盤面と、剣士の流儀
ウロボロスによる傷の治療を終え、俺たちは作戦司令室の巨大な円卓を囲んでいた。
新参者であるレオンに対し、翠蓮とイヴが『神殺しのゲーム』のルールと、現在の盤面の状況を説明するためだ。
「……なるほどな。つまり、俺が斬ったあのデカブツは『神様』で、俺はそいつを殺したから『王』ってやつになっちまったと」
レオンは出されたコーヒーを美味そうに飲みながら、あっけらかんと頷いた。
「驚かないんですね、レオンさん。普通の人間なら、精神に異常を来してもおかしくない事実ですが」
セリアが不思議そうに首を傾げる。
「俺の人生は『剣』がすべてだからな。相手が神様だろうが王様だろうが、強えヤツと本気で斬り合えるなら、そんな肩書きはどうでもいい」
レオンは、傍らに置いた白銀のクレイモアの刀身を、布で愛おしそうに磨き始めた。
「この剣も、神様からもらった最高の一振りだ。俺はもう、これだけで大満足だぜ」
「……本当に、根っからの戦闘狂ですね」
翠蓮が呆れたようにため息をつき、本題へと入る。
「問題は、なぜ今、世界中で同時に神が顕現したのか、です」
翠蓮はモニターに、欧州の地図と覇王アーサーの顔写真を映し出した。
「これを引き起こしたのは、【覇王・アーサー】ではないかと推測しています。……彼は神殺しの闘争に飽き足らず、世界中に意図的に神を氾濫させ、優れた権能を獲得……あるいはそう見せかけてもっと別の目的があるのかも」
俺は腕を組み、忌々しそうに舌打ちをした。
『……翠蓮さんの推測を裏付けるデータが入ってきました』
イヴが、キーボードを叩きながら世界中の状況をモニターに表示する。
『現在、世界中で顕現した神々の討伐状況ですが……各国に散らばる王たちが、防衛のために動いています。アフリカでは、【獣王・ガルド】が神の討伐に成功した模様です』
「獣王も動いたか。そいつの獲得した目は分かるか?」
俺の問いに、イヴは首を横に振った。
『明確な階位は不明ですが、討伐後に巨大な神威は観測されていません。おそらく【6】ではない低階位の権能だと思われます。……しかし、問題は欧州です』
モニターの欧州のマップが、真っ赤な警告色に染まる。
『……先ほど、欧州に顕現した極めて強大な神を、覇王アーサーが単独で討伐しました。そして……アーサーの拠点から、新たな【6】の階位の神威が観測されています』
「……なんだと!?」
俺は思わず立ち上がった。
「アイツ、すでに『アテナ』と『ゼウス』っていう二つの最高位を持ってるんだぞ! それに加えて、三つ目の【6】を引き当てたっていうのか!?」
『……はい。アーサーは現在、【6】の権能を三つ、【4】と【3】を一つずつ保有していることになります。……』
司令室が、絶望的な沈黙に包まれた。
五百年という時間。そして、圧倒的な強運と実力。アーサーはまさに、『真の最強プレイヤー』だった。




