第20話:vsレーザ・ストベルト
俺たちはガイアによって別の場所に飛ばされていた。見る限り学園長が転移させてくれたところだろう。
「……一体なんの目的で分けた」
「ん〜? いっぺんに相手したほうが効率良いに決まってるじゃ〜ん。わかんないの?」
「……そ、そりゃわかるけど……そんなこと相当な自信ないとできへんで?」
「あったりまえ〜レーザ強いんだよ? 魔王様もいっぱい褒めてくれる〜」
自信満々にレーザはそう言う。嘘一つない、ただ事実を語っている。
「すごいんですね……そんな幹部に勝てるかな……」
「弱音を吐くなマロン、勝てないと思ったら勝てない。諦めなければ可能性はある」
「綺麗事? まぁ頑張りなよ。ざーこ♡」
――こいつ、煽り性能が限界突破してやがる。今すぐにでもボコボコにしてやりたい気分だ
だが相手は幹部、そう簡単に倒すことはまずできない。
俺たちはできても瀕死までしか……いや、ここで倒さなくちゃいけない。倒して、姉さんに証明するんだ。俺も戦えるって、もう守られるだけの弟じゃないって!
「やるぞレーザ! ここでお前を倒す!」
「へぇ……意気込みはいいじゃん。弱いくせに♡」
「あたいらも忘れないでよね!」
「ウチはルイより強いし! てかこの中だったら一番だし!」
「私も闇魔法で援護します!」
「……わかった」
「弱いやつが何人集まっても弱いの! もうめんどくさい! 光ノ放射線!」
「――っ! くるぞ!」
真っ白に染まった光が何本もこっちに向かってくる。正直避けれる気がしない。マロンは別。
「鬼ノ火炎!」
「最硬ノ結晶!」
「風ノ苦楽!」
「包み込め、闇に誓う」
それぞれに合った魔法を放った。威力も高めにしておいているから余裕に相殺できるわけ――
「――は?」
「う〜わ、やっぱりザコじゃん♡諦めない? 意味わかんないんだけど♡」
俺らの魔法は跡形もなく消えていた。四人のほぼ全力でこの幹部の弱気。勝てる理由がなくなった。
「てか…なんですかその口調……」
「これ? 弱いやつと戦ったらなんかなっちゃう。わかる人いる?」
「いるわけないって! ウチでもならないよ!?」
「変な感性やな……まぁ集中!」
一瞬いつも通りに戻りかけたがサインの言葉に正気を取り戻す。ここは……戦場なのだ。
「炎ノ覇者!」
「風ノ覇者!」
「結晶ノ覇者!」
「闇ノ覇者!」
「――面白い! ザコは諦めないから潰しがいがある!道ノ水平線!」
覇者。超上級魔法の中でも上位に君臨する魔法につけられた名。これを使えたものはその魔法を完全に使いこなしたと言っていい。
だが……
「あはは! 期待したけど、やっぱざっこ♡」
「な、なんで……ウチら覇者まで使ったんだよ……?」
「それがなに?レーザの魔法のほうが強かったんだよ〜ま・け・お・し・み♡」
「くそ……なんでだめなんだ……! 俺たちは学園で何度も――」
「……わかんない? レーザのほうが生きてんの〜負けるに決まってるじゃん」
「……ぐぅの音もでない正論ですね……」
「なにくたばってるの?お話する暇ないけど♡」
レーザの言葉と同時に俺はいつの間にか高速の打撃を食らっていた。この状況じゃリリアたちも食らっている。同時攻撃というわけか……
「っ……はぁ…はぁ…どう…する…策は……尽きた」
現状、全員傷だらけ。相手は無傷、敗北という名がふさわしい。
「なに…言ってるの……策が尽きたわけなくない?ウチらまだ残ってるじゃん。究極魔法」
「――リリア! それを使うのが…どういうことかわかってるのか!命に関わるんだぞ!」
「――使うしかないじゃん! このまま何もしないで死ぬより……己の最高の技を出して死んだほうがよくない?」
確かにリリアの言うことには納得できる。だが究極魔法を使うということは死と同じ。ミスでもしたら……体が粉々になる。
――やるしかないのか……いやこれは俺たちの未来に…この状況で言うことじゃないか
「なに話してるの ?あ! もう戦維喪失した? なっさけな〜い♡」
「――リリア、マロン、サイン……究極魔法を使え。レーザを確実に仕留める」
「……本気? あたいらもしかしたら……死ぬんやで?それでもやる?」
「そ、そうです! 他になにかあるはずですよ!」
二人は究極魔法を使うことをためらっている。だが……
「……ない。上級魔法も覇者まで通用しないなら、使うしかない」
「……二人とも、協力してくれない?絶対後悔はさせないから」
やりたくないという気持ちが見てわかる。怖いのだろう。しかし、その目に光が灯っていっているのを見逃さなかった。
「……ですよね……わかりました! 放ちます!」
「――その熱い思い、受け取ったで! ええよ、やるか!」
「弱いなら弱いで、最後まで抗おう!」
俺たちは立ち上がる。傷が痛む。だが、くたばってるわけにはいかない。
これが弱者なりの戦い方、諦めが悪いんだよ。現実を受け止めたくないからな!
「究極魔法! 聖なる炎、炎神ノ剣!」
「究極魔法! 聖なる風、風神ノ斧!」
「究極魔法! 聖なる結晶、結晶神ノ槍!」
「暗黒なる闇、闇神ノ終末!」
「なっ――」
ズドォォォンッ!
四人の究極魔法がレーザを包みこんだ。俺たちは運に勝ち、正確に、そして圧倒的な威力で魔法を放つことができた。四人でだめなら……終わりだ。
「……はぁはぁ……し、死んだ〜」
レーザは立っていたが、仰向けになって倒れた。俺たちは……勝ったのだ。
「――や、やったぞ…! レーザを倒した!」
「うそ! ウチらすごくない!」
「や、やりましたね! これで安心――」
「せや――」
「ふ、二人とも!? しっかり――」
「……限界だ……」
肉体の限界がきたのか突然力が入らなくなる。これが限界突破したあとの末路だろう。
全員別々の体勢で倒れた。
「あはは……究極魔法が四つ…しかも同時攻撃なんて相殺できるわけないじゃんか……」
「レーザ……なんで生きてるんだよ……」
「それな……頭おかしいんちゃう? あたいなら即死」
「同じく……」
「絶体絶命でした……私生きてる保証ありませんよ……」
「……まぁ相殺はできないけど、生きてるだけマシか。まさかレーザも究極魔法を使うことになるなんて……一生ないと思ってたのに」
「――レーザも究極魔法を――ってて」
「そりゃ使えるにきまってるじゃ〜ん。舐めないでよね〜」
「にしても強すぎんか? 究極魔法四つが究極魔法一つにほぼ消し飛ばされたんやで?」
「これが経験の差よ〜」
そんな敵との会話、謎に親近感があるのは気のせいではないだろう。
と、その時、仰向けに倒れていた俺は上空を見ていた。そこに、流れ星があった……いや、ある。しかも……
――きてる!?
「動けない……全員逃げ――」
ズドンッ!
地面がえぐられるような音が野原に響いた。よく見るとそこには直径五メートルは超えるクレーターが。
「……よいしょっと、終わってた?」
そこには見覚えのある人物。白髪の少女がいた。
◇
「しゃ、シャルル!? なんでここに?休みじゃなかったん?」
「だいぶ調子良くなったの。だからとりあえず来たって感じ」
「とりあえずって……遊びじゃないんだよ?ウチらもうヘトヘトで……」
「医療班のところ行きな。そこにマリーもいるから」
「姉さんが医療班に!? ということは……勝ったのか?」
「……うん」
「ガイア……負けたんだ。初めてかもな〜負けてる報告聞いたの」
「……誰?」
「レーザ。ガイアと同じ幹部で〜す」
――レーザ、ね。妾は初対面だけど、シャルルちゃんは違いそう
そんなことを思っていると、全員が傷だらけということに気づく。妾が治してあげたいところだけど……我慢。
シャルルちゃんなら『ほら、甘いもの食べたら回復するよ?』とか言うだろう。
「レーザ、だっけ。あなたを放置するわけにはいかない。倒させてもらうね」
「好きにしな〜レーザは負けた。悔いはないよ」
「……そう。じゃあ遠慮なく」
そして妾はガイアと同じように転移魔法を使った。
レーザは光りに包まれ、消える。
「……これで、よかったんだよな。本当に」
「……じゃなきゃ死んでたでしょ。みんなまとめて」
「せやな。医療班のところに行こか。回復が先」
「ですね……でもどうしましょう、指一つ動かせません……」
「わら――私が浮遊魔法で運んであげるね。いくよ」
危なかった。自然と『妾』が出るところだった……
「うわっ! すご…他の人にやってもらうとこんなプカプカするんだ」
「今日は新しいこと学んでばっかやな……いい経験やわ」
「じゃあ運ぶね」
四人を連れて、マリーがいる医療班のもとへ向かった。妾にかかればこんなこと容易い。息をするように操作できる。
数分もすると目的地に到着した。そこには治療を受けているマリーと、学園長がいた。なんで?
「おぉシャルル君。こんなことを言うのもなんだがなかぜ君がここに?」
「……事情ってものがあるんです」
「そ、そうか。動けるようになってなによりだ」
「……はい」
「ね、姉さん! 怪我は!」
「大丈夫よルイ。もうほとんど完治した」
「よ、よかった……姉さんになにかあったらどうしようかと……」
「――それより、気になること言ってもいいですか?」
――マロン、だっけ。確かそんな名前だった気がする。なんだろう、気になることって
妾にもわからないものだった。気になることというと、『なぜ軍が攻めてきたの?』とか『なんで生徒に任せたの?』とかかな。
妾は四人を下ろした。そしてマロンはなぜか妾に向き合う。
「――シャルルちゃん、いや……あなた、誰ですか」
「……え?」
予想外の質問。妾はバレないように立ち回っていたはず。そんな簡単に見破られるなんて……
「マロン!? ちゃんと見えてる!? シャルルはシャルルだよ!?」
「どういうことなの姉さん、マロンの言っている意味がわからない」
「……マロン、わたしも気になってたの。あなたは、体がシャルルで心がシャルルじゃない」
「? それってどういうことなん?」
「つまりは……洗脳か、操り人形にされてるってことです」
「——はぁ!?」
――すごく鋭い……なんでわかるかな……
「……マロン、言ってる意味がわかんないよ。私は私、他の誰でもない」
「じゃあ、その瞳はなんですか。シャルルちゃんはオッドアイですよ!」
「っ……」
言葉に詰まる。
シャルルちゃんの体を使うということは基本してはいけない。負担がかかるから。でも、今回は仕方なかった。軍が攻めてくるなんて予想外だったもの。
妾がシャルルちゃんを操るときは、必ずなにか変化がある。基本は瞳が黄色く変化すること。他は……まだわからない。
「わ、私は……妾は……」
バタンッ
「!? ちょ、ちょっと!?」
「……脈はある。きっと疲れたんやろな」
「寝かせましょう、話はあとからでも聞けますし」
「そうだな」
実際のところ、疲れたというのは違うがシャルルちゃんが耐えれなかったっていうのが合ってるかな。
仕方ないよね、毎回戻るんだから。シャルルちゃんが培った経験は、今はない。
――いつ、思い出すかな
そんな期待を胸に、妾はシャルルちゃんから離れた。これ以上は、だめ。
シャルルちゃんが眠る姿は、愛おしく、彫刻のようだった。
「続きが気になる……!」
「もっとないの!?」
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