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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第二章
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3 ワルド王国 アルタの街

 馬小屋で寝た翌朝、早くに目を覚ましたあたしは村の中を見て回った。何人かの村人が歩いて居たので、地理的なことを聞いてみた。

 ここはワルド王国、村の名前はサブール、この先の街はアルタ。村は小さいので商店といえば雑貨屋が1軒しかない。アルタの街はもっと大きいので商店もたくさんある。素材の買取をしてくれる所もあり、機織職人も居るらしい。希望にぴったりじゃないですか。


 大急ぎでティーさんとアルタの街へ向かいましたとも。



 街に着いたあたし達、まずは泊まる所を探したわ。こんな大きな町に来てまで昨日の様に野宿はしたくないしね。出来れば探索者組合に近い処が良いかなと思い、近くの暇そうなお店で聞いて見たのね。

 「すみません、ここ、初めて、来た、探索者組合、場所、知りたい」

 片言なのは仕方ないのよ、共通語は習い始めたばかりなんだから。

 「旅の人か。探索者組合って冒険者協会の事だろうな。この先を少し行って右に曲がったところに有ったはずだな。」

 店主らしきおじさんが同じ共通語で答えてくれた。

 「ありがとう」

 探索者組合はこの王国では冒険者協会と呼ばれているのね。まあ、名前が違うだけかしら。

 教えてもらった方へと歩いて行ったのね。色んな商店が並んでいるわ。布を売っているお店も何軒かあったし、武器の店とか防具の店とかも有るのね。薬品のお店とか、食料品店、パン屋、魔石店、衣類店、雑貨屋、思いつく限りのお店が在りそう。


 冒険者協会はすぐに見つかった。で、2軒隣に宿屋が建ってたから、そこに泊まる事にしたの。二人で1泊銀貨1枚、値段としては高めなのかもしれないけど、この国での相場がわからないからね。


 荷物を部屋に入れて冒険者協会に行って見る事にしたわ。中はラゼルでの探索者組合と同じような構造だった。壁に依頼の石版が並んでいるのもラゼルでのやり方と同じ。

 アルケニーシルク採取の依頼とか無いのかなぁ。探して見たら有ったよ。Fランク、期限無し、100メートルで小銀貨5枚だって。かなり単価高いのね。これ全部だと幾らで売れるのかな。3つくらい依頼があったので依頼主を覚えておいたの。後でどんな人か調べて見よう。


 せっかくなので、協会に登録する事にしたわ。必須なのは名前だけ。年齢や種族は希望者のみ申告するらしい。情報が多いほど指名が増えるって事のようだ。指名依頼って言うのは、XXさんにやって欲しいと特定個人を指名する事。まあ、きちんと依頼を達成して貰うには実力のある人を選ぶって言うのは間違いじゃないね。受けれる時間的余裕があればの話だけど。


 初登録のあたし達・・ティーさんにも登録して貰う事にしたのよ。

 名前、マリー・フリーマン。自由人マリーって事ね。そう名前も変える事にしたの。もっともマリーって言うのは字にするとメアリーと同じ文字を使うんだけどね。Marry。フリーマンって言うのは自由な人って意味、フリードマンからのもじりなんだけどね。テイーさんもフリーマンの名をつけたのよ。ティーゲル・フリーマンって事ね。

 職業、思い切って賢者って登録しようとしたら却下された。それは称号であって、職業では無いそうで、仕方なく魔術師にしたわ。いいのよ、自分では賢者って名乗るんだから。

 種族、これはエルフって事にするかどうか悩んだの。エルフと似ている所といえば体が小さいって所しか無いしねえ。だから種族は公表しない事にしたわ。

 得意分野、もちろん【治癒】しかないわ、今のところはね。


 ランク、等級ってのがやはりあったの。学校の生徒として探索者に登録したときは10級だったけど、冒険者協会ではGランクが最低みたい。FEDとランクが上がって行き、一番上はAランク。その上はほんの一握りしか居なくてA+とかA-exとか呼ばれるらしいわ。

 

 こうして、新しい協会員カードを作ってもらったあたし達はGランク冒険者って事になったわ。依頼を消化して実績が上がればランクも上がるって言うのは探索者と同じね。


 アルケニーシルク採取の依頼はまだ受けなかったよ。依頼主がどんな感じの人なのか判ってからにするつもり。だって、金儲け崇拝者とかだったら嫌だしね。

 3人の依頼主に会おうと思って、受付で場所を聞いたわ。近いところから訪ねて見るのよ。


 宿に戻って、アルケニーシルクの糸のサンプルを作る事にしたんだけどね、強度が高くって鋏なんかじゃ簡単には切れないのよ。軽量で防具の材料にするってのは伊達じゃないわねぇ。仕方ないから宿の厨房を借りて火で焼き切りました。10メートル位のを数本作って、小さく丸めてサンプルって事に。


 サンプルを持って、依頼主を訪ねたのね。

 1件目、あまり感じの良くないおっさんが店主。サンプルを見せたら目の色を変えていた。どのくらい持ってるんだとしつこく聞いてくる。少しだけ値段交渉してみたけど、依頼額は変えないと言い張った。

 2軒目、人の良い正直そうな店主。やはりどのくらい在るのかが気になったようだ。量によっては依頼額より上乗せしても良いと言ってくれた。

 3件目、小さな店舗だったよ。機織は自分のところでなくて別の人に依頼するんだそうな。

 3軒ともサンプルは無料進呈してきましたよ。


 でも、あたしの目的は自分の服を作る事。素材を売ってお金を稼ぐのが目的じゃないのですよ。


 て事で、防具店に行ったよ。厳つい顔のでかい親父みたいな店主にすこしびびったけど、話して見るとそんなに怖くもなかった。しゃべり方は少し乱暴な口調だったけどね。きちんと話を聞いてくれて・・・やはり片言になっちゃったけどね・・・契約している機織職人を呼んでくれる事になったの。


 店内のいろんな防具を見ながら待っていると、職人さんが来たのよ。希望を伝えたわ。

 ローブを作りたい。上着とズボンを作りたい。材料はどれくらい必要か、費用は幾ら掛かるか。期間はどれくらい見ればいいか。


 職人さんはサンプルを伸ばして調べていた。

 「すごく上質のアルケニーシルクだ、普通は張った巣から取るんだが、大抵巣の縦糸と横糸とのつなぎ目が玉になって均一にならないんだ。これはそんなのも無い。これを布にしたらすごく高価なものになる。」

 ほおほお、巣から取るんですね。これは巣じゃなくて、直接巻き取ったものだからねぇ。

 「素材を提供してくれるのなら、小金貨5枚で織る。」

5枚か、高いのか安いのか判断できないけど、依頼することにしたよ。


 「上着、ズボン、こっち、糸、作る、欲しい、良い?」

 あたしは子供蜘蛛さんの糸を取り出したの。こっちのほうが細いのよ。ローブは厚めでも良いけど、着る服はねぇ少し薄いほうがいいじゃない?


 「こ、これは・・細シルクじゃないですか」

 希少なものだったようだ。いや、結構な量があるんですけどね。

 

 結局その防具店に作成をお願いする事にしたの。太目のやつを2巻きと細目のを2巻き提供して、費用として別に1巻きずつ渡すって事になったのね。硬貨は動かないけど、すごく喜んでいた。なかなか素材も手に入らないらしい。


 で、残りのシルクもこのおじさん達に売る事にしたの。協会に依頼を出して貰って、依頼完了ってことで実績としてカウントされるだろうし。既に出て居た依頼より少し単価が安けれは他の人が受ける事もないだろうしね。


 ティーさんに宿まで6巻きのシルクを取りに行って貰い、その場で渡してなるべく早く作って貰うようお願いしたよ。で残りのシルクは協会の依頼板経由って事に。


 アルケニーシルクは染色が出来ず、白いまま着るしかないらしい。まあ、ショッキングピンクとか目立つ色でなきゃ何色でも良いんですけどね、とあたしは安易に考えてしまったの。実際には白いローブや服なんて汚れが目立つものを身に着ける冒険者なんて居ないって知ったのはずっと後の事。派手な色じゃなくても十分に目立つ格好だったのね。


 翌日ティーさんに抱き上げられて協会へ。依頼が張り出さされて居るのを見つけて受付へ。防具屋のおじさんはEランク、500メートル単位、期限3日という依頼として出してくれていたのね。


 「お嬢さん、これを受けるのかい?達成できないとペナルティあるんだけど、大丈夫かな?」

 受付のお兄さんが気を遣ってくれているようだ。依頼を受けて失敗すると10%のペナルティがあるのは聞いていた。無期限だと手に入れてから依頼を受ける事も簡単だけど、3日って期限付きだと誰も受けないだろう。

 「大丈夫、受ける。500メートル、依頼、もっと長い、実績、たくさん?」


 既にものはあるんだから簡単なんですよね。実績が長さ分カウントされるかどうかを確認したかったのよね。

 「500メートル単位で一つの依頼としてカウントされます」


 よしよし、おにいさん忘れないでね、その言葉。にまにましながら協会員証を提示して依頼を受けましたとも。


 石版の依頼が外されたのを確認して、あたしは宿へと戻ったの。ティーさんに運んで貰うのは楽なんだけどねぇ、自分で歩くより速いし。でも、足が鈍っちゃうわ、こんな事ばかりじゃ。少しは自分で歩いて鍛錬しないといけないかしらねぇ。


 翌日には残っていたシルク、太いほうが5巻、細いほうが12巻を防具屋さんに持ち込みましたとも。店主さんと機織職人さんは絶句してしまったの。そんな多い量は考えても居なかったらしいのね。まあ、相場が暴落してもあたしには関係ないしねぇ。

 昨日渡したのは既に解いて長さを測ったらしいわ。1巻きで約8Km位だった様で、織るには十分。細いほうは12Km。協会の石版の依頼からすると、90回と288回あわせて378回分って事。レベルアップには十分すぎるじゃございませんか。


 依頼完了証明みたいなのを協会に連絡して貰う事にしたんだけど、こんな量の買取なんて支払えないって話になっちゃったのよね。ちなみに買い取り金額は銀貨にして1240枚、金貨で12枚だよ。端数は切捨てで良いや。まあ、急いで清算して貰う必要も無いんだけどさ。

 のんびりと織って生地にしてもらって、それで防具を作ってから支払って貰うって事にしたわ。一夜にして大金持ちってこういう事を言うのかしらねえ。蜘蛛さん達、お礼になんか持って行ってあげよう。




 なお、協会でのランクはGランクから上がってDランクになった。アルケニーシルクの採取依頼がEランクなので、回数を重ねてもCランクにはなれないそうだ。378カウントなのに、なんか悔しい。


7/7 マリーの話した言葉を修正。

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