表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/49

020.二回目のお披露目会


「アリアリーシェ・ディ・ナウロン。血操の加護を授かりました」


 私は貴族達の視線を浴びながら、声を張り上げる。


 私の血を操る加護は、"血操の加護"という名称がついているらしい。つい昨日知った。

 どんな加護にも、効果によって名前が決められているそうで、こちらの世界には加護辞典なるものもあるとか。


 と、そんな風に役体もない事にあれこれ思いを巡らせているのは、貴族達の視線の圧が凄すぎるからだ。


 もうね、凄い。

 "これが鮮血王女か"みたいな感情がびしばし伝わってくる。というか、実際聞こえてくる。

 口に出さないくらいの分別は持ってほしい、という私の思いは、間違ってないだろう。


 最後まで強烈な視線を浴びたまま、私は壇を降りた。


 * * *


 赤ちゃんの紹介、加護が発現した子達の紹介が終わり、ここからは自由時間だ。


 前回のお披露目会では、母様に連れられてさっさと帰ってしまったが、今回は少しここにいようと思う。

 なお、私以外の王族は、ルーシー義母様以外は帰っている。私にそばにはセイラがいるけど。


「うーん、何しようかな」


 独り言ち、辺りを見回す。談笑している貴族ばかりだ。

 しかしその中に一箇所だけ、子供達が集まっている場所を見つけた。


 ……あそこに行ってみようかな?


 私はそこに近づき、集団の輪に声をかける。


「あの……」


 しかし。


「うわっ」

「せんけつおーじょだ!」

「逃げろー!」


 と露骨な反応で三メートル近く距離を取られた。ほぼ全員だ。


「……」


 いや、私にも傷つく事はあるんだけど?

 これが子供故の残酷さか。


 私は仕方なく、距離を取らなかった数少ない子に視線を向ける。これで怯えられたら、ダメージが倍増するところだったが、幸いその子達は何の反応もしなかった。


 恐る恐る、その子達に更に近づく。距離が残り一メートルになった時、一人の男の子が口を開いた。


「おい」

「ぅひゃいっ」


 ……って、私がびくついてどうする。


 平静を取り戻し、改めて返事をした。


「何?」


 そして、その男の子をじっくり観察する。


 四歳くらいだろうか。ぱっちりとした丸い瞳は緑色で、幼さとは関係なく可愛らしい顔立ちだ。ワックスをかけたのかツヤツヤの髪は、派手な赤色で……

 ……あれ、この色、どこかで見た事がある気が。


 私が記憶を辿る前に、その男の子が私に問う。


「おまえがせんけつおーじょか?」

「……一応、そう呼ばれてるけど」


 鮮血王女という呼び名への複雑さと、意外と口調の悪いこの子に対する複雑さで、返答がやや遅れる。

 だが、あちらは気にしなかったようだ。


「オレはパーシヴァル・デューリュ・グランデンバルグ。ひれふせ」

「……ああ! シエンナ義母様の!」


 ぽんと手を打つ。謎が解けてすっきりだ。


 グランデンバルグは、この国でも歴史の古い公爵家だ。その権力は、王家に次ぐとか次がないとか。

 シエンナ義母様が生まれたところでもある。シエンナ義母様はグランデンバルグ現当主の妹だったはずなので、当主の息子であるこの子はシエンナ義母様の甥っ子にあたるのか。


 私が赤い髪を見て納得していると、パーシヴァルがやや苛立ったように言う。


「ひれふせ、っていっただろ」

「あ、ごめん。そうだっ……ひれふせ?」


 聞き間違いかと思い、パーシヴァルを見ると、頷かれた。

 ……ひれふせ違い? ひれ、ふせ……鰭布施? 鰭のお布施って何。


「ふん、ばかにはわからないか。ひれふせっていうのは、あたまを地面にこす……すこりつけて? あやまることだ」

「謝るって何を」

「それは……」


 パーシヴァルが何か言いかけた、その時。


「ああ、もうパル様!? 何をしてらっしゃるの!?」


 新たに女の子の声が響いた。

 声がした方向を見ると、そこにいたのは十五歳前後の勝ち気そうな美少女。橙色の髪はいわゆる縦ロールに編まれており、猫を思わせる切れ長の目は、髪色とは対照的な青。全体的に発育がいいのか身長は高い。更に、大きい。

 何が、とはもはや言うまい。こんな事を考えるのも、転生してから三度目である。


 でも、あの大きさ。セイラも母様もとっくに越してるんじゃない? 当然、前世の私とは比べるのもおこがましいほど。


 その少女を見て、パーシヴァルが(うめ)く。


「げ、イザベラ……」

「げ、とはなんですの、パル様。それで、こんな乳臭いところに来た弁明は?」

「そりゃ、えっと……せんけつおーじょをいじめに……」

「鮮血王女?」


 そこでようやく、イザベラと呼ばれた少女の青の瞳の焦点が私に合う。彼女は、「あら、いましたのね」と呟いて、私に深々と礼をした。


「これは失礼。わたくしはイザベラ・マーファイ・クロフォード。パル様……パーシヴァル様の婚約者にして、クロフォード侯爵家の長女ですわ」

「あ、えっと」


 こういう時、どんな返事をしたらいいのか分からずにおたおたしてしまう。

 すぐに返事をしなければと思いつき、慌てて口を開いた。


「分かった。よろしくね、イザベラ」

「ええ」


 堂々と頷くイザベラ。その顔に広がるのは、余裕そうな笑みだ。

 やっぱり、いかに前世の経験値があろうとも、こういった貴族的な仕草には慣れない。ザ・貴族といった感じのイザベラが羨ましい。


「あ、イザベラ」

「なんですの、パル様。……そういえば、何故ここに来たのかをまだ聞いていませんでしたわね」

「だから、せんけつおーじょをいじめに」

「ふーん?」


 イザベラがすっと目を細める。

 そして、


「頭が沸いていらっしゃるのかしら? あなた様はグランデンバルグ公爵家の跡取り。それがこんな甘ったれた子供に時間をかけると? 寝言は寝ても言わないでくださいな。不愉快でしてよ。その赤い髪、(むし)って差し上げましょうか?」


 舌鋒鋭くまくしたてた。

 途中、私にも流れ弾が飛んできた気がしたが、何よりダメージが大きかったのはパーシヴァルだ。


「そ、そんなこといわなくてもいいだろっ」

「はあ? 口答えの許可なんて、与えていなくってよ。さあ、帰ってお勉学に励んでくださいませ」

「いやだ! こいつをいじめたい!」

「人を指差さないでほしいな」


 こちらに向けられた人差し指をぺしりと叩いて払う。可愛くない四歳児だ。

 その途端、パーシヴァルの顔が赤くなった。


「あ、てめっ! オレのからだにさわったな!」

「……パーソナルスペース広かったりする? だとしたら謝るよ」

「ぱー……?」

「行きますわよ」

「あー!」


 イザベラに首根っこを掴んで引きずられ、パーシヴァルが無念そうに声をあげる。

 最後っ屁のように私に暴言を吐いてきた。


「ばーか! あーほ! かーす! ゴーミ! しーね!」

「死ねとか言わない」


 あと、私死んだ事あるし。

 パーシヴァルは、私の反応の薄さに悔しそうにしているが、しょせん子供の癇癪だ。まともに取り合う方が馬鹿らし、


「ひーんにゅー!」


 ……はぁ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ