18 借用品
短刀で狩りをする人、そういえば居たわ。思い当たったのは、例の地竜を倒した時のコアのメンバーだったのね。
お願いするんだからお土産ぐらい持って行こうかと、甘い果物を買い込んでチームハウスを訪問したのよね。
「こんにちはー。マスターいらっしゃいますかー」
「きゃー、マリーちゃんだぁ、おっはよぉー」
「おはようございます。これ、差し入れです」
「わぁ、やったぁ。おいしそー」
チューラさんが出迎えてくれたよ。その後ろではなにやらおじさんたちが集まってる。
「・・・・・・」
「そりゃお前、ベッドの中でだな」
「いやいや、ベッドの中より家の外のほうが」
「外かよ」
「いやぁ、どきどきするのがまたなんていうか」
「お前の変態度も磨きが掛かってきたなぁ」
「あんたにゃ言われたくない」
タバサさんとハッチさんがしょうもない口論。いや、そこでニヤニヤしながら見ているマッツさんも同類じゃないかと思いますが。
「ほんとに、うちの男どもは暇さえあればエロ話ばっか、よくネタが尽きないよねぇ」そう呟くニーゼさんの顔は、半ば諦めたようなのね。
依頼を受けてない時のこの人達って、他にする事無いのかよーって言いたくなるくらい酷いみたいで。昼間からグデーっとしてるし、酒飲んでるしね。まあ、依頼に命を掛ける事が多いから、そうでない時はこんな物なのかも知れないねえ。
「マスターとかサブマスターは・・居ない様ですね」
多分マスターの席であろう壁際の机は空っぽだったのよね。
「せっかくマリーさんが遊びに来てくれたのに、ギルドに呼ばれて出かけてるのよ。多分もう少ししたら戻ると思うんだけど。そうそう、地竜の件有難うね。」
「いえいえ、パーティーでしたから当然の事です」
金貨八十枚はおそらく数か月分の収入に当たるだろうし、ドラゴンスレイヤーなんて称号まで貰えてチームも箔が付いただろうね。
お茶をご馳走になっていたら、マスターが戻って来たの。
「おお、マリーさんじゃないか。いやいや、その節はすっかり世話になったなぁ」
「いえ、こちらこそ倒れてしまってご迷惑をおかけしまして」
「遊びに来てくれたんだね。今日は依頼も無くて、みんな暇を持て余してるんだ。多少行儀が悪いが、勘弁してやって欲しい」
「そうみたいですね。ところで、ちょっとお願いがありまして」
「ほう、何かな?」
「ちょっと内密に」
「ならばこっちで聞こうか」
隣の会議する為みたいな部屋へと案内されたの。
「他言無用でお願いできますか?」
「ん? ああ、わかった。マリーさんは秘密が多いからなぁ」
くすりと笑いながら同意するジェニアスさん。
「実は珍しいものを手に入れたんですけど、あたしじゃ使いこなせ無くて、コアに確か使える人が居たと思ったのですが」
鞄から短刀を取り出してテーブルに載せたの。あの後ノームさんが気を利かせて、刃も鋭く研ぎ直し、鞘と柄に古臭い模様を彫り、刀身も古ぼけた感じにつや消しにしたりと、見た目もそれらしくなっているのね。
「ほう、短刀か。ハッチが使えるはずだな。呼んでも良いかな」
「ええ、構いません」
「ハッチ、ちょっと来てくれるか」
ジェニアスさんがドアを少し開けて広間へと声を掛けると直ぐにハッチさんがやって来たのね。
「お呼びですか-、愛するマスター」
「俺は、愛しとらん。」
「冷てえなあ-」
「そんな事より、マリーさんの依頼だ。この短刀を使ってみて欲しいそうだ」
テーブルの上の短刀を少し眺めていたけれど、手に取って鞘から抜き、刃を調べ始めるハッチさん。急にまじめな顔になり、さっきまでのへらへらしたそぶりはどこにも無い。真剣そのものだ。まあ、自分が使う武器なのだから念入りなチェックは必須なんですよね。
「古臭い安物に見るが、刃はまともそうだ。マリーさんの依頼とあらば使って見ましょ。ただ、使うと刃こぼれとかするかもしれないが、その辺は手入れして返さなきゃ駄目なのかな」
「いえ、使ったきりで構いません。それとその短刀には言い伝えがありまして、力を込めて握ると…」
「うおぅっ」柄をぎゅっと握ったハッチさんが熱くなる刀身に慌てて声をあげたよ。
「こ、こいつは、なんてこった、まさか魔剣か?」
「他言無用ってのは、そう言う意味か」
心なしかマスターの声も緊張しているように聞こえたの。
「ええ、お願いしますね」
「という事だ。酔って吹聴したり、寝物語に喋るんじゃないぞ」
「わ、わかってますよ。しかしこいつは・・・」
あちこちと角度を変えて短刀を眺めるハッチさん。どうぞ心置きなく観察してくださいな。
こうして短刀のテストをハッチさんに押し付けたあたし。結果を聞くのが楽しみなのよね。




