23 山の探索2
魔法も剣も弓も擦り傷くらいにしかなっていない飛竜。物理耐性魔法耐性があるというのはすごく厄介なのね。モナさんリーンさん二人の魔法士さんの攻撃魔法は決して威力が弱いわけじゃない。と言うか、あんなに魔力注いだら撃てる回数が減るでしょうって程に強力なのに、ほとんどはじかれてしまい、あまりダメージを与えられていないの。
そして、もう一つの魔力がどんどん稜線へと上がって来てる。魔力はこっちのほうが強いから、おそらく同じ飛竜に間違いなさそう。
もともと飛竜なんて十人のパーティーが五つも集まって、長時間かかってやっと倒せるような代物なの。高々七~八人で倒すなんて無理も良い所。しかも二匹になるって、どうやって逃げるかを考えないといけないのに、どう考えても逃げ道などなさそうだ。
あたしは地面に【架台】の魔法陣を描くの。図形を描くのにはまだ時間が掛かってしまうから、何とか時間稼ぎをして貰わないと。
ボウガンはあたし専用だからトレースさんに貸す事もできないし、自分で使うと魔法陣が描けない。
魔法を撃ちっぱなしの二人の様子が怪しくなって来た。多分魔力が枯渇寸前なんだろう、放つ度に足がふらつくみたい。一度下がって立て直さないといけないわ。そういや盾士さんはどこにいった?
探すとジェニアスさんはやや後ろでレティさんの傍にいて呆然と飛竜を見ているの。
「マスター、魔法士さん達、いちど下がってもらいます。ガードお願いできます?」
「・・無理だ、あんなやつの相手なんて・・」
おい、マスター、そりゃ無いでしょうが。
「体勢立て直さないと、ほんとにみんなやられてしまいます」
「・・・」
返事が無いよ。よほど飛竜のブレスが堪えたんだね。
「マスター、しっかりしてください。チームマスターなんでしょ」
「・・・」
ありゃ、ほんとに参ってるみたいだ。
「ジェニアス、あんたの股には、蚤のキンタ○すらぶら下がってないの?」
流石にむっとしたんだろうね
「それは言い過ぎだろう」
「あんたが皆を守らないで誰が守れるの、メンバーを引っ張って行くのがマスターの仕事じゃないの。今やらないで何時やるっていうの。メンバーがやられても良いって思ってるなら、今すぐ武器置いて一人で逃げれば良いじゃない」
「むう・・」
「お願いだから今だけお仕事して」
「わ、わかった・・」
何とか殻から抜け出てくれたマスターにモナさんとリーンさんの盾をお願いして、ハッチさんに背後へ回ってもらおう。
あたしは念話で伝えたわ。「ティーさん、剣のあれ、使って。注意引いて。」
「ハッチさん、ティーさんが注意引くから後ろに回って、短刀で・・」
「あ、ああ、判った」
ティーさんが剣に組み込んで有る魔法陣を起動したわ。刀身が熱せられてゆらゆらと陽炎が立ち始めてる。その剣を振りかぶって稜線に立っている飛竜へと切りつけるの。
物理耐性魔法耐性だって完全に無効になる訳じゃ無い。効果を十分の一から百分の一に低減させるだけ。つまり元々が十分な威力であればそれなりの傷を負わせられるという事。
切り付けられた飛竜の皮膚が浅く裂けて煙が出るの。高熱の刀身だから傷口が固化して血は出ないのよ。顔、首と傷が増えて行くわ。
ついにもう一匹が姿を現した。予想通りにさらに一回り大きな飛竜だ。こっちを見て「ぐるるる」とうなっている。奥さん或いは子供を傷つけられて怒っているんだろう。でも攻撃してきたのはそっちからなんですからね。
ティーさんが大剣で傷を負わせている間にハッチさんが背後へと回りこんだ。短剣を握り締めて飛び掛るタイミングを計っているみたい。
あたしは大急ぎで【架台】の上に固体空気の円盤を載せ、【加熱光】の魔法陣を描いた。時間が無いから魔法陣は一つだけ。こんな至近距離じゃ外れっこないでしょ。
宙に浮いている飛竜に魔法陣をむけて狙いを定めていると、その口が開いて行く。
まずい、ブレスが来る?
狙いは怪しいけれど魔法陣に魔力を込めて発射したわ。胴体の真ん中からは外れたけど左の翼の付け根辺りに当たり、片翼が動かなくなったみたい。体勢を保持できなくなってふらふらと落ちていくの。
大きな方の飛竜が落ちて行くのを稜線にいる小さなほうが目で追う、その隙にハッチさんが短剣を両手で握り締めながら尾の付け根辺りへ突き立てる。じゅっと音を立てて刺さる短剣、体重をかけて引き切って行くと飛竜はよほど痛いのか体を回すようにして避けようとするの。
もう一度魔法陣を書き直し、架台をまわしてティーさんが相手をしているもう一匹へ魔法陣を向けたの。
「離れて」とティーさんとハッチさんに向けて叫び、二人が射線から出たのを確かめると、飛膜も大分切り裂かれてぼろぼろになり始めているそいつに向けて目一杯魔力を注いで【加熱光】を発射。
光は飛竜の胴体を貫通したわ。
ぼふっ
飛竜の胴体の前後に開いた穴から煙が噴出し、飛竜は崩れ落ちるように動かなくなった。
輻射熱で溶け落ちてしまった固体空気の円盤をもう一度作り、再度魔法陣を描く。今度は念入りに二重に描いた。緑のほうを起動して、落ちた下から稜線のほうへと足でよじ登ろうとしている飛竜に照準を合わせて・・【加熱光】を発射。
外れるはずも無い、顔の真ん中から入った光は首の後ろから一度抜けて、再度背中から入り尾の付け根の下側から抜けた。
飛竜は力を失って山肌を転がり落ちていった。




