第24話:神祭 その2
特例として投稿してます
「シャルル!起きてー!」
ウチはシャルルの部屋のドアを叩きながら叫んでいた。なぜなら、今日は神祭の中で一番大事な儀式があるんだから。
「……返事ないな……開けるよー!」
どうやっても静かなままなので、強引に起こそうと部屋に入った。
しかしそこには……
「あれ、いない?」
部屋はきれいたった。
ベッドはシワ一つなく、清潔感にあふれていた。
「なんでなんだろ……まぁいっか。起きてるってことだし!」
そう言い残して、ウチはシャルルの部屋から出た。
気になることがあるといえば、やはりシャルルが早起きしていることだろう。普段は時間ギリギリで起きて遅刻寸前なのに。
「でさ、シャルル部屋にいなかったんだよね。マリー見かけた?」
「いいえ、見てないわ」
「あいつが早起きするなんて初耳だよ姉さん」
「そうよね……よっぽど大事なことなのかしら」
ウチらは食堂で朝食を食べていた。話題は「シャルルの早起き」について。
意外と話できるものだね。
「ん……それで、神祭どうなるんだろ〜って思ってさ」
「そうよね……全員参加だもの。特にわたしたちみたいな王族は」
「……どうするんだろうね」
「わかんないよ!まぁどっかいるでしょ!」
「……まぁその可能性もあるわね」
そのまま話は続き、気づけば食事を終えていた。
ウチたちは王族なので、早めに行かないと怒られちゃう。
馬車で神殿に向かっている。しかし、ウチは興奮を抑えきれなかった。
「リリア、落ち着きなさい。馬車が揺れるでしょう」
「だって!だって!一年も待ったんだよ?!見れるのは年で一回きり!」
「そうだけど……そんなに興奮しなくても……」
「そうだぞリリア、落ち着け」
「無理!海の巫女が見れるんだよ?!」
そう、毎年儀式の日は海の巫女を見ることができる。
しかも、王族や貴族はその姿を間近で見ることが可能。
ウチは小さい頃、一度だけ抱っこしてもらったことがある。その時……ウチはとんでもない安心感に包まれたの。その感覚が、忘れられない。
「……今年、リリアはなにしてもらうの?去年は握手とかだったけど」
「今年は……ハグとか!許してもらえるならしたいな〜」
「……優しいんだ、きっとさせてもらえる」
「そうね、あの人が断るとは思えないわ」
言われてみれば、「握手したい」「抱っこしてほしい」「魔法を見せてほしい」など色々なお願いをしたけど、全部受け入れてもらってる。断るところなんて見たことない。
「……そろそろよ。神殿に着くわ」
「はぁ緊張するぅ……ドレス大丈夫だよね?」
「大丈夫だ。一応俺も確認しておくか……」
ちゃんと服装が整っているか確認する。ホコリなんかついてたら最悪だ。
うちは黒いけど一色じゃない。ところどころで緑色が混ざっている。
マリーは水色のドレス、ルイはシンプルなスーツ姿。
「……やっぱいつ見てもきれいね、ここは」
「そうだね……本当になんにも変わってない」
「ここで……儀式。ふさわしいと言われればふさわしい」
「あ、父上がいるわ。行くわよ」
「フローズン王かぁ……久しぶりだなぁ」
多分会うのは数カ月ぶりかな。隣国の第一王女とはいってもそこまでたくさん会うわけじゃない。
フローズン王のものに来て、挨拶をする。
「フローズン王、お久しぶりです」
「リリアか、数カ月会っていないだけなのに懐かしく感じる。今年はなにを願うのだ?」
「からかわないでくださいよ……まぁ、今年はハグでもお願いしてみようかと」
「リリアらしい。きっと受け入れてもらえる」
フローズン王は案外優しい。
怒るときは怒り、褒めてくれるときは盛大に褒めてくれる。そんなメリハリのあるフローズン王は尊敬に値する。
「夜になれば儀式が始まる、それまで世間話でもしよう。もちろん、マリーとルイもだ」
「……わかりました」
「父上が言うのなら」
とても楽しい時間が過ぎた。
あたりを見回すといつの間にか夜に。そろそろ儀式が始まる。
「移動するとしよう」
「あ、はい」
ウチたちは神殿の近くに移動した。ここには椅子とかが用意されていて、一般人は立ち入り禁止。
ちなみに儀式には全ての生物が参加する。もちろん……
「……今年もいるね、魔王」
「そうね、あと動物とか虫とかも」
うん、そういうこと。
流石に配慮してくれてるけど、魔王は特に目立つ。もうなんか……禍々しい。
そんなことを考えてると、ひときわ目立つ人物が祭壇に上がった。海の巫女だ。後ろには家臣と思わしき人がいる。
「……今年もお集まりいただき、感謝します。では儀式を開始するので、祈りを捧げてください」
目をつぶって、神様に祈りを捧げた。
普通は届かないけど、海の巫女がその祈りを代わりに伝えてくれる。
「……始めます」
その時、美しい笛の音色が世界に響いた。まるで潮風に運ばれているように。
忘れられるわけがない。こんなきれいなの……忘れるほうが難しいだろう。
途中から笛の音は透き通るような歌声に変化した。
この声は……すっごく落ち着く。
今すぐにでも目を開きたい。
でも……儀式の舞を見ることができるのは大人になってから。ウチとかマリーはまだ見られないってこと。
始まってから一時間が経過した。
なんか長いようで、すごく短い。
「……おわ…った?」
「……そうみたいね」
恐る恐る目を開けると、目の前には両手を重ねて祈っている海の巫女の姿が。
「きれい……」
無意識にそんな言葉が出る。
いつもなら「すっごいね!なんか……ね!」とか抽象的な言葉しか出ない。でも……この日は毎回違う。
「……神秘的ね」
「姉さんがそんなこと言うの、儀式の日以外あんまりないんじゃ?」
「確かに、そんなに言わないかも」
少し笑いながらそう言うマリー。ちょっと可愛いかも。
「あ、忘れかけてた」
そう言って、ウチは儀式を終えたあとの海の巫女に近づいた。
「あ、あの!」
「?あぁいつもの子ね。今年はなにしたい?」
覚えてくれていることに感動してしまった。流石に何年もお願いしているので嫌でも覚えてもらえるのだろう。
「こ、今年は……ハグ……とか…いいですか?!」
「――いいよ。ほら、おいで」
「っ!!はい!」
迷うことなく飛び込んだ。何年もしてもらいたかったけど、なんとか我慢していた。でも……もう無理。
あのときの感覚をもう一度、味わいたい!
「ん……やっぱ忘れられないよぉ……」
「はいはい、あのときぶりだもんね」
◇
私はリリアをハグしていた。
さっき言った「あのときぶり」、実際はなんにも覚えていない。ただ、無意識のままに言っただけ。
あのリリアに絡まれたあの日が実質的に初対面。しかし、リリアはそうじゃないらしい。
「本当に、なんにも変わってない。ウチこんなに成長したのに」
「……大っきくなって嬉しいよ。もうちょっとこのままにしよっか」
「……はい…」
私はリリアの頭を撫でながら接した。まるで子どもをあやすように。
すると、リリアは私のもとから離れた。
「よし、もう大丈夫です。元気いっぱいになりました!」
「うん、それはよかった。また来年も来てね」
「はい!」
リリアはその言葉を最後に、マリーたちのもとへ走り出した。なんとも羨ましい。
「……さて、戻ろっか。確か客室用意されてたよね?」
「はい。今年はローズガーデン王国の城にてパーティーが行われる予定です。そちらに用意されています」
「すっごく広いらしくて……今年も三人で過ごせます!」
「そっか、やったね!」
「はい!」
今年もユラとアイと過ごせるみたい。私にとって二人はとても大切、だから毎年一緒にしてほしいとお願いしている。
「今年も豪華ですね」
「だねぇ……」
「なんか……ふわふわです!」
「語彙力」
鋭い指摘。今日もキレッキレだ。
「そろそろお食事の時間らしいです」
「ほんと?じゃあ準備しよっか」
――ちゃんと届いたよ、シャルルちゃん。ありがとう
「続きが気になる……!」
「もっとないの!?」
という方は下の☆☆☆☆☆から、応援をお願いします。
正直に書いてもらって大丈夫です。よければ感想も。
ブックマークいただけたら泣いて喜びます。
天然で鈍感な愛香君と愛香君が好きすぎるアリスちゃんのシリーズも見てもらえると嬉しいです。
今後もよろしくお願いします。




