表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/136

進みゆく準備

 とりあえず、蒼真がいなくなったあの場所に行って、調べなきゃ。

 あそこに行けば、何か分かるかもしれない。


 そう、一週間前に行った鉱山。

 蒼真と一緒にサラマンダーを狩りに行った鉱山。


 蒼真が悪魔という生命体と戦った場所。


 あの時はアルバートに意識を奪われ、何も調べることが出来ずに終わった。ううん、あの時はアルバートに気絶させられなかったとしても、きちんと何かを調べるなんて出来なかった。


 けど、今なら出来ると思う。

 蒼真のことを追う手掛かりになるもの、そこまでは行かなくても、何かつかめるかもしれない。


 だからこそ、準備をしなきゃ。


「この街の周辺の地図とここから西に行ったところにある鉱山周辺の地図とかない?」

「おう、それなら置いてるよ。これとこれで合っているかい?」


「そうそう、それなんだけど……、いくら?」

「そうだねぇ、ここの地図は中々なくてちょっとお高くなるのだけど、銀貨十二枚ってところかな?」


 財布をちらりと見てみる。

 うーん……。


 これから、他にも色々見て回らないといけないことを考えると、ちょっと厳しいなぁ……。


「もうちょっと、もうちょっとだけ安くしていただけませんか?」


 少し屈んで、上目使いでお願いしてみる。こういうのはあんまりやらないから、ちょっと恥ずかしいな。


 母直伝の値切り術。

 母曰く、あなたは私の娘なんだから、十分いけるはずよ!とのことらしい。


 ちなみに、使っていい相手は男性限定。女性にやっても、大して効果はないらしい。

 ちょっと気が引けるけど、やっていかないと。


「うむ……。でも、本当に数少ないのよ……」


 目の前の店主は照れたように私から目をそらしながら、悩んだ様子を見せる。

 あと一押し。


「お願いします」


 男性は唸りながら、悩んだ末に顔を上げた。


「仕方ない。二枚セットで銀貨十枚にしよう。それでいいかい?」

「ありがとうございます!」


「ここからそこそこ距離はあるから、注意してな」

「はい!」


 よしと心の中でガッツポーズを決めながら、私は人ごみの中を進んでいく。にぎやかなのは良いことだろうけど、ちょっとしんどいな。


 ああ、そういえば、こういうところではスリに気を付けないといけないんだっけ。


 私もきちんと気を付けとかなくちゃ。

 財布はちゃんとあるし、地図もカバンに入れてるな。

 村ではそんなこと気にしなくて良かったから、気を抜かないようにしないと。


 さっき見たあの少年みたいな子もいるかもしれない。

 あれは遠目で見ていた上に自分が関係者じゃないから良かったけど、自分が奪われた本人になってしまったらたまったもんじゃない。


「こんなアクセサリーとかどうだい?」


「武器を見ていくなら、ここで見ていきなよ。命を守る大切な物、きちんとここで選んで行ってくれよ!」

「いやいや、命を守るなら、防具よ。この鋼で作られた鎧なんて、魔物の攻撃から身を守ってくれるよ」


「指輪を作るのに、この鉱石はどうだい?」


「こちらの木の実は限られた地域でしか取れない、さらに今しか取れない、限定もの。急いでお買い求めを~」


 がやがやとしていて、騒々しいはずの一帯の中で目立つように声を張り上げて、商売をしている。


 少しうるさいけど、こうでもしないと声が届かないよね、こんな場所だと。

 商売で儲けを出さなきゃいけないから、必死だなぁ……。


 私も、もし蒼真が電話というものを完成させていたら、あんなことをしていたのかな?

 どうなんだろ。


 ん?

 そういえば、今、鉱石売っているような声聞こえたけど、それはどこだろう?


 西の鉱山付近について詳しかったら話を聞いとかないと。



 ああ、あそこか。

 あそこの椅子に腰掛けて、すぐに立てるように椅子のわきに杖を置いてるおじいさん。岩から削り出したのがはっきりわかるような石がたくさん店に並べてある。


 値段もピンきりね。

 銀貨四枚のものもあれば、白金貨六枚という値段がついてるものさえある。


 けど、どれも綺麗……。


 平らな面を六つ持つ六角柱の形を成しながら、先端はすっと収束している水晶。透き通るその鉱石は日の光に当てられて、光を反射させて輝いているようにすら見える。

 空のような透き通った水色をした結晶を持つ天青石。柔らかで壊れやすい儚さをも備え付けたそれはどこか美しいけど触れがたい高嶺の花のイメージを感じさせる。


 いやいや、そんなことを考えるんじゃなくって。

 そう、西の鉱山について聞かなくちゃ。


「あのおじいさん、ちょっといいです?」

「なんだい、お嬢さん」


「少しね、鉱石に興味出てきて、西の鉱山まで行ってみようかなって思ってるんですけど、何か知っておくべきこととかあります?」

「ふむ……。誰かと行くんだろうね、一人だと危険だよ?」


「ええ、まぁ……」


 一人で行くつもりですけど。


「そうだね、山の表面が崩れて、鉱山内部が一部崩れてしまっているとかいう話は聞くね。あとは最近まで厄介だったコカトリスとガルーダがいなくなったらしいから、比較的安全だとは思う」


 コカトリスは倒したから、分かる。

 だが、ガルーダ?


 ガルーダはどうしていなくなったの?

 うーん、わからないけど、何か理由もありそう。


「なるほど」

「でも、サラマンダーの群れには注意しなよ。彼らはそこまで攻撃的な性格してないけど、光を当てたりとか刺激与えるのはちょっといけないから」


「サラマンダーに注意っと」


 メモメモ。


「あそこで獲れる鉱石の中でも、炎晶石は特に取扱い注意。理由は分かるよね?」

「ええ。あれは常温下では千度近くまで温度が上がるんですよね。だから、持ち帰るなら、必ず鉱石の周りを低温の状態にして持ち帰ること。理想としては零度を維持した方がいいってことですよね」


「そうそう。それか密閉した空間なら温度が上がりすぎることはないよ。熱となるはずの力は光となって周りに放出されるんだ。だから、ランタンのように使って管理する人も多いね」

「あー、そうですよね」


「まぁ、そんなものかねぇ。魔物も異常な強さの者も今はいないみたいだし、鉱石を採りに行くなら、最適かのう」

「ありがとうございます」


「もし採ってきた中で余る物があれば、売ってね。そうすれば、きちんとした価格で買い取らせてもらおう」

「その時はよろしくお願いします。では、失礼します」


 さてさて、今日のところはもうちょっと情報収集して終わりかな。


 あそこに行けば、何か分かるかもしれない、そんな期待を持ちながら、私は出発へと向けた準備を進めていく。


 決して立ち直ったわけじゃないよ。でも、蒼真のため、ううん、自分のために頑張りたいから。

 一週間前と同じ後悔を何もしなかったからという理由で負いたくないから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ