第25話:私は……本気を出せない
私たちのクラスは訓練場に来ていた。
「はい、今から実際に戦ってもらいます。じゃあ……そことそこ」
先生が指を指した方向は、私のチームと男子と女子の混合チーム。多分勝てるだろう。
「最初かぁ……緊張するねシャルルちゃん」
「ん〜私はあんまりかな」
「流石強者……勝てる相手に緊急なんてしないんだ……」
「そうだね〜」
この学園に私以上に強い人はいないので、緊張することはない。
「よろしくな! 流石に手加減はしてくれよ?」
「怪我したら治せばいい。けど痛いの嫌」
「了解。そこのところ気をつけるね」
そういうことなので、私は本気を出さない。ていうか出すつもりはない。怒られるもん!
「では位置についてください」
先生の指示で、対戦の準備が始まる。
「手加減されてるとはいえ負けないからな!」
「頑張る」
「シャルルちゃん、連携忘れないでね」
「……忘れてた」
「もう! ちゃんとしてよね!」
なんとか思い出せたので、今度はちゃんとできる気がする。保険をかけておこう。安心したいからね!
「――開始!」
「纏いし水」
「あ、ありがと!」
私はチームメイトが生成した氷に水を纏わせた。これは水魔法の応用で、耐久値と鋭さを上げてくれるもの。デメリットはほとんどない。
「氷!」
「なんかやばいのくるぞ!」
「――守る」
放った氷は上級魔法に匹敵するものになっていた。なんかやりすぎた気がするのは……まぁ本気出してないしいっか!
「……危なかったぁ……」
「防御魔法、練習してたから」
よく見ると普通に防げていた。流石名門校、安易にやっている。
「こっちの番。水」
「これに火属性を纏わせて……」
なんか対比した魔法が混ぜられている。これ試したことないからよくわかんない。どうなるんだろ……
「加減しない。えい」
さて、どうしたものか。
この二つの魔法、いい具合に絡み合っている。私が受けたらかすり傷だけど、一般人は即死級。
頭を悩ませていると、チームメイトが防御魔法を展開した。
咄嗟の判断で私は防御魔法全体を水で覆った。
すると……
「……効いてない。なんで」
「え、あ、え? 普通の防御魔法じゃ受けるどころか破られるはずじゃ……」
「あの炎邪魔だったし水で蒸発させといた。あとは水魔法だけだし防御魔法で受けきれる」
「……チートじゃねぇか……」
うん、私もそう思う。
ただ、こういうのは言わないほうがいいと学んでいる。だから苦笑いで済ましておいた。
「あと……連携っていうのはこういうこと」
私たちは二つに分かれて走る。もちろん意味のある走りだ。
「おいおい走っても意味ないぞ! 火ノ玉!」
「水滴」
私には火ノ玉、チームメイトには水滴が放たれた。
だが、私たちは次々避けていく。
「当たんねぇ……!」
「……本当に面倒」
二人が一瞬油断した隙に、私はそこら中に仕込んでおいた水を動かす。チームメイトも水をこぼしながら走っていた。
「これなら全方位から攻撃できるからね! 全方位水!」
「首席って……どこまでも理不尽だよな」
「……強い」
私は攻撃を当てる。正確には当てる寸前で止めたんだけど、風圧がすごかったみたいで二人は吹っ飛ばされた。
「っはは……嵐かよ」
「風だけでここまで。すごい」
仰向けで倒れながら、そんなことを言っていた。褒め言葉として受け取っておこう。
「はいそこまで。勝者、アクアさんチーム」
その瞬間、静かな空気が変わった。暑苦しい熱気と大きな声に。
「やっぱ首席つえぇ!」
「やるわねシャルル。連携がとれてたわ」
「やんな! あたいびっくりしたで!」
全部称賛の嵐だった。
勝敗関係なく二つのチームを称えている。いいクラスだね。
「はい、あの戦いをお手本としてみんなもしていきましょう」
私たちの戦いをお手本にするのは嬉しいけど、あんまり真似しないでほしい。怪我人が出るからね。
「水ノ泡!」
授業後、私は自分で作った異空間で魔法の練習をしていた。偉いでしょ! 私こういうのちゃんとするからね!
ただ、私には悩みがある。
「本気のはずなのに、やけに疲れないなぁ……」
こういうことだ。
本気といえば、全力を全て出し切るという意味になると思う。
魔法で言えば、魔力を全消費して最大の魔法を放つ。こんなところだろう。
だけど、私の魔力はほんの少ししか減っていない。これはありえないこと。
「……まだ、本気出せてないのかな……」
今の私の状態でも、本気をぶつけるとこの世界が終わってしまうのでおかしいけど、これ以上があると考えるともっと恐ろしい。いつか宇宙でも破壊しそうだ。
「――もう! 本気出すから!」
やけになって自分の上空に水を溜めまくった。異空間だし壊れることはない。
「水ノ玉 海!」
ビシャァァンッ!!
魔法の最後に『海』をつけて威力を数千万倍、下手すれば数億倍の威力をもつものにした。現状できる本気がこれ。
だけど……
「なんで! 魔力切れ起きないし!」
魔力は少し減っただけ。しかも極小。王宮に仕える魔法使いでも見破れないくらいしか減ってない。
「……なんでだめなんだろ。もっかい!」
そこから数百、数千と繰り返した。
流石に魔力も減ったが、それでも半分はいかなかった。
私の魔力量がおかしいこともあるとしても、これはおかしい。
「水魔法じゃなくて火魔法使ってみるか……」
なんでこんな単純なことに気づかなかったのだろう。水魔法だけでは意味のないことに今更気づいた。
私は手のひらに火を生成すると……
「あう……気持ち悪い……」
魔力切れ特有の気持ち悪さ。
私の魔力は一瞬でなくなった。たった手のひらサイズの火魔法を出しただけで。
「うっ……や、やめよ……無理……」
多分生きてきて初めてこんなことになった。一度も挑戦してなかった火魔法に苦しめられるなんて……でも弱点を見つけられたからいっか。
「火魔法でこんなことになるってことは……他の魔法もだめか……」
なんとなく予想できる。きっと、私は水魔法以外が凡人以下でだめなのだろう。
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