↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第二章
26/44

7 染色


 目が覚めると回りが蜘蛛だらけでびびったよ。まあアルケニーさん達の住処なんだから当然なんだけど、心臓に悪かった。目の前に大きな蜘蛛の体があったんだからね。もちろん、ちびったりはしませんでしたとも。


 ティーさんが集めてきた食料、黒鹿(ブラックエルク)と大蟷螂が二匹、アルケニーさんたちへのお土産としては十分でしょうね。


 アルケニーさん達にまた糸が欲しいってお願いしました。もちろんティーさんに念話通訳して貰ってですけどね。今回は細い糸が欲しいのだけど、どうしたらいいか聞いたら、簡単だったの。もともと糸の分泌は8箇所の分泌腺があるのね。それを一本にまとめてるんだそうな。だからまとめなければ細いままなんだって。


 ティーさんに桶を作れそうな木を切ってきて貰って、割って板を作り、組み合わせて四角い桶。アルケニーさんの糸で縛って出来上がり。

 二つ出来た桶に水を張って、持ってきた染料をどばっと入れてかき混ぜれば染料液の出来上がり、なのかなぁ。まあ、初回だから適当にやって見るしか無いのよね。アルケニーシルクの染色、巣から採取した糸は多分誰かがチャレンジして挫折してるはずだけど、分泌するところからなんて誰もやった事ないだろうしね。


 アルケニーさんには糸を出してもらい、少し巻き取って、伸びた糸ごと分泌しているお尻を桶の中に沈めてもらい、糸を抑える板を桶に差し込んだの。後は巻き取るだけね。

 青いほうは空気に晒さないといけないらしいから、その場で巻き取らないでそのまま引っ張って行って貰うの。水色の8本の糸がスーッと伸びていくのはなんて言うか、綺麗だったわ。赤いほうも少し濃い目のピンクになったの。こっちは少し離れて巻き取り。乾かさないといけないでしょ。後で川に行って洗うともう少し淡い色になると思うけど、染色はなんとか成功したみたい。


 巻取りは小さなアルケニーさんに手伝って貰いました。桶二つから16本が同時に出て来るから、結構大変なのよね。五百メートルくらいの巻きがどんどん出来ていったわ。太陽が真上にくるぐらいにはアルケニーさんの糸の源のタンクが空になっちゃったみたいで、休憩。


 ティーさんが取ってきた鹿を食べてのほほんとしていたら、花の精さんが何か言いたげに顔の前をふわふわと。

 「もう少し大きくなったらお話しできるようになると言っている」

 ティーさんの通訳、便利だなぁ。

 一瞬、以前やらかした、妖精から精霊大精霊の事が頭をよぎったけど、まあいいや。

 「あたしは構わないけど、お腹一杯じゃないの?ここにはお花畑も無いよ?」

 「大丈夫だそうだ」


 あたしは手のひらを上に向けて開いたの。花の精はその上に乗っかってコクコクと頷く様に上下に少しだけ動く。以前と同じようにそっと手のひらから魔力を渡すと花の精さんのふわふわな光が強くなって行ったわ。少し身もだえするように揺れた後、はじけるようにピカッと煌めいて、その光が薄れたと思ったら30センチくらいの大きさの妖精、いや精霊が浮かんでいた。


 「ありがとうマリー」軽くお辞儀をする花の精。おふぅ、念話ですよこれ。

 「どういたしまして。精霊さんに・・なったの?」

 「うん。だから念話も使えるようになったよ」

 花の精は念話が使えず、精霊になると使えるらしい。そしてもっとすばらしいのは念話の中継が出来るんですって。ティーさんにいちいち通訳してもらわなくても良いのね。


 アルケニーさん達とも意思の疎通が出来るようになったあたし、細かい指示も、出し放題で午後からの作業の捗る事捗る事。タンクの空になった親達にはお休みしてもらって、子供達にチャレンジしてもらったよ。五百メートル巻きが山のようになっちゃった。太い糸のと細い糸のが出来ちゃうけど、後は機織職人さんにお任せしよう。どうせ強度なんて求めてないからねぇ。


 翌日は川で水洗い。巻いたのを運ぶのは子供アルケニーたち。いいのよ、それくらい働かないとねぇ。川で巻を解いて糸を水の中へ、流れて行かない様に木を渡して端を巻きつけてね。2日くらい洗えば大丈夫かしら。


 作業をしていたら岩トカゲってのが出てきた。体長三メートルのワニみたいなやつね。口ががばっと開くから危険かも、杖を差し出したら齧られた、というか杖を口の中に入れて離さないのね。杖は美味しくないと思うんですけどねぇ。

 【冷凍】で頭が氷に包まれ、【加熱】で元に戻ったけど、ピクとも動かなくなった。退治完了?そりゃマイナス二百度まで下げられた後で二百度まで加熱されたらひとたまりも無いわよね。岩トカゲさんはアルケニーさん達の3時のおやつになりました。皮が硬い様だけど、たまには歯も使わないとね。


 洗っている間に、染色しない白いままの糸も出して貰って巻き取りましたよ。ウエディングドレスなんだから白は必須でしょうが。それにしてもこの細い糸で織った布ってどんな感じになるのかしら、蚕さんの絹みたいに優雅になれば良いんだけどね。このローブみたいだと硬くて重いからドレスには向かないよねぇ。


 その後は日向ぼっこのお昼寝タイム・・じゃ無くってさ、弓の練習をしたんだよ。矢を取りにいくのが面倒だから、糸を縛り付けて打ち放題。外れたのは糸を引っ張れば手元に戻ってくるって計画。それはうまく行ったんだけどね、撃ちすぎて腕が筋肉痛。少しやりすぎたわ、反省。


 次の日にはティーさんにもう少し獲物を取ってきてもらい、【冷凍】でカチカチに凍らせたの。日陰に穴を掘って、その中に埋めるとしばらく持つんじゃないかしら。あたし達がいなくなった後の食材だからね。


 つまみ食いしちゃ駄目よ、そこの木の陰で狙ってる子。



 川から糸を引き上げて、木と木の間に渡して乾燥。色合いは、ちょうど良いかな。淡い水色と淡いピンク。色がなかなか染み込み難いのか濃い色にはならなかったのね。これでドレスを作ったら、上品で清楚な可愛いのが出来そう。王女様にたかーく売りつけてやろう。


 乾いたのをもう一度巻き取って、ここでの作業はお終い。



 さあ、糸を抱えて魔法王国へ行かなくっちゃ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。