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SEVEN~警視庁特務課~  作者: 桂木 京
第11話:絶望の夜

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司と灰島

「怪我人はそれぞれの課の事務所に運んで応急処置を! 動ける人は犯人逮捕に協力して!」


司の声が、白煙と呻き声の充満する廊下に響く。

しかし、司の足は思うように前へ進まない。

目の前に広がる光景——次々と倒れ伏す精鋭たちの姿は、彼女の想像を絶していた。


(たった4人で、天下の警視庁をここまで追い込むなんて……)


犯人たちが防犯カメラに映っていた位置。

そこは、警視庁のトップたちが集う特別執務エリアへの入口だった。


「犯人たちの狙いは、上層部の首脳陣……。それも、ただの対話で済ませるつもりはなさそうね」


司は唇を噛む。

こんな時、いつものメンバーがいれば。


(あの大柄な男が、報告にあった『アサシン』だとするなら、彼と互角に渡り合えるのは、あさみしかいないわ)


(あの『毒使い』の老人……専門的な知識で対抗できるのは、爆発物と化学物質に明るい辰川さん。彼なら太刀打ちできるかしら……)


(あの『ハッカー』の少年は、悠真くんに任せるしかない。彼がその才能を解放すれば、決して負けはしないはず)


「問題は、あの女子高生ね……」


映像で見た、舞うような格闘術。

その洗練された動きは、既存の武術の枠を超えていた。

あさみを彼女に当てれば、大男はどうする? 虎太郎を大男にぶつければどうなる?


いつものように「適材適所」を考えれば考えるほど、特務課の戦力の薄さが浮き彫りになっていく。


「……違う。違うわ、司」


司は自分を律するように、大きく首を振った。


「これはチェスやゲームじゃない。無理に一対一の状況を作る必要なんてない。泥臭くても、全員で囲んで、全員を逮捕する。それが警察の戦い方じゃないの……!」


敵の圧倒的な「個」の力に、無意識のうちに気圧されていた自分を恥じた。

特務課の強みは個の突出ではない。

バラバラな才能が噛み合った時の、組織としての爆発力なのだ。


(早く、みんな合流して……!)


その時だった。司の耳元の無線が、激しい電子音と共に声を拾った。


『司令、聞こえる!?』


悠真の声だ。

先ほどまでの軽薄さは消え、極限の集中状態にあることが伝わってくる。


『僕が向こうのハッカーを抑え込む。セキュリティをこれ以上クラッシュさせないように全力で抵抗するから、一度司令室に戻ってきて! このまま勢いで突っ込んでも無駄死にするだけだよ。外の状況も把握できた。僕が時間を稼いでいる間に、全員で立て直して作戦を練ろう!』


無線越しに聞こえる、猛烈なタイピング音。

司令室では、すでに悠真が「見えない戦場」で神の国のハッカーと火花を散らしていたのだ。


司は、廊下の先に消えた四人組の残影を睨み据えた後、踵を返した。


「分かったわ、悠真くん。3分で戻る。……絶対に、その防壁を抜かせないで!」


司令官が、唯一の武器である「知略」を研ぎ澄ますために走り出す。

特務課の反撃は、暗闇の司令室から始まろうとしていた。



確かに、このまま闇雲に敵へ向かっていったところで、いかに優秀な捜査官である司とはいえ分が悪すぎる。

相手の真の目的が見えない以上、今は仲間たちの合流を待ち、体制を整えることが最優先だと判断した。


司の最大の武器は、戦況の有利不利を瞬時に、かつ冷徹に理解できる「判断力」にある。

今の自分は、ただの「不利な状況」にあるのではない。

「このまま進めば確実に全滅する状況」に立たされているのだ。


「悠真くん、どのくらい持ちこたえられる?」


無線の向こうで、悠真の声がかつてないほど切迫していた。


「……正直、もし相手が僕の想定している通りの人物なら、そんなに長くはもたない。持って、あと2時間から3時間……それが限界かな」


「悠真くんでも、それだけしか……?」


あの気弱そうな小柄な青年――『神の国』のハッカー。

彼が、天才・悠真をここまで追い詰めるほどの怪物なのか。

司はこの警視庁が、組織の存亡をかけた重大な危機に晒されていることを改めて痛感した。


「志乃さん、外との通信は?」


「何度か試みていますが、電波を完全に遮断、あるいはジャミングされているようで全く繋がりません! そろそろ、稲取さんたちが『狙撃手』……高橋警視監を連れてこちらに到着する頃なのですが……」


稲取、古橋、そして北条たち。

特務課の主力、そして捜査一課の精鋭が皆、高橋逮捕という「餌」に釣り出された。

庁内に残っているのは、留守を守るわずかな警官ばかり。


「もしかして……高橋さんは、これが狙いだったの……?」


司の脳裏に、最悪のパズルが組み上がる。


「高橋さんが自らを囮としたなら、これほど容易に主力を外へ追い出せる材料はないわ。何人も殺害している大幹部、狙撃手。……逮捕すれば事態が大きく進展すると、誰もが信じて疑わなかったもの……」


司がようやく司令室の重い扉を潜る。


「……警視庁を手薄にするために、狙撃手ほどの男を差し出したってこと? でも、それじゃ組織にとっても大きな損失なんじゃ……」


悠真が必死にキーボードを叩き、ハッカーの猛攻を食い止めながら問いかける。


「そう、そこよ。なぜ大幹部を易々と囮にできたのか。組織を存続させるつもりなら、彼の高度な能力は絶対に必要。裏切りの抑止力として、そして『盟主』の思想を実現するための実行力としてね……」


司は、刻一刻と変化するモニターの情報と、これまでの『神の国』の行動ログを脳内で繋ぎ合わせた。

そして、ひとつの恐ろしい結論を導き出す。


「……もしかして。この警視庁そのものに、奴らの『目的の最終到達点』があるっていうこと……?」


「……さすがは特務課司令。実に見事な解答だ」


司が答えを口にした瞬間だった。

司令室の自動ドアが音もなく開き、ゆっくりとした拍手と共に一人の男が入ってきた。


「あなたが……盟主……?」


司は、ゆっくりとその声の方へ視線(まなざし)を向けた。

赤い非常灯に照らされたその男の影は、司の記憶にある「誰か」と重なり、司令室の空気を一瞬で凍りつかせた。



「久しぶりだな、司……」


突如として司令室に現れた男。

その声が鼓膜を震わせた瞬間、司の思考はホワイトアウトした。

非常灯の赤い光に照らされて立つのは、仕立ての良い黒のスーツを完璧に着こなした長身の男。

やや長めの髪をオールバックにまとめ、清潔感を漂わせるその佇まいは、かつての彼そのものだった。


ただひとつ、左目を覆う黒い眼帯だけが、彼が潜り抜けてきた地獄を物語っている。


「いっ……せい?」


灰島 一誠(はいじま いっせい)

8年前、湾岸ビルの爆破に巻き込まれ、生存は絶望的とされていた元捜査一課の刑事。

そして、司のすべてだった男。


「一誠……あなたが、どうして……?」


彼が『盟主』であるという戦慄よりも先に、生きていたという事実が司の胸を突き上げた。

しかし、同時に突きつけられた現実はあまりに過酷だ。

なぜ、誰よりも正義を愛したはずの彼が、ここまで深い闇に墜ちてしまったのか。


「その『どうして』はどちらの意味かな? 俺が生きていたことに対してか、それとも俺がなぜ『神の国』を率いているのか、という意味か」


「……生きていてくれたことは、素直に嬉しい。でも、それならどうして『こちら側』に戻ってきてくれなかったの? あなたは、誰よりも正義を守るために刑事になったはずよ……!」


再会の喜びで、今すぐにでも彼の胸に飛び込みたかった。

生きていてくれた、それだけで世界は輝きを取り戻すはずだった。

なのに、彼が歩んできた8年の軌跡には、あまりに多くの血が流れすぎている。


「多くの人が死んだわ。私たちの同僚も、仲間の大切な人も……。何の罪もない、毎日を懸命に生きていただけの人たちの命を、なぜ無慈悲に奪う必要があったのよ!」


無差別殺人の恐怖、そして虎太郎の婚約者・奈美の死。

目の前の男がその元凶であるという事実が、司の喜びを鋭利な刃で削り取っていく。


「司、俺は知ってしまったんだ。この警察の……腐りきった組織の真の姿を。だからこそ、俺が変えなければならない。この機構を一度解体し、本当の正義を貫ける場所に生まれ変わらせる。それが俺の目的だ。そのためには、今のうちに『膿』を完全に消し去る必要があるんだ」


「それが、あの者たちを使い、この警視庁を戦場に変えた理由だというのね……」


「……そうだ」


司の手が、小刻みに震え始める。

容姿、声、立ち居振る舞い。そのすべてが、記憶の中の「灰島一誠」そのものだ。

スタイリッシュで、どこまでも凛としていた彼。

しかし、その芯にある『正義』だけが、修復不可能なほどに歪みきっていた。


「……変わってしまったのね。この8年の間に……」


司は、深い絶望と、愛する人を失った時以上の悲しみを瞳に湛え、かつての愛しい人を見つめた。



「8年前に……何があったの……?」


自分の身を挺してでも人を助けようとした、あの頃の灰島一誠。

彼が人の命を奪う側にまわってしまった事実は、司にとってあまりに鋭いナイフだった。

その理由を知らなければ、今の彼と向き合うことすらできない。


「8年前に、俺は絶望という言葉の真意を知った。ただ……それだけだ」


「どういう……こと?」


灰島は眼帯のない右目を細め、遠い記憶の深淵を覗き込むように言葉を紡いだ。


「俺の妹が、どんな目に遭ったか……昔、話したよな?」


「ええ。当時大学生の男に乱暴されて、それを苦に……」


「あぁ。その犯人の正体を、今回の事件で知ったか?」


「……小島警視正の、息子……」


北条は捜査の過程で、小島のリストの中で真っ先に狙われる可能性のある人物として、小島警視正の息子を挙げていた。


「もしかして、北条さんはあなたのことを……」


「あの人のことだ。きっと気づいたんだろうな。だから、小島の息子を仕留めることには失敗してしまった」


灰島は小さくため息を吐く。

それはスタイリッシュな彼の佇まいに、拭いきれない人間臭い影を落とした。


「しかし、だ。8年前に俺が直接小島の元へ乗り込めていれば、あいつも命を落とすことはなかったし、息子が命の危険にさらされることもなかった。俺は、妹の墓の前で、二人……小島とその息子に膝をついて謝ってほしかった。ただ、それだけで良かったんだ」


「どうして……そうしなかったの?」


8年前に生き残りながら、なぜ彼は小島のところへ行かなかったのか。

なぜ、警視庁に戻ってこなかったのか。

司の震える問いに、灰島は氷のような冷徹な笑みを浮かべた。


「俺が生き残ると都合が悪い――そんな連中が警視庁内にいたんだよ。俺は……あの日、警察の手によって消されたんだ」


「警察に、消される……?」


灰島の瞳に、冷たい怒りの炎が宿る。


「あの日、ビルの爆破のあと、警察と消防で懸命の捜索活動が行われた。司、お前も参加してくれたんだろう?」


「ええ。でも、あなたはどこにも見つからなかった……」


「そうさ。俺は捜索活動が正式に開始される前に、警察関係者によって『処理』されたからな」


「え……?」


「俺はあのビルの残骸の下敷きになっていた。瓦礫に引っかかり、かろうじて海への転落を免れていたんだ。意識が朦朧とする中で、誰かの足音が聞こえた。助けが来たと思ったよ。だが、俺を見つけたその男は……瓦礫をどかすと、動けない俺をそのまま海へと蹴り落としたんだ」


「どうして……仲間を、海に……?」


あまりに非情な告白に、司の呼吸が止まる。


「捜索に現れた刑事二人は、小島の息がかかった飼い犬だった。俺が生き残ると、息子の不祥事が明るみに出るかもしれない。そう危惧した小島は、混乱に乗じて俺を亡き者にし、永遠に口を封じる道を選んだんだよ……」


灰島の脳裏に、当時の冷たい海水の感覚と、瓦礫を蹴る革靴の音が鮮明に蘇る。

信じていた組織に背後から刺され、暗い海へと沈められたあの日。

彼の「正義」は、その時に海流に揉まれ、黒く塗りつぶされたのだ。



「酷い……」


「そんなヤツが、警察の上層部に居座っていたなんて……」


司と共に灰島の告白を耳にしていた志乃と悠真が、絶句したままモニターを見つめる。

8年前の英雄的殉職の裏に隠されていたのは、泥を啜るような裏切りと、組織による「暗殺」という戦慄の真実だった。


「幸運にも、俺は再び生き残った。だが、その事実を知られれば、奴らは何度でも俺を消しに来るだろう。だから、俺は行方不明のまま身を潜め、死人として生きる道を選んだ」


「私にさえ、教えてくれなかったのはどうして……」


「保身のために部下を殺そうとする男だ。万が一、お前の身に危険が及ぶことを考えれば……到底いえなかった」


灰島の言葉には、司を守りたいというかつての愛情が、痛々しいほどに残っていた。

小島という男は、疑念だけで人を消す。

たとえ灰島が司に何も話さなかったとしても、接触したという事実だけで、司は「処理」の対象になっていたはずだ。


「身を潜めている間、俺は小島の数々の悪事を知った。泣き寝入りを強いられている被害者は、俺の妹だけじゃなかった。何人も、何十人もだ……。『権力』に媚を売る小島は、権力者やその身内の不祥事を、巨大な組織の力で揉み消し続けてきた」


その暗闇を這う日々の中で、灰島はあの「リスト」の存在に行き当たった。


「同時に、小島の際限のない欲深さも知ったよ。本来なら隠蔽の事実は、証拠と共に消し去るのがセオリーだ。だが、小島は違った。将来、権力者を揺すり、自らの地位を確固たるものにするための『楯』として、詳細なリストを残した。献金額、被害者の住所、連絡先……すべてをな」


「……下衆ね。反吐が出るわ」


「そんな個人の私利私欲のために、俺は殺されかけ、8年もの間、影に怯えて生きてきた。一方で、当人たちは今この瞬間も、何食わぬ顔で幸せな人生を謳歌している……」


灰島が、ミシミシと音を立てて拳を握りしめる。


「ある時、頭の中で何かが千切れるような音が聞こえた。その時からだ、俺の中の何かが変わったのは。警察なんて、悪事を隠すための巨大な隠れ蓑に過ぎない。正義なんて、最初からどこにも存在しなかったんだと」


「それは……違うわ、一誠」


「違わないさ。だから、俺たちはこの腐り果てた警察に挑戦状を叩きつけた。お前たちに本当に正義が守れるのか? お前たちは、俺たちを『悪』と呼べる資格があるのか? ……とな」


絶望に打ちひしがれた男の心は、長い年月をかけて警察組織そのものへの、氷のように鋭い憎悪へと変貌していた。


「警視庁副総監・遠藤。その男を処刑したら、次は政権だ。腐った人間をこの世から一人残らず排除し、もう一度作り直させる。……真っ当な人間の手でな」


「でも! あなたのやり方は間違っているわ! 大勢の無関係な人を巻き込み、殺すことが復讐だなんて、私は認めない!」


司は必死に、かつての恋人の魂に届くよう叫んだ。

しかし、灰島の瞳は依然として、凪いだ海のように無機質な光を湛えたまま、一筋の揺らぎも見せなかった。



「さて、そろそろ行こうか。ここでのんびりしている間に、遠藤を逃がしたり、先に逮捕されてしまっては意味がない」


灰島は、言葉は尽くしたとばかりに冷徹に踵を返す。


「……行かせるわけにはいかないわ。これ以上、あなたに罪を重ねてほしくない。ここで、私が……!」


司が灰島の背中に向かい、震える手で拳銃を構える。

銃口の先には、かつて誰よりも愛し、そして今も生きていてくれたことを喜んでしまっている男の背中があった。


「……殺せるのか? お前に、俺が」


灰島は振り返りもせず、背中で問いかける。

その声には、司の迷いを見透かしたような、悲しいほどに優しい響きが含まれていた。


「……このまま行くと言うなら、そうなっても止める……!」


司の脳裏に、二人で過ごした穏やかな日々、共に正義を語り合った夜の記憶が奔流となって溢れ出す。


(もう、あの頃のようには戻れないのね……)


かつての恋人の命を、この手で奪わなければならないという極限の苦しみに、司の指先が小刻みに震えた。


「……その状態じゃ、無理だ。司、君に俺を止めることはできないよ」


灰島は静かに振り返ると、ポケットから小さな金属製のボールを二つ、取り出した。


「俺の仲間に、神経毒や薬物のエキスパートがいてね。これは彼から念のため預かってきたものだ。君たちに罪はないが……この密室でこれを使えば、君たちも無事では済まされない」


「……え!?」


「ちょっ……何する気だよ!」


志乃と悠真が、青ざめて椅子を蹴り上げる。


「やめて! 二人には手を出さないで! あなたと私の問題でしょう? 彼らは関係ないわ!」


必死に制止する司。

しかし、灰島の瞳に宿る冷たい光は揺らがない。


「俺と君個人との間には関係ないかもしれない。だが、これはもう個人の怨恨を超えた『神の国と警察との戦争』なんだよ。君たちが警察という組織に属している以上、これは避けられないことだ」


そう言い放つと、灰島はボールを持った腕を大きく振り上げた。


「志乃さん! 悠真くん! ガスマスクを!!」


「……もう、遅い」


二人がガスマスクに手を伸ばそうとしたその瞬間、二つのボールが床に叩きつけられ、凄まじい音と共に破裂した。


「うわぁっ!」


「……!!」


司令室は瞬く間に白い煙に包まれる。志乃と悠真は咄嗟に口を抑え、机の下へと身を隠した。司もまた、素早くその場から飛び退き、視界を遮る煙の中でガスマスクを掴み取る。


しかし。


「……え?」


司は、顔に当てようとしたガスマスクをゆっくりと下ろした。


「ただの……煙幕?」


立ち込める煙には、先ほどカメラ越しに見たような毒々しい色も、鼻を突くような刺激臭もなかった。

司は深い知識を総動員して状況を分析するが、答えはすぐに出る。


「これだけ煙を吸い込んでも何の症状も出ない。……ただの煙幕ね。やられた、逃げられたわ……!」


灰島は、司たちが防犯カメラを通じて「毒使いの老人」の存在を知っていることを逆手に取ったのだ。

ガスの恐怖をちらつかせて思考を縛り、本物の毒を使うことなく、鮮やかに司たちの目を眩ませて姿を消した。


「……そういうところは、昔から変わっていないのね」


煙が薄れていく中で、司は虚空を見つめ、苦く、そしてどこか懐かしさを感じるような独白を漏らした。

知略を尽くし、最小の犠牲で最大の効果を上げる。

それはかつて「相棒」として尊敬していた、灰島一誠の戦い方そのものだった。

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