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神殺しのダイス・マキア ~最弱ギャンブラー、命をチップに傲慢な理を物理で粉砕する~  作者: kiro


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絶対零度の反逆と、極東の全賭け(オールイン)



『——■■■■■ッ!?』


遥か上空の次元の裂け目から、炎の原初神が苛立ちの混じった咆哮を落とす。


自らが極上の絶望に熟成させたはずの果実——氷王レヴィが、あろうことか「泥臭いイカサマ師の群れ」に引き止められ、その狂乱ぜつぼうを引っ込めてしまったからだ。


「……随分と不満そうだな、旧き炎よ」


レヴィは、焦げた前髪の隙間から、上空の巨大な紅蓮の眼球を冷徹に見据えた。


数分前まで彼の全身から吹き荒れていた、自爆も辞さない『狂乱の吹雪』は完全に鳴りを潜めている。


代わりに彼の足元から広がっていたのは、音すらも凍りつくような、極限まで圧縮された『静寂の絶対零度』だった。


怒りや憎悪が消えたわけではない。


むしろ、その煮えたぎるような殺意を「仲間を信じて勝つため」の鋭利な刃へと、かつてない純度で研ぎ澄ましているのだ。


「……統。俺の氷で、あの次元の裂け目まで一気に『道』を創る」


レヴィは、視線を上空に向けたまま、隣に立つ俺に静かに告げた。


「あの眼球のド真ん中、一番熱量の高い『星のコア』を数秒だけ完全に凍結させる。……お前のその右腕で、砕けるか?」


「ハッ。最高のパスだ。俺の無限大イカサマを誰だと思ってんだよ」


俺は、ウロボロスの超再生で傷が塞がりきった右腕を力強く握り込み、口角を獰猛に吊り上げた。


「……上等だ。行くぞ、極東の群れ!! 俺たち全員の手札チップで、あの傲慢な星の眼球をブチ抜くッ!!」


『——■■■■■ッ!!』


原初神が、獲物の反逆を許さじと、太平洋を蒸発させたのと同じ『極太の熱線』を再び眼球から放つ。


だが、今の俺たちには、それを真正面から食い破る規格外の前衛がいた。


「ハハハッ! さっきは不意打ちだったが、正面から来るなら話は別だぜェッ!」


獣化の剛毛に覆われた獣王ガルドが、大地を踏み砕いて跳躍した。


彼が両腕をクロスさせて放ったのは、ただの膂力による『超圧縮された大気の壁』。熱線を相殺するのではなく、暴力的な風圧の盾で熱線の軌道を強引に左右へと逸らす。


「こぼれた火の粉は、俺が刻むッ!」


ガルドが逸らした熱線の隙間を縫うように、剣王レオンが白銀のクレイモアを乱舞させる。


【万物両断】の神域の剣閃が、降り注ぐ炎の概念を次々と「無害な魔力の霧」へと斬り裂き、俺たちの頭上に安全な空間を確保していく。


「セリア、紅刃、雅! 統の背中を護りなさいッ!」


翠蓮が武神の槍を構え、周囲から湧き上がる新たな炎の眷属たちを完璧な演武で牽制する。


「……フッ。どいつもこいつも、本当に規格外のバケモノ揃いだな」


その光景を見たレヴィは、フッと自嘲気味に、だが確かな信頼を込めて笑った。


そして、彼は両手を天へと掲げた。

「——『氷河期コキュートス』」


バキィィィィィィンッ!!!!


レヴィの放った絶対零度が、ガルドとレオンがこじ開けた空の隙間を一気に駆け上がった。


それは、彼があの日からずっと死の呪いの中で練り上げ続けてきた、原初の熱すらも停止させる究極の冷気。


空間の水分が一瞬で極太の『氷の柱』となり、空に向かって斜めに伸びる巨大なスロープを形成する。


さらに、その絶対零度の波動は、次元の裂け目から覗く『原初神の紅蓮の眼球』そのものに直撃した。


『——ガ、■■■ッ!?』


星の悪意が、初めて「苦痛」のようなノイズを上げた。


眼球の表面を覆っていた一万度を超える熱が、レヴィの執念の冷気によって急速に奪われ、その巨大な瞳のド真ん中に、分厚く白濁した『氷の膜』が張られたのだ。


「……今だ、統ッ!! あの炎の核が凍っているのは、たったの三秒だッ!!」


血の涙を流しながら、レヴィが絶叫する。


「応ッ!!」


俺は、レヴィが創り出した巨大な氷のスロープに飛び乗った。


左手から【2の目】の斥力を後方へ爆発させ、摩擦ゼロの氷の上を、音速を超えて一気に駆け上がる。 


(……だが、このまま無限大を叩き込めば、俺の右腕ごと自壊する!)


アーサーの防壁を砕いた時のように、右腕を固定する術がなければ、俺の身体は反動でバラバラに吹き飛んでしまう。


その時だった。


「——統ッ! 腕を出して!!」


氷のスロープの途中で、紅刃の炎の蹴りと雅の抜刀術に背中を護られながら、セリアが両手を突き出していた。


彼女は、なけなしの魔力をすべて『白銀の魔力』へと変換し、猛スピードで駆け上がる俺の右腕に向けて一斉に放った。


ガキンッ!!


俺の右腕を、幾重にも圧縮された『白銀の固定具ギプス』が包み込む。 


俺の剣となり盾となる第一騎士の、絶対の護り。


「……サンキュ、セリア! 最高の防具だ!」


俺は、白銀に輝く右腕を構え、氷のスロープの頂点——凍りついた原初神の眼球の真正面へと跳躍した。


『——■■■……ッ!』


原初の炎が、凍りついた眼球を必死に溶かそうと内部から熱を膨張させる。


だが、遅い。


「テメェらの退屈しのぎのゲームは、ここで終わりだ」

俺は、天空の次元の裂け目のど真ん中で。


【1の目】の質量ゼロによる超音速の運動エネルギーを、激突のコンマ一秒前に『無限大』へと極限反転させた。 


セリアの白銀のギプスが、腕が弾け飛ぶ限界の圧力を押さえ込む。


レヴィの絶対零度が、原初の炎の防御力を限界まで低下させている。 


極東の家族と、獣王の暴力が、この一撃のための道を拓いてくれた。


「——【超音速質量弾オールイン・バレット】ッ!! 砕け散れェェェェッ!!」


ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォン

ッ!!!!!!!!


星の理と、イカサマ師の矛盾が激突する。


無限大の質量を乗せた俺の右拳が、凍りついた原初神の巨大な眼球のコアを、物理的に、そして概念ごと完全に打ち砕いた。


パリンッ……!! という、世界が割れるような甲高い音。


直後、次元の裂け目の向こう側で、原初神の巨大な思念が耐えきれずに断末魔の波動を上げ、紅蓮の炎が内側から大爆発を起こした。


「……ハッ。これでテメェの手札チップは、全額没収ゼロだぜ、バケモノ」


爆発の衝撃波に弾き飛ばされながら、俺は中東の夜空を落下していく。


見上げれば、原初の炎が覗いていた次元の裂け目は、ヒビ割れたガラスのように崩壊し、夜空の彼方へと完全に閉じて消え去ろうとしていた。


「統ッ!」


落下する俺の身体を、地上で待ち構えていたガルドが、その獣の巨腕でガシリと乱暴に受け止める。


「……ガハハハッ! やりやがったな、極東の総帥! 星の概念の顔面をブチ抜くなんて、痛快にも程があるぜ!」


ガルドの笑い声に重なるように、レオンが剣を下ろして口笛を吹き、セリアたちが安堵の涙をこぼして座り込んだ。


そして。


「……フッ。まったく、ムチャクチャな賭け方をする男だ」


冷気の影響で白く染まった息を吐きながら。


レヴィは、夜空から炎の気配が完全に消え去ったのを確認し、数百年来の怨念から解き放たれたように、深く、静かに目を閉じた。


「……助かったぜ、イカサマ師」


過酷な熱砂の底で。


極東の狂ったクランと万獣の王は、星の理すらも泥臭くねじ伏せ、ついに最大の絶望ゲームに完全勝利を収めたのだった。

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