03_宇宙に咲く花_02/03
「カタアミ、リュウール艦長より。了解来ました」
「おっけーおっけー。じゃあ、おっ始めるぞ! 総員スタンバイ」
「電力系、副回路へ切替完了」
「コンフィギュレーションより、投影像の輝度を二〇%まで減衰表示」
艦内照明が非常灯に切り替わり、ホロの輝度減衰とあいまって、艦内は薄暗い照明だけが頼りとなる。
豪華客船や観光船等の様に、わざわざ星の海を覗くための透明部分は、艦の脆弱性と直結するため、ほとんどの艦には極力取り付けられない。
彼らにとって……いや、レジャーボートや遊覧船を除く多くの艦乗りにとって、宇宙とはデータと、数値と、映像と、それから生存圏から見上げる物でしかない。
閉鎖環境の宇宙艦内で、宇宙を見られないことに不満を持つ者など、宇宙上がりか酔狂な者であるくらい、彼らはそれに慣れきっていた。
「第一主機フライホイール接続。点火。第二主機フライホイール接続。点火。異常なし」
「第一子機フライホイール接続。点火。続いて第二子機も接続。点火。異常なし。余剰エネルギー、すべて演算系へ移行」
「最外殻、第一、第二、コアブロック、重合水充填。続いて全隔壁閉鎖。」
「艦内循環系異常なし」
はずみ車の重い振動が、徐々に唸りをあげていく。
万一の突発事故に備えた隔壁閉鎖も行いはしたが、トランスポンダ情報と事前探査で空域的にはほぼ安全は確保されているし、虚数力場防衝繭の展開を考えれば、宇宙塵が問題になることはまず無いだろう。
それこそ偶発的に横っ腹に突っ込んでくる艦が有れば話は別だが、『ホウセンカ』級の運用に際しては連邦港湾公安部に運用予定の提出が義務付けられているし、公開情報となっている。
その中にはコピ・コピ=ルアクがこれから取る艦体機動も予定に入れている。
突っ込んで来る様な艦がいたら、連邦港湾公安部も黙ってはいるまい。
もっとも、『ホウセンカ』級二隻を双胴にしているコピ・コピ=ルアクは、出力と演算系だけを見れば、恐らく宇宙一と言って良い規格外のモンスター・マシンだ。
文字通り、並の艦艇とは一線を隔す『次元の違う航宙』ができる。
いざとなったら亜空間に逃げの一手だけでいい。
「演算系、書換反応一・二八から〇・九九へ移行。以降、レスポンスはオートへ切り替え」
「ウェロニカ。アイ・シー展開。七・一・一・一。防衛部、状況は」
「オーダー。イマジナリー・コクーン展開。出力七・一・一・一」
「防衛部より。フェムト秒フェーザーロック解除。コンマ三三でフリーロック設定」
「コントロールシステムオールブルー。問題有りあせん。」
出力系、演算系、自動艦体損傷監視システム、イマジナリー・コクーン展張出力、トランスポンダデータ、動的捜査データ等々、様々なチェック項目のホロがミゲールの周囲に展開していく。
キャプテン・シート脇からせり上がってきた緊急操作用の手動制御装置の出力制御を左手に、手動接続器を右手に握り、クラッチに左足を添え、ミゲールは目を瞑り、ふう、と一つ深呼吸をした。
「オーダー。行くぞ! 野郎共!」




