02_井戸掘り職人たち_3/3
「お母さん。二人目の方って、どなた?」
二人の会話が途切れたのを確認したチハが、トメに小声でそっと聞いた。
「どなた、と言うか……『彼ら』にはそもそも『個』の概念自体がないから、名前なんかはないよ。『我々』が敢えて『彼ら』を個体として認識する時は、大概は『井戸掘り職人』だね。人が集まると『ディギィ』って呼んでるかな? 皆」
その「ディギィ」氏はさっきから膨張し、収縮し、たまに表面に紫電を迸らせて、間断なく形を変化させていたが、
「結局、スタンダードフォーマルなカクテルドレス風にしてみたのだが、どうかね?」
そう音声語で語りかけるディギィ氏は、歳の頃は二〇代半ばくらいの、ごく当たり前の地球人のコーカソイド種に見える姿形となっていた。
さっきまでの不定形の金属光沢はどこへやら、モルフォ蝶の翅色の様に虹色が混じる蒼いドレス以外は、見た目普通の地球人と区別がつかない。
何となくトメに面影が似ている気がする。
二人で並ぶと姉妹みたい。……そんなことを考えながら、チハは改めてディギィ氏と握手と挨拶を交わしたのだった。
「初めまして……か。やはりそう言う風になるかね? 彼女の中では」
「そこはやむを得ますまいよ、ディギィ。あなたと彼女は『あれ』以来ですしな」
「こっちとしては時間感覚が違うからそうなんだろうけどね。ついこの間の出来事のようだよ」
「ヒドロイドは基本的にライフサイクルは短い部類に入りますからね。特に柔らか素肌は」
「まあ、やむ無しだね。それにしてもその柔らか素肌で知る限り一番の祭好きのぼんくらがまだ来てないというのが意外なものだね」
「まあ、彼のことです。トゥガウルシュ? でしたかな? トメさん。噂をすれば……」
「大きな主役は最後に来るもんだ、なんて言いながら、直ぐにでも来ますよ、きっと」
世間話で笑いあう三人。
そんなトメとチハの目の端の投影像に、とつん・とつんと四回ばかり、スクーバエントリとエグジットの次元振動波形を予測範囲内で拾ったとログが映る。
的を射たとばかりに相好を崩したトメは。イーナラ氏とディギィに笑いながら話す。
「やっぱりトゥガウルシュでしたよ。噂をすれば、大きなネヴィティが最後に出て来た様で」




