14 学校へ
お花が咲き始めたよ。日差しも暖かくなってきた。そう、春が来たの。もちろんあたしの頭の中じゃ無くって、お家の周りの話だよ。あたし、王都の学校に行くのね。もう、とうさまとかあさまとシャルちゃん、イリアさん、ほか村の人達が総出で見送ってくれました。
村から商人さんの荷馬車に乗せてもらって王都まで1週間。護衛の人が乗っていたよ。同行一日で小銀貨3枚だって。大きな魔動物が襲ってきたのを撃退したら+小銀貨5枚、その際に馬車の盾となって死亡したら、それとは別に保証金みたいなのがもらえるんだそうな。魔動物が襲ってくることはめったに無いらしい。
のんびりと馬車に乗っているだけなんだけど、木の荷台が硬いよ、お尻が痛くなっちゃう。
ぱかぱかと馬のような動物が引いていく荷馬車。いや、馬らしきものってのは羊みたいな角が2本生えてるんだよね。バイホーンホースって言うらしい。
暖かい日差しの下で揺られていると眠たくなっちゃうねぇ。ついうとうとしちゃう。別に好きで夜更かししたわけじゃないよ、ただわくわくして良く眠れなかっただけで。
魔動物が襲ってくることも無く、平穏無事に王都に着きました。以前行った街よりもとても大きくて、びっくりです。いろんなお店が並んでいる所を通りながら、ケイト先生のところへと向かいます。
紙のお店があったので高いんだろうかと思い入って見たよ。B5くらいのが10枚で小銀貨3枚ですって。一枚300円くらいって事ね。確かに高いわ。50枚のノート一冊が1万5千円じゃ恐ろしくて使えないね。でもお手紙書こうと思って10枚のセットを一つ購入したよ。郵便局とかは無いから、手渡しになるんだろうけど。
ケイト先生のところ、以前石版に地図を書いてもらったから記憶を探って、迷わずに行けたよ。絶対記憶で思い出せちゃうから大丈夫。
「ケイト大先生、いらっしゃいますか」 うわ、睨まれたよ。あたし、なんかしたかしら。魔宝石のことなんてすっかり忘れていたあたしでした。無理やり魔宝石を返されてしまって、今度はどうやって押し付けようかと思案してしまった。
ケイト先生は有無を言わさずにあたしを学校の寮へと連れて行ったの。そんなに冷たくする事無いじゃないよぉ。親切でやった事なんだから。大きな親切、小さなお世話ですって、そう言われるとまたしてしまいたくなるのが人の常。うーん、そのうちまたなんか考えよう。
学校の寮はちょっと古いけど、女の子専用の綺麗な建物でした。受付で言われた部屋番号を探して、ドアをノックしたわ。
「はーいどうぞー」幼く無い声が帰ってきたので、ドアを開けて中へと。
「いらっしゃい、メアリーさんね、あたしは同室のシンディよ。よろ・・・きゃああっ、な、なんて可愛い子なのかしら。あなた、まさか人形じゃ無いわよね。ふわふわの金の髪に整った顔、小さめの体、ま、まさしく私の理想少女じゃない」
いきなりがしっと抱きしめられて、あたふたしてしまうあたし。
だめだ、この人・・普通じゃない。
「もう、なんて言ったらいいか判らないわ。あんなお洋服や、こんな下着とか、ヘアピンも可愛いの着けようか。どのお店でお買い物したら良いかなぁ」
多分頭の中の妄想ではあたしを着せ替え人形にしているに違いない。あたしは、荷物整理しないと・・とか言い訳をして、腕の中から何とか逃げ出したよ。 はあ、先が思いやられそうだわ。
逃げだすように寮を出て、あたしは生活費を工面する事にしたの。衣料品のお店で、使い込んだように見えるけれど品質のよさそうなローブと肩に掛ける鞄を探して歩いたわ。なんとかあたしの体に合うような小さ目なのを見つけたけれど丈は地面すれすれまで長い。鞄は大人には小さめなんだろうけど、あたしが肩にかけると丁度良い位。それと、装備のお店で短めの杖、これも使い込んで傷だらけのがあったので購入。あとは靴。ぼろっちいけどあたしの足にも合うのがあった。
路地裏でローブを羽織り、フードを頭にかぶせて、靴を履き替える。杖を持てば・・ほら、ベテランのエルフに・・見えなくも無いでしょ。
何をするかって、魔石を売りにいくのよ。学校の新入生が魔石なんて持っているはずも無いだろうから、旅のエルフが売りに来たって事にして。もちろん精霊さん達にあげた様なのは他人に渡せるはずも無いから、その辺の粘土みたいな土を丸めてお団子にした物とか道端に転がっていた普通の石とかに魔力を注いで作った品質の悪いやつ。イリアさんとケイト先生に渡したのと同じ様なものって事ね。
王都には魔石を扱う店が大きなお店から小さなお店まで沢山あるの。その中でもあまり混みあっていない中くらいのお店を選んで、中に入っていったわ。顔が見えないように深くフードを被ったまま買い取りカウンターらしき所へ向かって行き、近寄ってきた店員に話しかけたの。
「石、買い取り、可?」
言葉が余り判らない旅のエルフってシナリオね。
「みて見ないと何とも言えません」当然のように店員は答えたわ。
よしよし、いける。あたしはそう思って、鞄から魔石を一つ取り出して見せたの。2センチ位の大きさのやつね。予想では小銀貨200枚つまり小金貨で2枚。コンロの魔石を単純に50倍すると小銀貨250枚だけど、ほら販売手数料が必要でしょ。
店員さんは、ノギスの様なもので大きさを測り、天秤のような秤で重さを量ると、早見表みたいなのを指でなぞっていった。
「小金貨3枚と銀貨5枚でどうですか」店員が値段を言ってくる。ほむ・・・大きいと価値も上がるのかしら?あたしは首を横に振ってみる。
言葉がわからないと思ったのか、実物の小金貨と銀貨をカウンターに載せてくる店員。あたしはもう一度首を横に振ったわ。
「大きい」もう少し出せといってみる。
仕方無いという顔をしながら、銀貨が+2枚された。うーん、買取の相場なんて知らないから、それ以上あげて貰えるのかどうか判断がつかない。わかったと頷くと店員は魔石を取り上げて小金貨と銀貨をこちらへと押し出すようにする。
あたしは、鞄から同じサイズのをもう二つと少し大きめの3センチくらいのを一つ取り出す。これも、とばかりにカウンターへ。
結局魔石4個で金貨1枚と小金貨が5枚になった。
元の世界だと・・ええっ150万だよ。あちゃぁ、思ったより価値があるのねぇ、魔石って。そのお店ではそこまでと思い、金貨を鞄にしまって外へ。
うーん、こんな大金持ち歩いて良いのかしら、と思いつつも銀行なんて無いし、大体口座開けそうに無いし。鞄の隠しポケットみたいな所へ仕舞い込んだよ。鞄ごと引ったくりに逢ったら目も当てられないねこれ。
道すがら、着替えの服とか買って帰りました。そりゃ、下着も買いましたよ。ゴムが高価なこの世界、パンツは紐で縛るドロワース見たいなやつが普通なのね。当然、念願の手鏡も手に入れましたとも。ノート代わりの石版が必需品。滑石のペンは消耗品だから5本。結構高いのね。細い形にするのに手間がかかるからかしらねぇ。
荷物を抱えて寮に帰るとすぐに夕食。結構美味しかったよ。食べきれずに余らしちゃったけどね。食事が終わって部屋に帰ると、シンデイさんが待ち構えていた。
「お風呂、行こうか」にこりと微笑みながら両手であたしを・・・思わず後ずさったけど、逃げれなかったの。抱きかかえるように持ち上げられてそのまま浴室へと連れて行かれてしまったあたし。 念入りに全身を洗われてしまいましたとも。もう、お嫁さんにいけないわ。
おかしな人が同室人だったけど、明日からの学校生活、楽しく過ごせると良いなあ。
ちなみに、翌朝目が覚めたら違うベッドの中で抱き枕にされていた。シクシク。




