11 プランナー
言葉を覚えたのでお城へと採寸・打ち合わせに向かったのよ。仕立て屋さんが妙に緊張して強張っていたけど、普通ならそんなものかもしれないよね。
「今日は採寸と細かい打ち合わせにお邪魔しました」
すらすらとテルエラ語でご挨拶すると、みんな吃驚していたよ。まあ、まだ2週間と少ししか経ってないからね。
「きちんとお話ができるように大急ぎで言葉を覚えました」
「すごいのね、前回は共通語の片言だったのに」
「家庭教師にテルエラ語漬けにされましたから」
「あらあら、それは、大変だったわね」
仕立て屋さんが王女様を採寸している間に、王妃様から結婚式のことを聞きだしたのよ。教会での挙式、貴族と要人を招いての舞踏会と食事会なんだそうな。うーん、なんかなあ、元の世界のやり方を提案してみようかしら。慣習に合わないからそんなの無理ってなったら、それはそれで仕方ないし。
「あの、ドレスが常識外れの物なので、思い切って慣習から外れた結婚式にしてみませんか?」
「慣習から外れた結婚式?どういう事?」
王妃様、興味を持ってくれたみたい。あたしは式から披露宴までをひとつずつ説明して行ったの。この国での一般的な形ではなかったけど、最後まできちんと聞いてくれたのね。
「面白いわ、それでやってみましょうか」
あれ、王妃さま、大丈夫なんですか、そんな即決してしまって。
「まずは本人達の意向を聞かないとね、あなたアーサーさんを呼んで来て下さらない?それと国王に時間を作ってこっちに来てちょうだいと伝えてね」
控えていた侍女さんに指示を出す王妃様。
少しすると侍女さんが戻ってきた。
「アーサー様はまもなくお見えになります。国王様は今は手が放せないと」
「あの人ったら、可愛い娘の為にいっときの時間も割けないのね」
「お父様はお仕事が忙しいから仕方ないわよ」
「いいえ、仕事なんてほっちゃっておきゃいいのに、娘の一生の事なのよ・・・」
扉がコンコンとノックされ、若い男の声が聞こえた。
「アーサーです。お呼びになったと聞きましたが、いま入っても宜しいでしょうか」
「入って頂戴」
王妃様の言葉に扉が開かれて、姿を表したのが婚約者のアーサーさん。いやあ、イケメンで爽やか系じゃないですか。
「失礼します。何か有りましたか?」
言葉も態度も丁寧ですごい好感度が高いわ。清楚で可愛らしい王女様とお似合いのカップルだこと。
「いまね、マリーさんから面白い提案があったのよ」
王妃様は、慣習から外れた結婚式、披露宴をあたしが説明したとおりにアーサーさんに繰り返したの。いや、すごい記憶力だわ王妃様って。
「こういうのは本人達の気持ちが一番大事だからね。侍従長がなんと言おうが二人がやりたい様にやって見ましょうよ。」
「結婚式は女の人の晴れの場ですから、私はエリーが望むやり方にしたいと思います」
王女様、エレノアって名前なのよね。ちなみに王妃様はキャサリンって名前だよ。まあ、あたしは王妃様王女様としか呼ばないけどね。
新郎新婦の同意のもと、方向はあらぬほうへと進んでいったのよ。まあ、あたしが言い出したんだけどね。で、困った事にそんな式の挙げ方って、あたししか知らないのよ。安易に話を持ち出したのを後悔したけど後の祭りよね。いつの間にかコンサルタント兼実行責任者にされてしまうのを止められる筈もなかったの。
シルクのドレスで儲けて、あとは知らん振りのはずだったのに。 どうしてこんな羽目になったのやら。いや、変な事を提案してしまったから自業自得なんだけどね。
結婚式まで半年。まだ半年有るって楽観的になっちゃ駄目よ、もう半年しかないんだから。その間に式と披露宴の細かい手はずをぜーんぶプランニングしなくてはならないのよ。想像しただけで冷や汗が出そうだけど、頭を抱えているだけでは物事は進まないの。まずはこんな風にしましょうかってプラン、シナリオを作って二人に見せる事にしたわ。
頭から湯気が上がりそうなほど頑張った一週間。何とかプランを纏めた企画書みたいなのを作り上げて、またお城へと。
前回と同じ場所へと案内されたのね。王妃様と王女様の前で紙を広げて説明しようとしていたらいきなり扉が開いて、王様が中へ入ってきたわ。
「あ、あの、マリーと申します。ひょんな事から結婚式のプラ・・」
「それは聞いて居る。わしは忙しいんだ、さっさとその企画書とやらを見せんか」
ぱらぱらとページを捲っていく王様。ぴたりと手が止まったの。
「外でやるのか?警備は?宴は小規模か、国としては困るな。国外からも親善大使が大勢来るだろう。やはり大規模な舞踏会を開いてはどうだ。それ以外は二人に任せる。ではよろしく」
返事をするまもなく居なくなる王様。よほど忙しいんだろうなあ。
あっけに取られたけど、その後は王妃様と王女様に説明して内諾は頂いたの。舞踏会は・・もう一度考え直さないとだめだよねぇ。




