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神殺しのダイス・マキア ~最弱ギャンブラー、命をチップに傲慢な理を物理で粉砕する~  作者: kiro


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神速の弾丸と、ヤケクソのラストヒット



「オォォォォッ!?」


俺の膨れ上がった魔力に気づいた剣神が、標的を男から俺へと変え、山を割るほどの凄まじい剣圧を伴った斬撃を振り下ろしてくる。


「坊主、手出しすんなって……言ったろ……」


背後で、血塗れの男がうわ言のように呟く。


「るせえ。死にかけの一般人がしゃしゃり出てんじゃねえよ」


俺は、迫り来るビルサイズの巨剣を前にして、深く息を吸い込んだ。


(……やるぞ。出力は最小限ミニマム・ベット。反発力を極限まで抑え、肉体の自壊を防ぐ!)


俺は足元の岩盤に向けて【2の目】の『微弱な斥力』を展開し、自らの身体を【1の目】で『質量ゼロ』に設定した。


次の瞬間。

ドォォォォォォォンッ!!!!


俺の体は、振り下ろされる巨剣の横をすり抜け、超音速の弾丸となって巨人の懐へと突き刺さった。


激突のコンマ一秒前、右拳の質量を『特大』へと反転させる!


「万軍の戦車&超音速質量弾オールイン・バレットッ!!!!」 


メキィィィィィィンッ!!!! 


黄金の炎と無限大の質量が、音速の運動エネルギーを伴って、剣神の強固な胸部の黄金装甲に直撃した。


「ゴァァァァァァァッ!?」


凄まじい衝撃波が巻き起こり、巨人の体が空中に浮き上がり、そのまま背中からズドォン! と地面に叩きつけられる。


出力を抑えたおかげで俺の腕は吹き飛ばなかった。だが、反動で右半身の筋肉が悲鳴を上げ、俺自身も血を吐いてその場に崩れ落ちた。


「……ハァ、ハァ……。クソ硬えな。一撃じゃ装甲をブチ割るのがやっとか……」


剣神は胸の装甲を完全に砕かれ、奥にある光り輝く『コア』を露出させながらも、怒り狂って再び立ち上がろうとしていた。


その時だった。


「……見えたぜ。一番、脆そうなところがよ」


俺の背後から、折れた両腕をダラリと下げた男が、幽鬼のように立ち上がっていた。限界を超えた足の筋肉だけで大地を蹴り飛ばし、巨人の胸元へと跳躍する。


血まみれの両手で握りしめたひん曲がったロングソードを、剣神の剥き出しのコアに向けて振り抜こうとしていた。


「おい、オッサン! バカか、ただの鉄の剣が神に通用するわけねえだろ! 弾き返されて死ぬぞ!!」


俺が叫ぶが、男は止まらない。


(クソッ、俺の体はもう動かねえ! このままじゃあのオッサン、ミンチになっちまう!)


俺は、地面に這いつくばったまま、男の握る曲がったロングソードに向かって右手を伸ばした。


「あー、ちくしょう! どうとでもなれッ!!」


俺はヤケクソで、残された最後の魔力を振り絞り、遠隔で【1の目】を男の剣に発動させた。


男が剣を振り抜いた、まさにその撃突の瞬間。


俺の権能によって、ただの鉄の剣の質量が『無限大(数万トン)』へと跳ね上がった。 


ズバァァァァァァァンッ!!!!


「——え?」


男自身が一番驚いていた。


ひん曲がったロングソードが、神のコアに触れた瞬間、凄まじい質量と運動エネルギーによってコアを紙風船のように『破裂』させたのだ。


「ゴ、ル……ァ……」


剣神の巨大な体が完全に硬直し、やがて光の粒子となって崩れ去っていく。


男はそのまま空中で意識を失い、真っ逆さまに落下してきた。俺は這いずるようにして飛び出し、間一髪でその血まみれの体を受け止める。


「……ハハッ。マジかよ。俺の権能のパスで、一般人が神にトドメ(ラストヒット)を刺しちまった……」 


俺が呆然と呟いた、その瞬間。

ピタリ、と。


世界の色が反転し、周囲の時間が停止した。


『——神殺しの条件をクリアしました。対象者を、精神世界へと引き上げます』


女神の無機質な声が響き、男の体が淡い光に包まれていった。


——視界が真っ白に染まる。


男が目を覚ますと、そこは無機質な『精神世界ホワイトルーム』だった。


『……信じられません。システムのバグですか? 魔力を一切持たない【ただの人間】が、神の討伐判定を獲得するとは』


空間に響く冷酷な女神の声に、男はボロボロの体で頭を掻いた。


「あ? なんだお前。神様か何かか? わりぃが俺は、そういうオカルトには興味ねえんだ。……俺はただ、あのデカブツを斬りたかっただけだ」


『愚かな人間よ。あなたは極東の王の魔力に助けられただけです。……ですが、ルールは絶対。神を殺した以上、あなたには権能を簒奪する【サイコロ】を振る権利が与えられます』


男の目の前に、巨大なサイコロがゴトリと現れる。


『振りなさい。とはいえ、魔力回路を持たない人間が扱える権能などありません。せいぜい低階位のハズレを引き、力に耐えきれず自壊するのがオチでしょうが』


女神の嘲笑を前にしても、男の碧い瞳は少しも揺らがなかった。


「……なぁ。俺は三十年間、ただ強えヤツを斬るためだけに生きてきた」


男は、ひん曲がった自分の愛剣を愛おしそうに撫でた。


「親も、恋人も、家も、全部捨てた。剣術道場の師範に勝っても満たされず、戦地で傭兵をやっても満たされなかった。……俺が欲しかったのは、俺の剣の限界を見せてくれる『圧倒的な強者』と、それに耐えうる『最高の剣』だけだ」


男は、血まみれの足でサイコロの前に立ち、真っ直ぐに虚空を睨みつけた。


「神の力だか何だか知らねえが……俺のこの三十年の渇きを癒やせるモンが入ってんなら、よこせ」


男が、純粋すぎる闘争心と、三十年分の執念を込めてサイコロを蹴り上げる。


ゴロゴロゴロ……!!


サイコロは激しく回転し、やがて一つの目でピタリと止まった。


その出目を見た瞬間、女神が『息を呑む』気配が空間を支配した。


『……な……【6の目】、だと……!?』


女神の無機質な声が、初めて強烈な動揺と焦燥に歪んだ。


『あり得ない! 黄金の剣神クリューサーオールが持つ、すべての剣と武装を絶対支配する最高位の権能! それが、魔力すら持たないただの一般人に……!?』


「……へへっ。よく分かんねえが、一番の『大当り』ってことだな」


男は、光に包まれながらニカッと笑った。

「ありがとよ、神様。これで俺は……もっと強えヤツと、死ぬまで斬り合えるぜ!」


現実世界。


空中に浮かんでいた男の体が、地上へとゆっくりと降り立つ。


「……おいおい」


倒れていた俺は、目の前の光景に息を呑んだ。


男の全身から、先ほどまでの「ただの人間」とは比較にならない、異常なほどに研ぎ澄まされた『【6】の神威』が爆発的に立ち昇ったのだ。


「……痛みが、消えた。腕も……治ってやがる」


男がゆっくりと目を開ける。その碧い瞳には、神の力を手にした者の証である、鋭く底知れない光が宿っていた。


男の手に握られていた曲がったロングソードは、先ほど討伐した巨人の巨剣を思わせる、美しくも無骨な『白銀の両刃剣クレイモア』へと変貌している。


「おい坊主。なんか知らねえが、すげえ力が湧いてくるぜ。……それにさっきは、お前が俺の剣に細工をしてくれたんだろ? おかげで最高の斬り心地だったぜ」


男は、白銀の剣を肩に担ぎ、俺を見て無邪気に笑った。


神殺しのシステムも、世界の危機も、アーサーの陰謀も関係ない。


ただ「剣で斬り合うこと」だけを求める、純度100%の戦闘狂バトルジャンキー


世界が異常事態に陥る中、極東の地にて。


俺のヤケクソのイカサマによって神殺しの条件を満たし、己の執念のみで最高位の【6】を引き当てた、イレギュラーすぎる新たな王——『剣王』が、ここに誕生したのだった。

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