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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第二章
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4 弓は難しかった


 ローブと服が出来上がるまで2週間欲しいと言われたあたし。のんびり待つ事にしたのだけれど、暇なので街から森へ入っていろいろと魔法の鍛錬をしてみる事にしたの。


 広い野原を探したのだけど、なかなか見つからなくて半日も掛かってしまったよ。やっと見つけたそこは結構街から離れた場所だったの。他の人に見られる心配も無く、練習する事が出来そうなのよ。


 【風】は相変わらず杖ごと持っていかれてしまうの。なんとか風だけ起こす事が出来ないかといろいろやって見てるんだけどねぇ。作用点の中心が杖だから仕方ないのかなあ。


 ん?

作用点?

杖の先から魔力を放出するからそこが作用点になるって事は、たとえば魔石から魔力を放出させると、どうなるのかしら。

 小さな魔石を結晶化させて、手のひらに載せてやって見たの。魔石がビューンってすごい勢いで飛んでったよ。

 おおっ、これってなんか出来そう。

 魔石を飛ばすって、銃になるのかな?でも銃身になるパイプの加工が大変そうだね。記憶の中に銃の構造図が存在するから作れるかも。

 それとも矢のお尻に魔石を付けておいて飛ばすとか。或いは魔石は弦のほうに付けて置けば使い捨てじゃないし。魔石で飛んでいくから大きな弓である必要も無いわね。エルフを語るんだったら弓はぴったりなんじゃないかしら。

 小さめで弦の張りはそこそこ、どうせ魔石の力で飛ばすんだから強く弦を引く必要は無いけど、反動があるからね。そんな弓だったら軽くて小さなあたしでも持って歩けそう。アイデアが沸いて来るのよ。自分じゃ作れないけどね。街にもどったら武器職人に相談して見ようか。


 新たに知った知識を活用。これ重要よ。



【加熱】も【冷凍】も魔石で作動する事がわかったのよ。小さな魔石を杖に乗せて魔力を放出させたら、ちゃんと効果があった。ただ、残念ながら杖を振って魔石を投げたら、杖から離れたとたんに放出が止まってしまって、単に石を投げただけになっちゃった。

 杖から離れても魔石に放出を続けさせる方法が判らないと無理って事ね。



 街へ戻って、武器屋を探しましたよ。剣を扱う店、弓矢を扱う店、両方有る店、様々なのねぇ。何箇所か見て歩いて、弓のオーダーメイドを受けてくれる所が有ったので、依頼してみたの。


 あたしが使うには、小さい、軽い、張りは普通位、の弓でなければいけない。小金貨5枚も取られたけど作ってくれる事になったの。弦は2本をわずかに間を空けて張ってもらい、弦の真ん中に金属の小さなカップを付けて貰うの。魔石をそこに入れるのよ。


 こりゃあ玩具だな、店主は嘲る様に呟くけど、良いのよそう思うなら。

 矢もいくつか種類を選んだわ、長いの短いの重いの軽いの。ついでに木じゃなくて鉄の矢も作って貰う事にしたの。

 鉄の矢なんて重過ぎて1メートルも飛ばないんじゃないか?

 そんな店主の言葉は無視。長さもすごく短いのまで5種類ほどオーダー。特注の鉄の矢だけで小金貨1枚。10本単位だとしても、高いよー。


 かなり投資したんだから、出来上がってくるのが楽しみだわ。


 そういえば、あの広い野原、結構な数の魔力源が有ったのよ。協会の依頼石版を探したら、ウサギや狐、鹿、熊なんかの討伐兼素材採取の依頼が出ていた。いくつか記憶しておいて、また野原へ行ったわ。


 【冷凍】を何度も試して見たのね。だんだん範囲を絞れるようになってきた。狭いところの温度を下げるって事。杖の先の直径50センチくらいの球状の空間だけ、温度をかなり下げる事ができたわ。空気が液化してしまったから何度くらいに下がったのかしらねぇ。窒素だと-190度とか?もう瞬間冷凍の世界だね。


 【加熱】もかなり高温に出来るんだけど、杖が燃えてしまわないようにしないといけないから、200度以上には出来ないのね。お湯を沸かすには十分なんだけどね、お肉も加熱して調理できるし。


 なんとか杖から離れたところの温度を上げることが出来ないとなぁ。


 悩み多きマリーでした。



 数日後、弓が出来て来た。小さな弓、弦がちゃんと2本わずかな隙間で張ってあって魔石用のカップもついてて、左手で握りやすい形のグリップから薄い木が両側へ伸びているの。あたしが片手で持つには少し重いかなぁ。だって右手は弦の魔石に触れて魔力を放出させないといけないのよね。各種の矢も受け取って、また野原へと出かけたのよ。


 魔石を弦にはめ込んで準備完了。1本の木を標的にして、弓を構え、矢をセット。弦を少しだけ引いて魔石から【風】、ぱしゅっ。

 いや、見事外れましたとも。魔石で飛ばすんだから飛距離は十分なんですけどねぇ。弓なんて初めてだから当たる訳もないか。

 

 ティーさんに外れた矢を拾ってきてもらい、何度も練習を繰り返すとようやく木に当たるようになって来たわ。まだ集矢率はひどいけどね。鉄の矢は重くって狙いが定まらなかった。支えていると左手がプルプルしちゃうのよ。木の矢なら、近距離であれば掠るくらいはするかも。


 これ、伏せて撃ったら左手が楽じゃないかしら。

 ためしにやって見たけど弦が手に当たって無理だった。記憶を探ると弦が水平なボウガンってのがある。そんな構造じゃないと無理なのかな。今度ノームさんにでも作ってもらおう。


 日が傾くまで練習を続けましたよ。試しに【探知】で見つけた魔力源へと撃ってみたけど、案の定外れ。しょぼんと街へ戻りました。


 翌日も練習。10メートルくらいの距離ならちゃんと木に当たる様になったのね。試しに【探知】した所へも撃ってみたよ。もちろんかなり近づいてからにしたわ、ターゲットを目視しないと狙いも定まらないもの。


 何回撃ったかしらねえ。やっと小さな土ネズミに当たった時は嬉しかった。やったぜーって感じね。小さすぎて素材の買取依頼も出ていないような動物だったから、矢だけ回収したわ。まだまだ武器として使うには無理がありそう。


 弓で仕留めるのは諦めて、【探知】と【冷凍】【加熱】の組み合わせでいくつか魔動物を仕留めて帰りました。何時も手ぶらじゃねえ。二尾狐と針モグラ、角うさぎ2匹。もちろん運ぶのはティーさんだけどね。



※※※※※※※※※※


 ハートは探索者組合の依頼石版の前で割りの良さそうな依頼を物色していた。角うさぎか、数そろえるのは厄介だしなぁ。こっちは熊の探索と討伐か、時間掛かりそうだな。なかなか良いのが無い。メンバーを食わせていくのがリーダーの大事な役目なのだ。

 

 ふと人探しの依頼に目を留めた。6歳学生、金髪、目に特徴あり、右青、左碧。行方不明、消息情報銀貨一枚。

 横に居たメンバーがそれを見て呟くように言う。

 「リーダー、これってこの間の子なんじゃ?」

 確かに条件には合うかもしれない。あのエルフは左目を布で隠していた。あの下に碧の目が有ったとしたら。その情報だけで銀貨一枚か。

 

 「お前もそう思ったか」

 ハートはそう口にした。このまま窓口で遭ったかも知れないと伝えるだけで報酬が貰えるなら、これほど楽な事はない。だが、同じ人探しの依頼がもう一つあった。こっちは小金貨1枚と額が一桁違う。依頼人を確認すると、女癖が悪いという噂の伯爵家だ。こりゃ、なにごとか有ったんだろうなあ。


 変な事に巻き込まれるのは困る。あの少女の事を良く思い出してみた。外見、6歳くらいに見えるエルフだったよな。金髪も同じだ。目は、わからん。少なくとも右目は同じか。学生?まてまて、6歳って言うと幼年組だろう?あれが幼年組みのど素人だって?そんな馬鹿な。


 探索者と一緒に行動出来る6歳児って有り得んだろうが。それに本人の申告どおりなら治癒が使えるはずだ。角ウサギをあの短時間に狩って来たのだって、一人前以上の腕だし、何より魔狼を杖の一撃で行動不能にするなんて、只者じゃない。殴りエルフかって思ったんだよなあの時。

 それに友達と言っていたあの男。巨体にもかかわらず愚鈍なところがまるで無かった。1対1での対戦は絶対に御免こうむりたい相手だ。そんなやつが友達で、あの様子じゃ多分付き合いは長そうだ。

 「有り得ねえ。」

 呟くように声が漏れてしまう。


 「なにがですか」

 「ん、いや、あん時のやつがこの6歳児の学生だなんて有り得ないっ思ってな」

 「そうなんですかね」

 「お前達よりよほど頼りに出来そうだった。そんな子が6歳児だって信じられるか」

 「そりゃ、あっしらとしては困りますなぁ」

 「この依頼はほおっておこう。君主危うきになんとやらだ」

 「もったいない気もしますが、リーダーがそう言うのなら」

 メンバーの言葉に、ハートは溜息をつくが、別の依頼を探し始める。なにせ、飯の種を探さないといけないのだ。




 マリーの誤魔化そうという目論見はまんまと成功していた。


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