21 新たな魔法陣
なんだか、あっという間に学校の前期の講義が終わってしまったよ。その後は二ヶ月の長休み。二ヶ月も有るのよお休みが、長いよねぇ。
長休みに入ってもあたしはずっと図書館に篭りっきり。魔法陣がアレなものだから何とかなら無いかと調べているのよ。
図書館にあるいろんな書物を見ているんだけど、数字は例のローマ数字みたいな記号なんですよね。判り難いったらありゃしない。仕方ないからアラビア数字でも広めようかと長休みの自由論文に纏めてみたのね。ゼロという概念が難解なんだけど、ほら脳内百科事典からの丸写しでなんとか。計算はとりあえず五桁位までの足し算引き算くらいに留めて置こう。掛け算割り算まで行っちゃうときっと読んだ講師の頭から煙が出ちゃいそうだもの。
まあ、それは休み開けに提出するから良いとして、問題は魔法陣の方なのよね。
何百冊もある魔法陣の文献を全部読んで、魔法陣を全部記憶したのよ。その魔法陣を頭の中で重ねてパターンを探し、分類して行くの。思ったよりしんどいよこれって。書物に書く段階で図形が歪んでいたり、抜けていたりしてるし。そのまま同じに魔法陣を描いても起動しないのがたくさん有るんだもの。
それでもいくつかのパターンを探り出せたの。たとえば火球という魔法陣は、魔力を集める、空中の水分を分解して酸素と水素に分解する、炭酸ガスを分解して炭素と酸素に分解する、水素と炭素から可燃性物質を合成する、酸素と混合して点火する、風で包んで投げつける。そんな図形の組み合わせのようなのね。
学校の図書館だけでは足りずに魔法士連盟の図書館でも調べまくったものだから、長いはずのお休みも殆ど調査で終わりそうなくらい。でも、その甲斐があっていくつか有望そうなパターンが見つかったの。
お試しにまた禿げ山へ来ています。地面に魔法陣を描いて起動するよ、まずは架台の魔法陣ね。架台は水平方向の回転と垂直方向の回転が可能な様にしてあるから、その上の魔法陣を回転させる事で狙いを定められるのね。
架台をベースとして横方向に大きめの固体空気の円盤を作り、空気を低温化させて出来る固体空気の大き目の弾丸を発射する魔法陣を描くの。さらにもう一枚小さめの円盤を重ねて、共振光の魔法陣を描くと完成なのよ。
架台の上の魔法陣を回転させて【共振光】を起動すると緑の細い光が伸びて行くの。物理的に弾が飛ぶという事は、飛んでいる時間によって弾はわずか下に着弾するのね。だから光の当たるところがやや下側になるように共振光の魔法陣の角度を少し変えないといけないけれど、弾丸の速度が十分に速ければ補正さえすれば当たる確立はかなり高いはず。
厳密には気温とか湿度とか風とかも影響するらしいけどね。最もこんな魔法陣の使い方は誰もしたことが無いはずだから、本当にそうかどうかは判らないんだけど。
空中で羽ばたいて留まっているグリフォンに緑の光が当たるように架台を回して狙いをつけて・・・固体空気の弾丸を発射。【凍弾】とでも名づけましょうか。三百メートルくらいの距離、発射から一秒も掛からずにライオンの胴体へと命中したわ。
グリフォンは弾丸が当たった場所からじわじわと凍り付いて行き、ゆらゆらと地面に落ちてくるの。
どさっ。地面に激突したけど息絶えていないグリフォン、まだぴくぴくしているのよ。【凍弾】魔法陣の魔石を吸収して消し、円盤をもう一枚重ねて、新しい魔法陣を描いたわ。同じ共振光だけど、波長を倍に長くしてね。
もう一度架台を回して緑の光が落ちたグリフォンの頭に当たる様に狙いを付けるの。ちようど目と目の間に緑の光が照射された時、もう一つの共振光を起動したのよ。
ぶわっ・・魔法陣から熱いものが放出されたの、光は見えないんだけど輻射熱で周りの空気が膨張して風が起きるほどにね。
グリフォンの頭に穴が開き、蒸気化した頭部内の水分がその穴や耳、目などから煙の様に。そして内部が燃えて火が噴きだして煙になって行くの。
そう、波長が倍になると赤外線になるから、目には見えないのだけど照射されたところが強烈に加熱されるの。名づけて【加熱光】とでもしましょう。かなりの高熱になった様で骨すら溶けて穴になってしまったのね。
思ったより威力が高いのに驚いたのよ。まさか頭が吹っ飛ぶとは思わなかった。共振光の魔法陣はかなり昔の古書に説明もエルフ語で短い表題が着いているだけの魔法陣部品解説のようなものに出ていたの。他にも載っていたんだけど、それはまだ調査中なのね。
その後も魔法陣を調べてはテストをしての繰り返し。あまりにも威力がありすぎて、これは使っちゃ駄目だわと封印したものもいくつか有ったのよ。山の形が変わるとかってやっぱり不味いじゃないですか。
見つけた風の魔法陣を使って宙に浮き上がる事も出来たの。これを靴の底に仕込んだら便利かもね。ただコントロールがむつかしそうなのよ。人間が立っていられるのって、無意識にバランスを取っているじゃない? 魔法陣の方向と強さは頭で考えないといけないからね。
宙に浮く時の注意点。特に地面に人が居る気はスカートはやめてズボンにしましょう。




