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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第二章
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6 ワルドの王都


 荷馬車はそうそう速度を上げる事は出来ないの。短時間なら馬を疾駆させれば何とかなるかもだけど、長時間なんて無理。百メートル走だって短距離だから走れるのであって、その速度でマラソンなんて出来ないでしょ。だいたい馬車が振動で壊れてしまうし。


 それでもバイホーンホースには頑張ってもらったのよ。単騎とか2頭立て4頭立馬車には追い抜かれたけどね。


 何日か掛かって、やっと王都に着きました。大きな建物が多くって、全部王城とか貴族の家とかって聞いたときには、平民から搾り取ってあんなのを建てるなんてと呆れてしまったわ。


 王都見物? いやいや、目的は領主への苦情申し立て。どこで言えば良いのか探しましたとも。当然たらい回しされましたけどね。

 やっと貴族への苦情窓口に辿り着いたのは翌日でした。たらい回し、疲れたよ。貴族への苦情窓口だから担当者は平民寄りで親切な人なのかと思っていたけど、窓口の人もバリバリの貴族らしくって、対応があんまりだった。


 「あの、あたしはマリー・フリーマンといいます。エリクソンと言う領主さんがあたしの友達の妖精さんを強引に取り上げようとしたので、やむなく身を守ったのですが。領主さんの行為を何とかしてください」

 何とか共通語でそういう内容を伝えたんだけど、返事はこうだった。

 「卑しくも貴族たるものがそんな行為を行う訳が無かろう。マリーとやら、お前貴族に対する名誉毀損で牢屋に入りたいのか?」


 いささかうんざりしてきたよ、この国の貴族には。そりゃ自分も貴族なんだからさ、貴族の立場が一番って思っちゃうのは判るんだけどね、この王国は貴族主義が過ぎるって言うか、少しばかり行き過ぎじゃないの?


 「そうですか。判りました。勘違いなのかもしれません。」

 もういいや、こんな国おさらばしてやると、そっけなく言い放って出て行こうとしたんだけど、どうやらあの領主の手が回っていたみたい。

 「どこに行く。テブリアの領主エリクソンから傷害、殺人未遂の疑いの通達が来ている。6歳くらいの少女、金髪、妖精を連れている。名前はマリー・フリーマン、間違いなくお前の事だろう」

 そ、そうですか。あの道で追い抜いて行った誰かがそんな手配書を渡していたとか。うちのお馬さんの足が遅かったって事なんですねぇ。もっとも荷馬車引っ張っているから仕方ないですけどね。しかし名前まで手配されてるとはねぇ、まあ領主に名乗っちゃったしなあ。、


 ちっと、まずいかもしれませんね、これ。名前が一致、しかも妖精を連れているっていう時点で言い逃れできそうに無いんだけど。

 「あたしがそんな事を出来る様に見えますか?」

 「見た目なんぞどうにでもなろう。子供に見えようがエルフの血が混じって居れば何をしでかすか判ったもんじゃない。領主に連絡を取ってやる。顔を突合せれば、言い逃れも出来んだろうさ。貴族への暴行だ、大罪だなぁ」

 汚い物でも見るような、虫けらに興味なんぞ無いというような態度。なるべく事を荒立てまいとしていたあたしもぶっちぎれそうになった。綺麗さっぱりと消えたら良いんじゃない、こいつ。いや、抑えて抑えて。

 「まあ、金貨50枚と持ち物全て、今来ている服やら靴やら全部だ。荷物も全て差し出せば、見逃してやらん事もないが。」

 ああ駄目だ、こいつも領主と同類だ。この国の貴族はみんな自分のために他の国民が居ると思っているのか。

 「そんな大金はすぐには用意できないです。時間を貰えますか」

 「明日一杯待ってやろう。金策が出来るのなら頑張ってみる事だな。ああ、妖精も引き渡して貰うからな。逃げようなんて思うなよ、衛兵にお前の事は伝えておくから、王都からは出ようもないがな、ククク・・」

 この貴族という屑達はどうしようもない。怒りを通り越して呆れてしまったあたしはその場を取り繕う。

 「明日一杯ですね。なんとか掻き集めてみます」


 なんとか外に出ることができたあたし、こんな国にはもういっときだって居たくないわ。大勢の人達の為に知識を役立てようと思っていたけれど、貴族達の為じゃない、この王国なんかには伝えたく無いわ。この世界の国って、全部こんな国ばかりなんだろうか。だとすれば知識を伝える前に国を相手の教育から始めないといけないって事?


 とりあえず、貴族なんてうるさいのは放っておいて、ティーさんとあたしは今夜の宿を探し、明日中には別の国へ向かうという事にしたよ。衛兵なんて知ったこっちゃ無いわ。見つからずに王都からおさらばすれば良いじゃないの。


 翌日、荷馬車を売り飛ばして退散の準備をしながら、いろいろと他の国の情報を集めたのね。貴族で無ければ親切な人が多いのよねぇ。主に食料を買い込みながらでしたけど。果物が美味しいみたい。試食があって、ちょっぴり味見させてくれるのね。

 食べきれないほど買い込んでしまって、後悔してるのは内緒ですが。


 隣あっている国は3つ。あたしの出身国、魔法王国、教会聖国だそうな。元の国には戻りたくないし、宗教の国も胡散臭いから嫌。となると魔法王国って事になるのね。実際には魔術師連盟みたいなところが政治をしているんだって。ここよりはまともかもしれないね。


 魔法王国が良いかしらと当たりを付けて、もっと情報をと聞いて回ったら耳寄りな情報があったの。魔法王国の王女様が近々結婚式を挙げるらしい。そして結婚式用のドレスを購入するんだとか。

 ピピッと来たよ。ウエディングドレスってやっぱり白だよねぇ。清楚な花嫁って感じで。スパイダーシルクで作れないかしらねぇ。でも、少し生地が厚いかも。もう少し細い糸ならいいのかもね。

 それにしても、何とか染色とか出来ないのかなぁ。赤いドレスとかも素敵だと思うし、ピンクとか水色とかあったらいいなあ。いや、パンツの事じゃないからね。

 

 スパイダーシルクって、多分空気に触れると硬化するんじゃない?空気に触れる前に染料を混ぜたら何とかならないのかしらね。張ってしまった巣から取るんなら無理だけど、|アルケニー≪魔蜘蛛≫さん達の分泌するところから直接糸にしてもらってるからね。なんか実験とかしてみようかな。


 ドレスを売りつけて、ついでに希少なものを手に入れましたって恩も売れば、あたしの立場も安定する。その後でゆっくりと魔法王国に知識を伝えても良いかどうか判断しよう。いずれは誰かに伝えなければいけないのだから、そこを焦っても仕方ないわ。無用の知識まで教えるつもりは無いけどね、銃とか爆弾とか大量殺戮兵器とか・・。でも大抵の民生知識って軍隊に転用出来ちゃうのよ。そのあたりは難しいわね。


 とりあえず青と赤の染料を買い込みました。あとはいつものように食料ね。馬車を売ってしまったので、荷物は極力少なめに。只でさえ弓とか増えてるし、染料も多めに買ったからね、持てなくなったらまずいけど。

 

 肩掛け鞄だけじゃどうしようもなくって、背負うリュックみたいな袋も用意したの。小さいサイズのが見当たらなくって、何軒店を回った事か。あっても耐久性の無い子供の玩具みたいなのじゃ役に立たないしね。

 

 夜になったわ。ティーさんと街の端へ移動して、ティーさんは薄暗がりで虎の姿に戻り、あたしのその上に。ちゃんとお花の鉢も持ったのよ。少しだけ助走してジャンプ、楽々と街の塀を越えて、と言うか3倍くらいの高さまで上がってるんですけどね。さらば屑貴族の国。


 そのまま夜の道をアルケニーさん達の場所目指して走ってもらったの。夜が明ける前に到着はしたのよ、速すぎて酔って寝込んだけどね。寝ている間にティーさんには食料を確保しに行ってもらった。



いやあ、酔って寝込むってつらいわ。


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