第20話:vsガイア・ローガン
今日もう一つ投稿します
「ふん、お前たちが束になっても我らを倒すことは不可能。諦めて降伏しろ」
「そ〜そ〜勝てない勝負しても意味ないって〜」
「――勝てるか勝てないかなんて、あなたたちが決めることじゃないでしょ!」
自分でも驚くくらい、大きな声が出た。今のわたしは侮辱されたことに腹が立っている。この上ないほど怒っている。
「……姉さん……」
「わたしたち人間は魔族に劣る! でも、必死に頑張ってここまできてる! わたしたちの限界を勝手に決めないで!」
「よく吠える犬だ。気に入った、名は」
そう聞かれ、わたしは即答した。
「マリー・フローズン。世総合学園魔術科の第二席にして、フローズン王国第一王女」
「そうか」
「ガイア〜もう初めていい? レーザ暇なんだけど〜」
「そうだな。では……」
ガイアは指を鳴らす。すると周りにいた四人がいなくなる。
――一体何が!みんなはどこへ……
「焦るか、まぁ突然いなくなるなら無理はない」
「……何をした……!」
「簡単だ。お前と我が戦うのだ。一対一でな」
「……じゃあリリアたちは――」
自分のことより、リリアたちの心配が勝ってしまう。それほどわたしにとっては大切な存在。
「レーザと戦う。まぁレーザは幹部の中では仕事をしない方、だが実力はトップクラス。勝てるはずがない」
「……また決めつけるのね。戦ってすらいないのに」
「……そうだったな。では……始めようか。楽しませてくれ、フローズン」
「……くる!」
たが、何もしてこない。してこないように……見えていただけだった。
――っ!
目の前には黒い斧。こんな大きな斧を素早く動かせるなんて……俊敏性が桁違いだ。
わたしは回避することだけに集中した。反撃はできない。できたとしても、相殺できない!
「……外したか。次は当てる」
「っ……本当に、幹部は化け物ばっかりね。足に傷がついたじゃない。乙女の体に傷をつけるなんて……許されると思ってるの?」
自分を『乙女』というのに少し恥じらいがあったが、嘲笑にはこれしか思いつかない。
「はっ! 自らを乙女と言うのか! 面白い、実に面白い!」
「何言ってるのかしら? わたしより面白い人なんてゴロゴロいるわ。でも、その中で特に目立つ人がいるけどね」
わたしの頭の中には、無邪気に笑うシャルルがいた。いつもわたしたちを振り回してるくせに、それに気づいていない。きっとこれからも気づかないだろう。あれが計算なら……
――……認めさせてあげるんだから。わたしだってあなたくらい強いって、いつか倒すんだって!
「……ほう、まぁ気にする必要もない。こい」
「――言われなくても!」
わたしは一気に飛び出し、ガイアの目の前まで移動する。その最中に腕に魔力を込めて氷属性を付与しておいた。これはガイアでもダメージが入る!
「はっ!」
「ふん、その程度――」
パリンッ
氷が砕ける音、しかしわたしの拳はガイアの顔面に当たる。ダメージは入った。でも、狙いはこれじゃない!
「愚か。突っ込んでくるなんて、弱者のする――なに!?」
「かかったわね!」
砕けた氷がガイアの体中に突き刺さる。足・腕・腹・首など、様々なところに。
――油断したのが運の尽き!
「ぐっ……これでは氷が邪魔で、下手に動くと傷が広がる……!」
「今のうちよ!」
一瞬で氷を生成し剣に形を変える。所要時間は一秒未満。瞬きする間に完成している。
――これで、終わり!
剣をガイアの首に向かって振る。昔から剣の扱いには慣れている。だからなのか空気がきれいな弧を描いた。
剣がガイアに触れるその瞬間、恐ろしいことが起こる。
ガイアが……受け止めたのだ。黒い斧で。
「やるなフローズン。走馬灯を見かけたぞ」
「なっ! 剣が……動かない!」
「我にかかればこんなこと容易い。あと少しスピードが速かったら殺せていただろう」
「っ! はぁぁっ!」
動かない剣を両手で力いっぱい握り、振った。今まで出たことない力に驚く暇もなく、とにかく倒すことだけを考えた。
バリンッ!
さっきと似たような音がした。今度は砕ける音ではなく、絶望のような。
手元をよく見ると、そこに剣の柄だけがあった。肝心の剣身は……ない。
――な、なんで……
「……残念だ」
「っ!」
危険を察知し、受け身の大勢をとった。
ガードした腕にガイアから放たれる渾身のキック。重い……筋肉質なだけあって威力が強い。腕が痺れる。
「ぐっ…! なによこの威力は……!」
「幹部は魔法だけが強いわけじゃない。しっかりと体術も学んでいる」
「そうよね……じゃないと幹部になんてなれないもの。わたしだって体術は学んでる。それと同じね」
「……そうだな。だが、魔族の体術と人間の体術は違う」
確かに、人間と魔族では考え方、体が根本から違う。だから違いがでるのも当たり前のこと。
「知ってるわよ。わたしは体術が苦手だから、魔法で攻める」
「……同じだ」
「――! 氷国!」
「斧ノ闇!」
それぞれの上級魔法が放たれる。わたしは巨大な氷を。ガイアは巨大な闇の斧を。
――シャルルに習った通り、密度を上げる!
一気に氷を凝縮し、一本の槍に変えた。氷国は巨大な氷を生成するため。本命は……こっち!
――わたしが独学で作り出した、魔法!
「究極魔法!聖なる氷、氷神ノ槍!」
「……なっ――」
究極魔法。それは上級魔法のさらに上、最も強い魔法につけられた栄光の魔法である。これを使えるものはごく一部、わたしも使えるかどうかは賭け。
辺りは|眩い光と霧にに包まれ、どうなったのか判別がつかない。もし、これを耐えられたとしたら……今度こそわたしは終わる。
「……ど、どうなったの……?」
光も霧も少しずつなくなっていく。その先にいたのは……
「はぁ……本当に死にかけた。走馬灯を見たぞ……」
全身傷だらけで立っているガイアがいた。たくさんの傷から血が流れている。
「――あはは……もう魔力が残ってない。戦えないわ」
「そうか……我もほとんど残っていない。だがな――」
「――!?」
わたしはとんでもないものを見てしまったかもしれない。ガイアは回復を始めたのだ。傷だらけで再起不能に見えた体がみるみる治っていく。
「な、なにが……なんで回復してるのよ!」
「保険をかけておいて正解だった。我も無責任に動くほどバカではない。一応負けることを想定していたのだ」
そんなの、聞いてない。
敵に策を話すのもおかしな話だが、これはひどすぎる。
「……そんなの……わたしがしてきたことが無駄みたいじゃない……! でも…ここで諦めるほど……弱くない!」
「……そうか、では続きをしよう。魔力も体力も回復した」
「……ええ、望むところよ!」
ガイアがこちらに歩んでくる。
わたしは立ち上がり、戦闘準備をする。魔力は残っていない、純粋な肉体のみで戦う。
まさにその時だった。
ふと空を見ると美しい流れ星のような物体が遥か上空動いている。
「……ガイア、あれはなに?」
「……なんだあれは……!? 体が……震える……」
「え?何言ってるのかしら……意味がわからない……」
「待て……待て待て待て! こっちにくるぞ!」
「なんで――っ!」
その瞬間、流れ星がわたしたちの間に割って入るように落ちた。
「……誰だ!戦闘の場に割って入るなど――」
「……あなた……シャルル!?」
立っていたのは、白髪の少女。見覚えのあると思ったら、本人だった。
だが……
「大丈夫? マリー」
その言葉に……感情はなかった。まるで人形のような、覇気のない発言。
「あ、あなた……本当にシャルル?」
「何言ってるの、見ればわかるでしょ?私はシャルル。学園の首席」
「……なにを話しているのかは知らんが、我とフローズンの戦闘に口出しを――」
「うるさい。黙って」
「っ……」
命令のような言葉。一つ一つがトゲのように刺さる。わたしなら耐えきれていない。
「遅くなってごめんね。今からこの幹部を倒すから」
「……それはありがたいけど……あなた、目が……」
そう、ずっと気になっていた。いつもはオッドアイの目が、黄色く変化していた。
「……なんでもないよ。じゃあ、マリーはここで待っててね」
「あ、ちょっと!」
シャルルはわたしに見向きもせず、ガイアに集中した。
◇
――へぇ、ガイアがシャルルちゃんのお友達を傷つけたんだ。殺しはしないけど、お仕置きはしないとね
妾はガイアの前に立つ。なにも持っていない完全な無防備状態。
「お前は……何者だ。我が震えることは魔王様以外初めてだぞ」
「マリーと同じ学園の首席。全然強いから、覚悟して」
「……はっ、それは楽しみだ」
「じゃあ始めよ」
上手くシャルルちゃんらしく振る舞えてるのかな。きっと全然だめだろう。
だってシャルルちゃんは明るくて、みんなに優しくて、天然で……あぁいいところを出したらきりがない。
――妾はシャルルちゃん……妾はシャルルちゃん……あぁ妾は今シャルルちゃんの体を使って……ゾクゾクする
いかんいかん。よからぬことを考えてしまった。あくまで目的はこの進行を終わらせること。あ、それを果たされるまではシャルルちゃんを……だめ!
――こんなのでも一応母親なんだから……しっかりしないと
「……究極魔法、母なる海」
「――究極魔法!? わたしが使ったあれと同じ位の……」
「お前も究極魔法持ちか! 我も学ぶ、受け止める!」
ガイアが受け身の体勢をとっている隙に、高速で後ろへ回り込む。まぁ妾にとって究極魔法など目くらましとかにしか使わん。ただ前に超巨大な水を生成しただけ。
「究極魔法、母ノ教え」
「っ! それは防ぎきれな――」
「究極魔法を……しかも種類の違うものを連続して……」
正直に言うと、すっごく弱い。ガイアという幹部は。魔王の配下だから少しは期待したけど、それは間違いだったみたい。妾の相手にすらならなかった。
天から雷が降り注ぎ、大雨は波となってガイアを襲う。
「――」
「よし、倒したね」
妾が見たのは仰向けになって倒れているガイア。威力は抑えてあるし体の原型を留めれてる。粉々にしたらシャルルちゃんに怒られちゃうし……いや、怒られるのもまた至福……違う違う。
「……お前……強いな…我が手も足も出なかった……」
「言ったでしょ? 私は強いって」
「はっ、そうだったな」
「しゃ、シャルル! 早く始末しなさい! でないとこの戦いは終わらない!」
「……うん。そうだね」
「……我の…負けか」
ガイアは諦めたように、しかし晴れ晴れしい顔のまま目をつぶった。
――転移魔法
ガイアは跡形もなく消えた。まるでそこにいなかったかのように。まぁ転移させただけだしそう見えるか。
「た、倒した…の?」
「……うん、倒したよ。もう安心してマリーは医療班のところに行って回復しよっか」
「そ、そうね……これじゃわたしは動けない。ありがとう、シャルル」
「礼なんていらないよ。まぁ受け取っておくね」
その言葉は届いただろうか。マリーはすでに背を向けている。歩けるくらい力が残っていてよかった。妾少し心配したんだから。
「……よし、次」
妾は真上に飛び、もう一人の幹部のもとへ向かう。
✭
「……はっ! い、生きてる……?」
我は起きると魔王城。傷も治り、体が軽い。
「まさかあいつは……いや、違う違う…はず」
そんなことをする人物なんて一人しかいない。もし我の予想が正しいなら……
「なんで、学園なんて通ってるんだ……」
そんな疑問が浮かんだ。全て計算しているのだとしたら……
「恐ろしい……」
「続きが気になる……!」
「もっとないの!?」
という方は下の☆☆☆☆☆から、応援をお願いします。
正直に書いてもらって大丈夫です。よければ感想も。
ブックマークいただけたら泣いて喜びます。
天然で鈍感な愛香君と愛香君が好きすぎるアリスちゃんのシリーズも見てもらえると嬉しいです。
今後もよろしくお願いします。




