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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第一章 
12/44

12 手術後だった

 手術はなんとか終わった。けれど、まだ5歳児の体力が底を突き、また極度の緊張が緩んだ事もあり、気を失ってしまったあたし。気づくとリビングの椅子の上に寝かされていたの。

 飛び起きる様にかあさまとシャルちゃんに駆け寄って【認識】【認識】

「生命力-弱(回復中)。外傷-無し。体躯内-回復中。肺-欠損なし。血管-損傷無し」

「生命力-弱(回復中)。外傷-無し。体躯内-回復中。肝臓-回復中。血管-損傷無し」


 よ、よかった。二人とも生命力-弱だけど回復中になった。安心したあたしの頬を安堵の涙がつたう。


 「あなた、いったい何者なの?」不審げなケイト先生の声があたしの背中に浴びせられた。それはそうだろう。【治癒】では直らないはずの患者を開胸、開腹手術までして助けてしまったのだから、ありえない状況に先生が不思議に思うのも無理はない。


 あたしは話してしまっても問題にならないように言葉を選びながら答えていく。


 妖精さんとお友達になって、会話が出来る。家族が大怪我をしたので、治療を手伝って貰った。治療方法は妖精さんから聞いた。騒がれたくない。仲良くなった妖精さんから魔石を貰えるから先生とイリアさんに渡すので秘密にして欲しい。治療はケイト先生がやった事にして欲しい。

 かなり無理のある説明だったけど、精霊に誓うと言ってしまった先生もそれ以上は突っ込め無くなった様だ。

 

 もう一度シルフさんを呼び出して、まだ目を覚まさないかあさまとシャルちゃんを風で浮かせて、寝室のベッドまで運んでもらった。何時までもリビングって訳には行かないでしょ。


 ついでと言っちゃなんだけど、先生にお願いしてみたよ。王都って所の学校に行ってみたい。費用は魔石を売って自分でまかなう。ついては、先生があたしに才能がありそうだから学校に通わせて見たいとうちの親を説得してほしいって。

 「それは、構わないよ。と言うか歓迎するよ。メアリーちゃんのような子が学校に入ったら大革命になるかもしれないけど。まあ学校は女子寮もあるし。でも授業料が馬鹿高いんだよ。入学金が銀貨5枚、毎月銀貨5枚くらいかかるはず」

 いや、革命とかって、そんな積もりはさらさら無いんですけどね。人に教えることが出来るほど知識も経験もありませんし。かあさまとシャルちゃんだから何とか成功させられた様なもので、他の人の治療なんて、あたし医師じゃありませんから。

 ああ、入学金ってのも在るんだ。そうだよね、義務教育とかじゃない、私立だものねぇ。

 「いえ、こんな事は今回だけでもう沢山です。二度とやるつもりは有りません。とりあえず学校に基礎知識を勉強に行きたいのです。」先生の言葉にもうやらないと釘を刺しておく。


 そんなこんなしていると、玄関のドアがバンと開けられて、血相を変えたとうさまが入ってきた。

 「ア、アリスとシャルが怪我をしたって聞いた、二人は大丈夫なのか?」

 あたしはとうさまのところへ駆け寄って、足にしがみつく。

 「かあさまと、シャルちゃんが大怪我したの。でも、先生が直してくれたの」こういうのは言ったもん勝ちと相場が決まっているのよね。

 とうさまは、慌しく二人が寝かされているだろう部屋へと駆けて行き、出てこない。あたしは後を追いかけるように部屋へと。とうさまは大きな手のひらで、かあさまの顔とシャルちゃんの頭を代わる代わる撫ぜながら、あたしの方を振り返ると心配そうな顔で

 「二人とも寝ているのか?なぜ目を覚まさない?」

 「治癒したら体力が減ったので、すこし眠ったら良いって、・・・。」

あたしが判断したの、は口にしませんでしたとも。とうさまは案の定、先生がそう言ったのだと勘違いしてくれましたよ。


 「そ、そうか。二人とも大丈夫なんだな」

血色の良くなっている二人の顔を見てやっと少し安心したのか、とうさまはリビングへと戻りケイト先生に深々と頭を下げたよ。

 「先生が治療してくれたんですね。有難うございます。私が街の警備をしている最中に、アリスとシャルロットが命に関わる大怪我したと商人から聞いたもので、仕事を放り出して帰ってきたんです。きっと先生が居られなかったら二人の顔も見れなかったんじゃないでしょうか。本当にどうやって感謝したら良いものか」


 先生はちょっと困り顔

「いえ、微力がお役に立てて良かったです。」


 さて、ここからは大人の時間ってことにして、あたしはベッドに入ろうっと。ふぁ~と小さな欠伸をしてみるとイリアさんかすかさず「メアリー様はそろそろお休みした方が良いですね」と寝室へ連れて行ってくれたよ。今日はマジで疲れたもの。殆どバタンキュー状態です。





※※※※※※※※※※※※


 あの子は悪魔なの?なぜ私を窮地に追い込むのよ。

 ケイトは心底途方にくれていた。

 ただでさえ、自分の治癒では助けることが出来ないと判断した二人を訳のわからない手段で回復させてしまって、王都でも上位の治療師と思っていたプライドなんぞずたずた。しかも、おかしな宣誓に同意してしまったおかげで、どうやったのか追求することも出来無い。

 なのに・・・治療全てを私がやった事にしてしまって、どう説明すりゃいいんだよ。

 しかも、水の精?風の精?土の精?樹の精ですって?気のせいで済ます事じゃないでしょうが。妖精なんて人の形をして現われたりしたりしないって事判ってるの?

 家に帰ってきた父親への説明の段になると、眠そうにして・・あれ絶対演技よ。そういう子なのね。判ったわ。


 父親への説明は簡単に済ませたわ。というか説明のしようがないってのが正しいか。胸を開いて骨折を直しましたなんて言い様もない。お腹を開いて中を治癒だなんて誰も出来ない、やろうとも思わないわよ、そんな事。だから「治癒が何とか利いたようです」くらいしか言葉に出来ない。


 おまけに、「才能が有りそうだから王都の学校に行かせてみたい。治療師の弟子にしたいくらいです。」って言わさせられるなんて、私のほうが弟子にして欲しい位だわ。


 妻と愛娘を治療してくれた相手なんだから、拒否なんて出来っこないわよね。それは本人の意向も確かめないと、とかって当たり障りのない返事を貰ったけど、本人がそう言ってくれって指示してるんだから行きたいって言うに決まってるじゃない。まさか、父親からこの言葉を引き出すために私に言わせたのかしら。そうだとすると、全てあの子の手のひらの上で踊らされて居るって事になるわ。

 そう気づくと、ぼろぼろになっていたプライドがひとかけらも残らず崩れ落ちてしまう。


 お友達が助かったのはとてもうれしいのだけれど、だけれど、私の精神は誰が救ってくれるのかしら。



※※※※※※※※※※※※


 どん底に落ちてしまったケイト先生の、明日はどっちだ。


表現を一部訂正しました。

6/30 母様→かあさまへ修正。

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