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SEVEN~警視庁特務課~  作者: 桂木 京
第11話:絶望の夜

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侵入者

高橋逮捕の歓喜に沸く現場から、わずか数十分前。警視庁特務課司令室――。


司が下した「主力の投入」という判断は、戦術的には完璧なはずだった。

最も危険な駒である『狙撃手』を確実に仕留めるため、北条、虎太郎、あさみ、辰川という特務課の誇る精鋭4名を同時派遣する。

それは、これ以上の犠牲を出さないための、司令官としての執念が結実した「英断」であった。


実際、その「英断」によって、勾留中の犯人たちは死の恐怖から解放されていた。


「さすが特務課っスね。……これで、あたしたちも救われたっス」


独房のなかで、元幹部の桜川は自嘲気味に笑った。

「神の国」において、失敗は「消去」を意味する。

逮捕された者が組織の全容を漏らす前に、組織がその口を永遠に封じる。それが彼らの鉄の掟。


「あの組織にとって、末端も幹部もただの『道具』っスから……。だから、逮捕されるくらいなら死ぬ気で抵抗するか、道連れにするのが普通なんスよ」


命を懸けた契約。

その契約を履行し続けてきたのが「狙撃手」という男だったはずだ。


「さぁ、高橋さ……いえ、狙撃手がこちらに移送されてくるわ。取り調べの内容を各課とリアルタイムで共有して、『盟主』に繋がる糸口を一本残らず手繰り寄せましょう」


司が静かに、だが力強く命を下す。


「了解しました。では、回線をセキュア・モードに切り替えて……え?」


志乃の指先が、キーボードの上で止まった。


「志乃さん、どうしたの?」


「いえ……今、コンソールの画面に一瞬、ノイズが……」


「嘘でしょ~? ウチの回線をハッキングできる奴なんて、この世に五人もいないよ? もし乱れるとしたら、外因的な……あ。」


悠真の軽口が止まる。

数千枚のモニターに囲まれた司令室の空気が、一瞬で凍りついた。


「電波関係に、異常……?」


司が椅子から立ち上がり、メインモニターの隅に表示されている「重要防衛エリア」の防犯カメラ映像を注視する。


特務課のある地下フロアへと続く、唯一の隠し通路。

本来なら、特務課員と限られた上層部しか知らないはずのその場所に、その『影』は立っていた。


「あれは……」


司の瞳が大きく見開かれる。

ノイズ混じりの白黒映像の中で、その人影はカメラに向かってゆっくりと顔を上げた。


そこには、8年前に死んだはずの、あるいは今の警視庁では決して見かけるはずのない、「あるはずのない顔」が映し出されていた。


その人影が手をかざすと同時に、司令室の全モニターが、鮮血のような赤一色に染まり、巨大な『神の国』の紋章が浮かび上がる。


「……志乃、悠真! 直ちに全シャッターを閉鎖! 緊急コード『アポカリプス』発動よ!!」


司の叫びが響くよりも早く、警視庁全館に重厚な金属音が鳴り響いた。

それは勝利のファンファーレではなく、絶望という名の檻が閉じる音だった。

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