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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第二章
29/44

10 売込み

 

 ドレスの売込みにお城へ向かいましたよ。王様に面会とかってやっちゃうと、手続きとか時間とか大変そうなのでそれは最初から考えてないの。ターゲットは王女様+その母親の王妃様ですから。ドレスなんだから女性じゃ無いと価値が判らないでしょうが。


 結婚式用のドレスの売込みに来ましたと受付の人に言うと、なにやら奥のほうへ言ってごにょごにょ相談し始めたの。

 予定を聞いて来るからちょっと待て。待たされる事三十分くらいかな、明日の午後なら王女様が会えるとの返答に、やったぁ、と顔が緩んでしまったの。


 翌日、市場の屋台でサンドイッチを食べてから再度お城へ。昨日お願いした者ですけどと受付で言うと、一応武器とか持っていないかチェックされたけど、持っているのはサンプルの生地の入った鞄と杖だけ。杖を警備の人に渡して、お城の奥へと案内されたのよ。


 立派な扉の前で警備さんが、面会予定のお客様です、とか言って扉を開けてくれたわ。中に入ると、王女様らしき人、王妃様らしき人、侍女の様な人が居たの。もちろん護衛の男の人も二人程傍に居たわ。案内してくれた警備の人は扉の傍で警戒しているのね。

 椅子に腰掛けている女性二人のほうへお辞儀をしてゆっくりと歩いたわ。傍まで行くともう一度お辞儀をして話し掛けたのね。


 「初めて、会う。今日、貴重、時間、割く、ありがとう。結婚、する、聞いた、役に立つ、出来る、思う。これ、素材、ドレス、作る、どうか、思う、尋ねて、来た」

 いや、共通語の片言だからね、意味が通じていれば良いんだけど。 

 一番細い糸で織った生地、ハンカチくらいの大きさの物を見本として差し出したよ。無染色の白と淡い水色と淡いピンクの三枚ね。


 「これは・・」生地を手に取った王妃様、その手触りに驚いた顔になる。

 「多分、どこにも、無い、思う。もともと、アルケニーシルク、刃物、通らない」いきなり爆弾を投下しました。

 「アルケニーシルクですって?そんな、だって色が着いてるじゃない。アルケニーシルクの染色なんて誰がやっても無理だったのよ。それにこの柔らかくてすべすべの手触り。」

 「どうやったか、教える、出来ない」

 「それはそうでしょうね。これ、ドレス分あるのかしら」

 「全部、一着、分、用意、出来る」


 さらに追い討ち、あたしは描くのに三日掛かったドレスのデザイン画を取り出して見せた。記憶の中に結構あったのよドレスの写真。花嫁さんにあこがれていた時期もあるからねえ。

 この世界のウエディングドレスがどんなのかお店で聞いて見たけど、そんなのどうでも良くって、清楚で綺麗な、女の子が憧れる様なドレスがあれば良いじゃない。


 王妃様と王女様はデザイン画に夢中になっちゃった。

 いくつか説明したのよ。この後ろが長いドレスは白が良いはず、こっちのは水色、これとこれはピンクだと可愛いはず。

 デザイン画とサンプルの生地を見比べるようにしながら多分頭の中で仕上がりを、実際に着た所を想像したんだろう、二人の言葉が途絶えたけど、少しすると王妃様が口を開いた。


 「あなた、これおいくらで用意して頂けるのかしら。色はこれけだけなの?」

 すっかり乗り気な王妃様。

 「王女様、お祝い、事、金貨、枚数、あなた、決める、良い。色、ついた、アルケニーシルク、手触り、世界、一着、だけ、貴重品」

 「母上、私これを着たいわ」

 デザイン画の中で気に入ったのが有ったのだろう、王女様はきらきらした目で王妃様を見つめていた。 

 「一着金貨三百枚、それ以上は王に相談しないと出せないわ、三色全部作って貰えるかしら」

 おぅふ、三着で900枚じゃないですか。もう一声来ないかしらね。いや、高望みはよそう。

 「判る、良い。用意、する。そのほか、一つ、願い、ある」

 「何かしら、王で無いと決めれないような事なら難しいと思うけれど」

 「学校、入りたい、言葉、魔法、勉強、したい」

 「学校って、魔法学校の事?それ位なら問題は無いわ」

 「旅、してる、この国、言葉、良く知らない。覚えたい」

 「なるほどね、旅をしているエルフさん、って所なのかしら。良いわよ、手配してあげる。あなた、お名前はなんと言うの」

 おお、名乗るのを忘れていたよ

 「マリー・フリーマン。自由人、従属、嫌う」

 「マリーさん、どこの国の人でも無いって事なのね。お金は出来上がってからで良いの?」

 なかなか王妃様はしっかりしてますね。前金でいくらか欲しいところだけどねぇ、ここは余裕がある様に見せておこうか。

 「出来る、お金、全部、後、良い」


 やったね、契約成立だよ。三着で金貨九百枚だってさ、一着百枚くらいかと思っていたからほくほくです。その場を辞して、早速仕立て屋さんへ直行。デザイン画から選んだやつを渡してこれを作ってくださいなと依頼。仕立賃は三着で金貨一枚、それでも多いほうらしい。採寸とかしないといけないので、後日一緒に登城するという約束をしましたよ。

 機織のほうは織り機の改造費用が掛かったので金貨2枚。あたしの原価は染色剤の銀貨2枚。いやいやぼろ儲けだよぉ。


 金貨ばかり集めてる様にしか見えないだろうけどね、何か知識・技術を広めようとするとプロトタイプというか試作品とか作らないといけないから、豊富な資金が無いと困るのよ。だから今は準備期間ってことね。



 ドレスの注文は貰ったけれど、細かい打ち合わせをするにも言葉がアレではあまりに心もとない。思い切って家庭教師を雇う事にしたよ。冒険者ギルドに募集依頼を出したの。

 求む-テルエラ語ラゼル語通訳、仕事内容-テルエラ語家庭教師、報酬-銀貨一枚/日、期間-二週間、場所-学校傍一般住宅内。


 翌日には応募者が来たわ、コアって中堅冒険者チームの女性二十二才チューラさん、攻撃型魔法使いだそうな。いいなぁ、攻撃魔法が使えるんだ、少しうらやましげに顔を見たのよ。


 まあ、それは置いておいて。

 「教える相手は私です。ラゼル語は話せるの、エルフ語と共通語は片言、テルエラ語は全く駄目なので、普通に話せるようになりたい。もし二週間で終わらなければ延長も考えています。学校に通いたいのだけど、言葉が判らないのでは授業について行けそうに有りませんし」

 もちろんこの会話はラゼル語です。

 「二週間?うーん、ちょっと難しいかもしれない。私も怪我をしてパーティに参加出来ないだけだから、二週間経ったら復帰したいと思っているの、どうします?」

 「であれば、二週間だけお願いします」


 こうしてチューラさんからテルエラ語を習う事になった私。一日中テルエラ語とラゼル語の会話で頭の中が一杯だよー。テルラエ語の脳内辞書がどんどん充実していくのよ。

 なお、チューラさんは料理もプロ並みだったの。お昼にティーさんの作った昼食を振舞ったら、私作りましょうかと言ってくれてね。その時から食事の支度をお願いする事になったの。夕食も自分の食費が浮くからって作ってくれてるのよ、感謝感謝。


 チューラさんが思っていたよりは覚えが早いみたいで、というより異常に覚えが早くて、二週間で完璧になりそうなんだって。あの共通語の片言は自分でも意味がきちんと通じているか不安だったからほっとしたのよね。

 


 チューラさんからはいろんな話を聞いたのよ。所属しているコアって言うチームは30名くらいのメンバーが居るそうなの。(タンカー)役、近距離格闘役、遠距離攻撃役、回復(ヒーラー)役と役割に応じて特化した人たちが内容に合わせて十人くらいでパーティを組んで依頼を受けるんだって。あたしも冒険者登録していて、Dランクで回復が使えると言うと、こんなちっちゃい子なのにDランクなんてすごいのねぇと吃驚していたよ。一度パーティーに参加してみないと誘われたので、時間のある時にお邪魔してみる事にしたよ。ユニークなメンバーばかりのようで、顔を合わせるのが楽しみになったわ。


 予定通りの二週間であたしのテルエラ語の会話は完了しました。チューラさんはすこし残念そうに、なんだかこのままずっとここに居たほうが楽なような気がしてきたわとぼやいていた。まあ、命の危険はないし、収入も大当たりとかはないけどそこそこだしね。

 じゃあ居ても良いのよと冗談半分に言ってみたけど、いや、これ以上こんな温い所に居たら、勘が鈍っちゃうからいいわ、と自分を叱咤するように。


 まあ、こちらも半分は社交辞令ですからね。


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