じゃあ行きましょうか……」
私たちは馬車に乗った。なんで待ってくれてるんだろう、神?
マロンは馬車の人に場所を伝えると、少し不思議な顔でこちらに来た。
「どうしたの? そんな……表現が難しい顔して」
「せやな。なんか……なんというか難しい。嬉しいんか嫌なんかわからん」
「……見たらわかります」
全員『?』で埋め尽くされていたが、マロンは気にしない。外のきれいな景色を眺めていた。
十数分後、どこにあったのかわからない森の入口に着いた。なにここ。
「……ここに、別荘が?」
「そうです。ここの先に……」
「へぇ……こんなところにあるんや。ダークネス家やからもっと豪勢やと思ったで」
確かにトップの貴族ならこんな森の中ではなく、さらけ出しスタイルで城みたいにつくるのかと思った。偏見すごいかな?
「じ、実は理由があるんです」
「理由もなにも、ここに建てたかったから建てたんじゃないの?」
マリーの的確な質問。だがマロンは事実を伝えるように話し始めた。
「昔、ここは海の巫女がよく現れた場所なんです。子どものようにはしゃぎ、動物たちと楽しくお話をしていたそうです」
私たちは首を傾げるが、続ける。
「ダークネス家は数千、捉え方によれば数万年前から続く貴族の王です。海の巫女と繋がりがあり、王族にも頼らます。別荘は海の巫女との関係を深めるためにつくったのですけど……」
『ですけど』という言葉に続いて出た言葉は、意外すぎるどころか……
「森が成長しちゃって……別荘が隠れちゃったんです!」
「「「「はぁ!?」」」」
「……バカすぎるだろ」
もう何回目の正論かわからない。本当に正論パンチというのは体にも心にも響く。
「と、とにかく! 森の中に入ればきれいな家があります! ついてきてください!」
マロンに急かされ森の中に入っていく。雰囲気あってちょっと怖いかも。
暗いし道狭いし枝に引っかかるし……もういやになっちゃう。
そんなことを考えている間に、白色をメインとしたきれいな家が見えてきた。
「着きました。ここがダークネス家所有の別荘になります」
「でっか……」
「当たり前です。元々海の巫女との交流場所として使われる予定だったんですから。これくらいしないと」
「……別荘にしては、大きいわね。わたしたちがたまに行くところより大きいんじゃないかしら」
「姉さん、これは大きい。多分一・五倍くらいあるよこれ」
「続きが気になる……!」
「もっとないの!?」
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