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03_宇宙に咲く花_03/03

 宇宙そとから見れば、非常に美しい光景であった。

 コピ・コピ=ルアクの艦後方に虹が凝縮され、散る。

 散る頃には既に、その進行方向……と言って良いのだろう……に光が凝縮し、後方へ向かって虹の尾を引いて流れる。

 二度、三度、四度。

 その度に咲く虹の花は、最早咲くのが早いのか散るのが早いのか判らないほどで、傍目から見ればそれはまるで、艦の先から蕾を作りながら後方に咲いては散っている様にも見える。

 スクーバ・ドライブ特有の現象である、デミコスモスへの突入と通常空間への復帰の際に発生する星の虹スターボウだったが、当然ながら、普通はこの短距離で何度も繰り返すメリットは無い。

 と言うより、短時間単距離でエントリーとダイブアウトを繰り返すこの機動は、れっきとした戦闘機動である。

 かつての戦争時代、ホウセンカ級『プロトエイト』の一翼であった二番艦『ツツジ』が敢行し、吶喊して轟沈した際に行った艦体機動である。

 その時に咲いた『花』は全部で八輪。

 代償として、インセクティアヌス・ベスパの猛攻を一身に浴び、巣星ネストへの楔を穿つとともに、多数の敵を巻き添えにしたものの、轟沈するに至ったのだが、悲しいかな、同じホウセンカ級を双胴にしたコピ・コピ=ルアクを持ってしても、それだけの数の花は咲かせられないのが現状であった。

「……やっぱり、リミッター解除とオーバーブーストも噛ませんと駄目かね」

 そうボヤくミゲールに、ウェロニカは

「それだけは止て下さい。何が起こるか、ホントに予想がつかないので」

 とたしなめられるのだった。

「まあ、以前より記録は伸びたから今回は良しとしよう。通常航行へ移行。ボヤボヤしてるとデミコスモスに居るカタバミに追い抜かれちまう。取り敢えずとっととアモリに向かうぞ!」

 そう言うミゲールの言葉に、復唱しながら各々の持ち場と連携し、通常航行へ移行シフトする乗組員クルーたち。

 そんなクルーを見るともなく見ているミゲールのシートのデスク部分には、古い写真……投影データ写真ホロットではなく……が張り付けてあるのをウェロニカは知っている。

 それは、かつての『カタクリ』艦長時代のミゲールと、ロストゼロ『ツツジ』の艦長と肩を並べて写っている物だ。

 だからこそ、大概のリスクはたしなめる彼女であっても、このトゥガル海峡通過時に彼が行う、まるで儀式めいた宇宙の花ラ・アルク・ブルーム航行にだけは口を挟まない。

 彼女は、それが彼なりの慰霊の儀式だと理解しているからだ。

「ウェロニカ。後しばらく任せる。埠頭ワーフ入る頃になったら教えてくれ」

「オーダー」

「愛してるぜウェロニカ。じゃ、頼まぁ」

 ウェロニカは、この時ほど自分がレプティリアンだと感謝したことは無かった。

 だから、声音だけは努めて冷静に「オーダー」とだけ返した。

 返せたはずだ。多分。

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