帰還、そしてイレギュラーな新王
数時間後。西東京市、御堂家の地下に広がる八咫烏の作戦司令室。
無事に海神を討伐した翠蓮、紅刃、雅の三人が帰還し、作戦コンソールを操作するイヴの元へと集まっていた。
「翠蓮さんたち、お疲れ様です。東京湾の被害は最小限に抑えられました。……統も、先ほど奥多摩での討伐を完了し、こちらへ向かっています」
「よかった……。すばる君、怪我は……」
ウィィィィン、と。司令室の自動ドアが開いた。
「……おう、ただいま。なんとか片付いたぜ」
「統ッ!」
血と泥にまみれ、右半身を引きずるようにして入ってきた統の姿に、セリアが慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか!? 酷い怪我……急いで治療を!」
「ああ、悪い。俺の新しい権能のテストで、ちょっと無茶しすぎた……。それより、紹介したいヤツがいるんだ」
統が背後を振り返ると、そこには。
ボロボロのトレンチコートを纏い、肩に巨大な白銀の両刃剣を担いだ、ヨーロッパ系の三十代の男が立っていた。
「……あ? なんだここ、秘密基地か? すげぇな坊主」
男は、司令室の最新鋭の機材を珍しそうに見回し、無邪気に笑った。
「統……? その、薄汚いオジサンは誰ですか?」
雅が警戒して妖刀に手をかける。翠蓮もまた、その男から放たれる『ただ事ではない神威』を感じ取り、扇子の奥で目を細めた。
「あー……。いろいろあってな。こいつ、奥多摩で俺と一緒に神をぶっ倒した一般人だ。……名前は、えーと」
「レオンだ。レオン・ハルト。よろしくな!」
レオンと名乗った男は、人懐っこい笑顔で白い歯を見せた。
「ただの一般人が、神を倒すなどあり得ません! まさか……」
イヴがモニターの解析データを叩き出す。
『……解析完了。対象の生体データから、間違いなく魔力密度は……最高位の【6】の階位です』
「「「……はぁ!?」」」
司令室にいた全員が、呆然と声を上げた。
「……統。まさか、この男が神のトドメ(ラストヒット)を刺して、サイコロを振ったとでも言うんですか?」
翠蓮が信じられないという顔で問う。
「ああ。俺が権能でこいつの剣の質量を上げてやったとはいえ、三十年間剣を振り続けた執念だけで、マジで神のコアをブチ抜きやがった」
統は疲れたようにため息をついた。
「紹介するぜ。偶然生まれたイレギュラー。……新たな王、【剣王】のレオンだ」
「へへっ、よく分かんねえが、なんかスゲェ称号をもらっちまったみたいだな!」
レオンが白銀のクレイモアを肩でポンポンと叩く。
その底抜けに明るく、そして純粋に『剣の強さ』だけを求める男の登場に、緊迫していた司令室の空気は、一瞬だけポカンとしたものに変わった。




