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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第二章
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17 魔短刀


 学校の授業に魔道具講座というのがあるの。いろんな魔道具を知ろう、使おう、造ろうって言う授業なのね。家のキッチンに有る魔石コンロもそうだし、お風呂のお湯を沸かす魔石釜も魔道具の一つで、非常に親しみやすい講座なのよ。ただ、途中から難度がぐんと跳ね上がっちゃうのが欠点って噂なんだよね。


 「さて、魔道具について色々と説明をして来た訳だが、世の中にはこういう物もあるという事を知って貰う目的でこれを資料庫から持ち出してきた。見ての通り短剣だが、昔勇者と言われる人物がこれを使っていたと言われている。なんでも、火の魔法が組み込まれていて、鉄すらも炎で切り裂いたと言う伝説の代物だ。自分の手に取って見る様に」

 講師がそう説明して古ぼけた鞘に収まっている短剣を端の学生に手渡した。


 「誰が作ったのか、どうやって作ったのかは失われていて、まあ伝説と言うのは大抵そんなものが多いんだがな。ただ、これはその威力だけは間違いなかったらしい。多くの人たちが修復にチャレンジしたんだが、結局成功した職人は居なかった。という事で資料庫で眠っている訳だ」

 次々と短剣が学生達の間を渡されて、あたしの所へと回ってきたの。鞘から抜くと古いものにしては綺麗な刀身、柄と鞘も新しそうに見えるのよね。これが何百年も昔の代物なのかしら。


 【認識】をかけて見たよ。「短剣、破損魔法陣刻印有、遺物」

 紛い物じゃない、本物だよ、ただ壊れているだけで。魔法陣が破損していちゃ機能しないよねぇ。

 鞘にも【認識】をかけて見たら「短剣鞘」ですって。ええと、遺物って出ないのはなぜ? 鞘は遺物じゃないの? ひょっとして修復したときに作り直したとか。


 両刃の短剣には、刀身に細い線の様な模様が刻んであるの。刃のすぐ傍にも線が通ってるのよ。線を重点として【認識】「刻印、魔石充填、火の魔法陣」

 おお、これだよ、図形が細かすぎて線にしか見えないんだね。でも、どうやって魔法を起動させるんだろう。こんな微量の魔石じゃ威力も知れてるし。柄も修復したときに作り直してる?とすると分解してみるしかないかも。


 とりあえずあたしは短剣を鞘に納めて次の人に渡したの。

 「先生、あれってお借りする事って出来ますか?もう少しゆっくり見てみたいんですけど」

 「ん?ああ、構わんよ。もう直ぐ前期休みだから、後期の始まりに返却してくれれば良し。」

 「ありがとうございます」

 「その代わりと言っちゃなんだが、調べた結果をレポートにして提出するように。さて、今日の授業はおしまいにしようか。」


 借りる事が出来たのは良いけど、レポートのおまけ付きか、とんだ羽目になっちゃったなぁ。と思いつつも短剣を鞄へと仕舞い込んだの。帰宅途中に武器屋へ寄って、木の柄を外して貰うと案の定細い線が柄の中に入っていた部分にも刻まれていたのよ。やはり思ったとおりだった。


 安物の鉄の短剣を一本購入して、家へと帰ったの。構造、仕組みさえ判れば、作る事も出来るはず。まして、あたしにはノームさんも付いているのだもの。

 短剣の他に必要なもの、そう魔力を伝えやすいというミスリル銀ね。素材屋で少しを購入したわ。


 自宅へと戻り、分解した短剣をもう一度眺めてみると、刀身の刃に近いところの線が柄の部分の両サイドにあり、ところどころ線が途切れている部分もある。おそらく研ぎなおした際に消えてしまったのだろう。一筆書きのようになっていないと、魔力が流れないから魔法陣は発現しないんじゃ?



 購入した来た短剣に同じように火の魔法陣を描いてみよう。


 【加熱】【冷凍】で分子を操作するのは慣れているんだけど、金属も同じように出来るのかしら。一部だけを取り除いて線を描くのよね、魔力を小さく凝縮させて何とか点を刻むのに成功したの。やったぜーい。

 後は点を繋げて線を描くようにして・・・少しずつ刀身の鉄を削り取って細い線を刻んで行き、魔法陣を描くの。全体に刻むのは後回し、一つだけあれば魔法陣が起動するかどうかの判定には十分なのよ。出来た線の溝にミスリル銀の粉を塗りこめるように擦り込んで、魔力で定着させたのね。


 裸の柄を両手で挟むようにして、魔力を流してみると・・



 あぢーっ。木の柄が無いからそのまま熱が伝わってしまって、思わず短刀を落としちゃったよ。


 でも、熱くなったって事は・・・・・・魔法陣が起動して火の魔法が発現したって事じゃないですか。やっぱり想像した理論は正しかったのね。


 一つだけ刻印した魔法陣を一度削り取って、肉眼では見えないほど細かな図形として刃のそばへと刻みつけよう。

 いや、少しやったら飽きてノームさんに後を頼んだんだけどね、もう眠くなったし。翌朝までにやって置くって言ってくれたし。


 翌朝、柄の木を半分削って、ドリさんの精樹材を組み合わせたの。中に魔石を組み込んで、ぎゅっと力を入れて握ったときだけ魔法回路が閉じるようにしたのよ。さあ、これで伝説の武器の再現が出来たのかしら?


 次のお休みの日に、ティーさんとまた禿げ山へと行ったんけど、考えてみると獲物がいないのよねここ。木も生えてないし、短刀を試してみる事もできないわ。仕方なく少し下へと降りて、樹に短刀で切りつけると、見事に樹は切断されたの。切断面は焦げてるし、成功よね。



 残念ながら短刀では自分で狩りをするのは無理なので、誰かを人身御供にしないとね。そのうち誰かに押し付けてやろうっと。



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