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第24話:神祭 その1

「ここであってるよね……」


 私はお祭り会場の近くにある公園で待っていた。もちろん浴衣姿で。

 あんまりこういうの知らないからめちゃめちゃ頑張った。

 服はマリーたちと選んで、化粧はユラとアイに教えてもらった。髪はアップヘアにして短く。

 数分待っているとよく目立つ人たちが来た。マリーたちだ。

 


「あら、待たせた?」

「ごめんね!気合い入れたくて!」

「俺は別にいいんだが……」

「だめですよ!初めてのお祭りなんですから!」

「あたいは何回も来とるし、教えてあげよか?」


 それぞれ浴衣を着ている。まぁお祭りといえば浴衣だろう。

 

「うん、よろしくね!」

「お、シャルル興味津々やな。よし!行こか!」


 サインが先頭で、私たちはそれについていくという形になった。妥当って言われれば妥当だろう。

 

「とゆうか、シャルルちゃんすごくきれいですね……」

「……そうね。少し大人っぽくなったわ」

「お上品なお姉さんみたい!」

「えへへ、頑張ったんだ〜結構苦労して――っぶな!」


 危うく転びそうになる。下駄を履いているので歩くのだけで一苦労。


「あはは!しっかりしてよシャルル!」

「デコボコしてるわけでもないのに転びそうになるなんて……本当に危なっかしいわね」

「ごめんごめん、こういうの不慣れで」

「それより見てください!すごくきれいですよ!」


 マロンの声で私は前を向いた。

 目の前に広がっていたのは……


「やってるよやってるよー!今年も最高の焼きそばいかが?!!」

「いろんな景品あるよー!射的やってきなー!」


 屋台の人たちの声と、たくさんの人で賑わっておりとても楽しそう。

 どこからもいい匂いが漂ってきて、食欲をくすぐる。


「うわぁ……お祭りだ!」

「すごいわね……これが……」

「あ!リンゴ飴ある!ウチあれ食べたい!」

「やっぱお祭りといえば綿菓子やで!」

「……はぐれるなよ」

「わ、わかってます……!でも……!」


 みんな初めてのお祭りに興奮していた。逆にどうやって落ち着けばいいのか聞きたい。


「私焼きそば食べたい!」

「あ、ちょっと待ちなさい!」


 そんなこと気にせず焼きそば屋に歩く。今日は初体験のことばっかりになりそうだ。


「お、お姉ちゃんきれいやな!焼きそば食べるかい?」

「うん!一つお願い!」

「はいよ!ちょっと待ってな!」


 私はお金を払って焼きそばを頼む。

 店主は手際よく焼きそばを入れ物に詰めていった。

 ソース特有の濃い茶色をしていて、上には紅しょうが。匂いでお腹が空きそう。


「……美味しそう……なんか輝いてるみたい」

「大げさだよ姉ちゃん!ほれ、毎度あり!」

「ありがと!」

「熱いから気をつけろよ!」

「は〜い!」


 焼きそばを受け取って、マリーたちのところに戻った。もちろん食べながら。


「ん〜美味しい!濃厚なソースと絡んだ麺とさっぱりした紅しょうがって合う〜!!」

「せめてどこかに腰掛けて食べなさいよ……」

「だって早く食べたいんだもん!美味しいうちに食べないと味落ちるじゃん!」

「あむあむ……あ、シャルル焼きそば食べてる!ウチのリンゴ飴ちょっと舐めていいから一口食べていい?」

「いいの!?」


 リリアからリンゴ飴を受け取って舐める。するとその甘さに驚き、見開いた。


「あっま!めちゃめちゃ美味しい!」

「でしょ?!すっごく美味しいの!」

「あ、焼きそば。はい、どうぞ〜」

「ありがと〜!」


 私は一口をリリアの口に運んであげた。「あーん」というやつだろう。ただ、女同士なので気にならない。


「美味しい!屋台のご飯って最高!」

「そうね、まぁ楽しんでいきましょ。あむ…」

「いつの間にチョコバナナを!?」

「リリアたちが味見し合っている間に買ってきたわ。なかなか美味しくて気に入ってる」

「私は綿菓子を……サインちゃんにおすすめされて」

「せやで!甘いやろ?」

「は、はい…!なんか食べてるけど食べてないみたいで新鮮です!」


 確かにマロンが持っている綿菓子は雲みたいで美味しそうだった。色は……なんか紫色をしている。美味しいの?これ。


「あそこ、金魚すくいがあるらしい。俺はそっちに――」

「行く!」


 迷うことなく私は即答した。


「……そうか。じゃあ行くぞ」

「歩くの早いって!女の子を優先して!」

「姉さん以外は優先しない」

「ひど!!」


 忘れていたがルイは重度シスコンなのだ。

 そんな人が姉以外の女の子に目を向けることなんてない。普通に考えればわかること。

 少し歩くとその場所と思わしきところに来た。

 水槽の中には金魚がいっぱいいる。

 黒・金色・赤……大体百匹はいるだろう。


「はい、これ網と入れ物ね」

「ありがとう!よし……取るぞ!」


 金魚をすくい上げようとした。しかし……


「あれ、網切れた!」

「……俺もだ」

「がはは!もうちょいだったね!」

「もっかいします!」

「リベンジ」

「はいはい、頑張れ!」


 その後も金魚をすくい上げようと頑張った。途中店主からのアドバイスも活かしながら挑戦した結果――


「やった!ニ匹!」

「まだまだだな。俺は四匹だ」

「でも満足!楽しかった!」

「……そうか」




「うぅ……」

「あはは!シャルルビビりすぎ!まだ入ってないって!」

「で、でもぉ……」

「……順番がきたわよ」


 私たちはお化け屋敷の前まで来ていた。ちなみに……私は怖いの苦手。

 お化け屋敷に入ると、真っ暗でなにも見えない。手がどこにあるかすらわからない。


「み、みんなどこ?なんにも見えないよぉ……」

「安心して。ちゃんといるから」

「そうそう!怖いことなんてなんにも――」


 ペタ……ペタ……


「ひゃぁぁっ!!」

「お、落ち着きなさい!まだ出て――」


 ガシッ


「――っ!!もうやだぁぁ!!」


 私はお化け?に足を掴まれた。入ってから数分しか経っていないのに……怖すぎる!

 出口に向かって走り出した。だけど――


「ばぁ!」

「いやっ――」


 そのまま固まり……倒れた。


「しゃ、シャルル!?」

「しっかりしてよ!本物じゃないから!ね?!」

「た…助け…て…」


 一応意識はある。ただ、怖すぎて力が入らなくなった。


「力……入らないよぉ……」

「……はぁ…わたしが運ぶわ」

 

 私はマリーに抱かれて、出口まで連れて行ってもらった。


「う…うぅ……」

「はいはいそんな泣きそうな顔しないの。子供じゃないんだから」

「そ、そうだけどぉ……」

「き、厳しい……」

「これくらいしないと。リリアにだってしてもいいのよ?」

「遠慮します!」


 リリアの即否定。私は完全に見放された。この裏切り者!

 その後もお祭りを存分に楽しんだ。

 屋台に戻ってご飯を食べたり、射的をして景品を大量に取ったり、占いで運が絶望的だったり……色々なことをしたね。


 私たちは公園に集まってお喋りをしていた。

「ふぅ……楽しかったぁ……」

「そうね……普通なら疲れるのだけど、今日は違うみたい」

「せやな!やっぱみんなでワイワイ楽しむのってええな!」

「これからどうする?もう遅いし、私は寮に戻るよ?」

「もうそんな時間!?あっという間すぎない?」

「楽しい時間というのは早く進むんだ。リリアは特に知ってるんじゃないか?」

「ん〜確かに!」


 言われてみれば、リリアは毎日楽しそうにしているので時間が早く進みそう。私はずっと遅いのに……羨ましい!!


「あ、あの!提案があるんですけど……」

「?なに?」

「実は……」


 マロンの懐から出てきたのは……不思議な形をしたもの。私は見たことない。


「これ「カメラ」って言って、出来事を撮って残すことができるんです。こっそりみんなのこと撮ってました」

「これ、私が焼きそば食べてるやつ!」

「俺が金魚すくいで苦戦してるところ……」

「ウチがシャルルに「あーん」されてるところもある!これすご!」

「はい、なので……みんなで集合したものを撮りませんか?思い出なので!」


 なかなかいい提案だった。来年もこうしてお祭りに行けるとは限らない。自分たちの頭より、形として残すほうが見返せていいだろう。


「……どうする?わたしは賛成」

「もちろんウチも!」

「俺も」

「あたいもやで!」

「私も!」

「満場一致ですね、じゃあ撮ってもらう人は――」

「水魔法で作っちゃえ!」


 人を探すのは面倒なので水魔法で擬人体を作った。


「……便利ね」

「はい、マロンカメラ渡して〜」

「は、はい。どうぞ……」


 擬人体はカメラを受け取ると全員がちょうど入る位置についた。なんともたくましい。


「みんな、笑って〜」


 私の合図でみんなが笑う。苦笑いでもなく、かといって計算された笑いでもない。普通の笑顔。

 シャッター音が響き、確認すると……


「……よし、これでいい?」

「――ええやん!バッチリや!」

「……いいと思う」

「これ……最高です!」

「ウチこれ欲しい!」

「……わたしもいいと思うわ」


 完璧なものが撮れた。多分……いや、これはずっと大切にするだろう。


「そろそろ帰ろっか」

「そうね」


 私たちは、寮に戻った。

 明日は儀式、上手くできるかとても心配。

 でも、不思議と不安はない。

 

「明日のことは、明日の私に任せよう」


 そう言って、眠気に身を委ねた。

「続きが気になる……!」


「もっとないの!?」


という方は下の☆☆☆☆☆から、応援をお願いします。


正直に書いてもらって大丈夫です。よければ感想も。


ブックマークいただけたら泣いて喜びます。


天然で鈍感な愛香君と愛香君が好きすぎるアリスちゃんのシリーズも見てもらえると嬉しいです。


今後もよろしくお願いします。

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