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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第二章
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12 コアのパーティ

 結婚式の準備であわただしい毎日が過ぎて行ったのよ。なんだか人との折衝って精神的に疲れちゃう。たまに息抜きにと一人で冒険者ギルドへお散歩がてら顔を出したら、家庭教師をしてくれたチューラさんに遭ったの。

 「あら、マリーちゃんお久しぶりぃ」

 「あ、こんにちは」

 「狩に出るんだけど、一緒に行かない?」

 「ああ、そんな話も有りましたねえ」

 「マスターも一緒だから紹介するよ」

 「ええと、今はちょっと・・」

 「いいから、いいから」

 なんか強引に連れて行かれてしまった。


 「マスター、例の子、ギルドで見つけたから連れて来たよー」

 「おお、初めまして、チームマスターのジェニアスです。盾士をやってます」

 大柄の筋骨逞しいって感じのマスターだったよ。岩トカゲを狩に行くところなんだそうな。で、一緒にどうかって話なのよね。どうしよう・・ティーさんと一緒って訳には行かないわよねぇ。まあ、最悪精霊さん達も呼べるし、単独行動も偶には良いのかも知れないけど。

 「あの、私みたいな素人に毛の生えただけの者がご一緒するなんてお邪魔なだけなんじゃ」

 「ああ、そんなのは気にしちゃ行かんですよ。誰しも最初は経験ないんだから。よし、同行するって事で。メリーメさん、追加で一名増える事になったのでサポートよろしく」

 「サブマスターのメリーメよ。回復職だから、頼ってくれて良いわ」

 「は、はい。あの、では、装備を取りに行ってきます」


 あたしは狩の準備の為に大急ぎで家へと戻ったの。ティーさんに話をすると、他のパーティーに参加してみるのは良い経験になるんじゃないかと賛成してくれたのね。

 狩用の正装、そうアルケニーシルクの服とローブを身に付け、精樹の杖を持ち、ボウガンと矢筒を腰の後ろへと括り付けたわ。肩から鞄を下げると準備完了よ。

 コアの人達のところへ戻ると馬車が三台止まっていたの。それで狩場まで移動するんだって、帰りは狩った獲物を乗せるつもりらしいけど、十人位の移動なら一台でも十分なんじゃ?どんだけ狩る予定なんだか。

 

 一泊の予定の狩りに出発。空荷に近い馬車は結構な速度で進んでいくの。半日ほどで目的の場所へと着いたらしく、みんな馬車から降りて徒歩で探索ね。ターゲットは岩トカゲ。ワニの様な形、外皮が岩のように硬くて剣は刺さりにくく、魔法攻撃もあまり効かないとか。どうやって戦うのかあたしは興味津々なのよ。


 道から外れた川の畔で発見した様で、居たぞ、という声が聞こえたわ。みんながばらばらと集まってきた。あたしもどのくらいの大きさなのかなと見てみると全長5メートルを超える大物じゃないですか。


 マスターが指示を出したわ。盾士二人は斜め前と斜め後ろから動きを抑え、弓士は隙を見て目を狙う。戦士、剣士は盾士の横から武器で攻撃、魔術士も盾士の隙間から魔法で攻撃、回復士は一番後ろで待機。あたしはさらに後ろで見学って感じ。


 岩トカゲがこちらに気づいたようで、太くて長い尻尾を左右に振って威嚇するのね。メンバーが配置について攻撃を始めた

 

 マスターとタバサさん、二人の盾士が頭と尾の両方を抑えるの。内側にクッションの張ってあるごつい盾を肩に当てて体重を掛ければ勢いよく振られる尾の衝撃も何とか逃がせる様なのねぇ。

 その脇でキースさん、ハッチさん、マッツさん等剣士戦士の人たちが剣で攻撃し、近接魔術士のヘクセさんは斜め後ろのほうから魔法を載せた蹴りとか入れてるね。ニーゼさん、チューラさん、二人の遠距離攻撃のできる魔術士さんは少し離れてファイアボールとか魔法で攻撃、弓手のトレースさんも離れて弓を射てるのね。サブマスターの回復士のメリーメさんと、同じ回復士のノンノさんは回復の準備をして待機ね。


 皮膚が岩のように硬い岩トカゲ、剣が当たってもガキッて跳ね返されるし、火系の魔法が当たってもあまり怯んだりしないみたい。少しずつ体力を削っていくしかないのかもね。


 あたしは見ているようにと言われていたので、少し離れてみんなを見ていたわ。


 いくらか岩トカゲの動きが鈍くなり始めた時、あたしは後ろの方向に魔力を感じたの。メンバーはみな岩トカゲへの攻撃で精一杯。回復士のメリーメさんノンノさんも、軽い傷を受けたメンバーへの回復で急がしそう。あたしは【探知】を使ったわ。距離百五十・・にしては魔力が大きすぎる。これ、まずいかも。いま攻撃している岩トカゲの数倍の魔力だよこれ。しかも少しずつ近づいて来るのよ。


 あたしは少し戻ってその方向を見たのよね。樹が邪魔になってコアのメンバーからは見えない方向よ。


 げっ、かなりまずい。


 そこに居たのは殆どティラノザウルスみたいな・・。小さな前足、大きな後ろ足で二足歩行、太い長い尾を水平に伸ばしてのそのそと歩いていたけど、あたしを見つけてかなりの速度で走り始めた。体長は15メートル以上ありそう。大きな顔の高さだけでもあたしの倍くらいも有り、剥き出した歯は異様に鋭いの。


 今コアのメンバーは全員で岩トカゲに攻撃しているのよ。なのにこんなのが後ろから現われたら・・向こうが片付くまで何とか足止めするしかないか。


 あたしはボウガンを背から取り出して、その場にうつ伏せに横になったわ。木の矢をセットして、魔力を込めて放つ。当たったけれど弾き返されるの。だめかぁ・・。次には鉄の短い矢をセットして多めに魔力を込めて放った。矢は小さな左前足の辺りに命中したけど貫通する訳でもなく、少しは出血したけれど・・走る勢いが弱くなるどころか、かえって速くなってしまう。痛みで怒ったのかもしれない。


 もう一度鉄の矢、今度は後ろ足を狙うけど弾かれてしまった。まじで、やばっ。


 あたしは立ち上がり杖を前へと突き出したわ。地竜のでかい顔が至近距離に、そしてあたしを齧るように口ががばっと広がる。一歩踏み込むと杖が口の一部に触れた、それを感じた瞬間に【風】魔法を使ったの。まるで叩かれたかのように顔が横にずれるけど、さほどのダメージを与えたようには見えないのね。用心させただけかもしれないわ。



 【風】魔法は杖を当てた衝撃を効果とするのではない。杖を中心とした一定空間内に有る物質の分子運動を方向をそろえることによって、一定方向に移動させるのが効果となるのだ。だから、対象物が大きければ大きいなりに効果が高い。でも、有効範囲には制限がある。杖を持つ手が範囲に入っていてはいけないのだ。



 【風】魔法でそれなりの痛みは与えたようだ。警戒しながらも体を回すようにして長い太い尾が地面すれすれを飛ぶように迫ってくる。あたしは杖を差し出して【風】魔法で受け止めたの。多分大きな岩にでも当たったような気がしたろうなぁ。反動で少し戻る尾を追いかけてもう一度【風】。尾が戻っていくとあたしは直ぐ傍の後ろ足に杖を当てて【加熱】を最大限の範囲で掛けたわ。直径一メートルも有りそうな脚、でもちょうど関節のあたりの組織が加熱されてしまうと重そうな体もグラッと揺らぐの。


 尾の付け根あたりへと場所を変えてもう一度【加熱】を掛けた、尾の動きも少し弱くなったみたい。こいつの攻撃は尾と噛み付きのはず、もう一度尾へと【加熱】、さらに【加熱】。尾の動きが止まった、こいつの武器の一つは片付けたわ。あと一つ残った噛み付きを何とかすれば・・でも、なんだか手が痺れているのね。


 手と杖を見れば氷が張っていたの。【加熱】の反作用で熱が奪われていたのね。手が痺れて杖が良く握れなくなっていたわ。でも、もう一度・・さっきの脚へと【加熱】。片足の踏ん張りが利かなくなったのか、大きな体も倒れてくれたけど、もう【加熱】は使えない、あたしの手が持たないの。【冷凍】【風】も使えてあと一回だけかも。


 あたしは横倒しになった巨体の頭のほうへと戻り、頭の天辺に杖を当てた。これで最後にしないと・・思い切って【冷凍】。


 瞬時に凍りつく頭の辺り。脳をマイナス二百度に冷凍されて生きていられる者など居るわけもないのよ。目を見開いたまま動かなくなる巨体。でもあたしも視界が狭くなって行くの。正面しか見えない、視野狭窄かぁ・・やばいじゃん。その視野がゆっくりと傾いていく、なんで?


 視野が傾いていくのではない、あたしの体が倒れていくんだ、そう思った時、目の前が真っ暗になって意識が飛んだ。


 巨体が倒れた音に気づいたのかメリーメさんが様子を見に来て、驚愕の叫び。

 「なによこれぇ・・なんで地竜(ランドドラゴン)・・一体全体、どうしたって言うのよ」



都合でサブマスターの名前を変更しました

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