それでも眠れぬ夜は続く・自己紹介
突然だがここで人物紹介を始める。
まず俺。
この春から大学に通っている一人暮らしの学生。男。対人・対話・コミュニケーション能力が著しく低く、よくそのことで自己嫌悪する。読書が趣味で座右の銘は岡目八目。
一言でまとめると友達が少ないオタメガネ。しにたい。
次に同居人。
4日前に俺が住むマンションの前に墜落してきた女の子。自称妖怪。多分本物。まるでディスプレイから出てきたように可愛い。地味だけど。黒髪黒瞳黒衣の三拍子そろった黒づくめ。髪の毛は癖が強く頭に鳥の巣ができているがそこもまた可愛らしさの一因なのではないだろうか。他にも丈が長いダブついた袖や袴の様なズボン?から出た足がまぶしい。ちなみにこの服は彼女の「羽」でできていてつまり彼女は黒い翼を持った妖怪、まあカラスの妖怪である。
ちなみに体つきは痩せ形、というか肉がない。胸部なんて絶望的である。なぜそれがわかるかというと、
現在進行形で俺の背中に押し付けられているからだ。
しかも同衾中。
若い男女が!二人で!同じベッドに!
しかし悲しいかなテンパりの頂点のにいる俺を現実に引き戻すほど背中に伝わる硬度は高かった。あと俺の肩を握りしめる指は食い込んでいた。
結局寝付けない俺は現状に至った経緯を思い起こして朝が来るまでの時間をつぶすことにした。
新生活の一人暮らし。
寝具は一つ。
さすがに3日連続で床に寝るのはどうよ。いやまあいいんだけど。二人で入るにはベッドは少し狭いしね。
私は狭い方がいいです。
あーいやでも。
お願いします。
……
……どうしてこうなったんだ。
いや原因は分からなくもない。この背にしがみついてきたことを考えると。
(やっぱさみしかったのかな)
俺のようなやつでも頼らざるを得ない状況に置かれている彼女に少し同情する。昼間は明るく振舞っていたけど心細さは限界に達していたのだろうか。
それとも幽霊よろしく背中に取り付いて精気を奪い取るとか。
……自分の冗談に背筋が寒くなった。
いやな考えを振り払うためにも場面はまき戻っていく―――
「そういえば」
「はい」
「お金は払えるとか言ってたけどどこからお金を?」
「互助会です」
「……?」
「妖怪の互助会があって、初めて人間社会に来た妖怪には一定額の支給があるんです」
「は、はあ。それなら寮とかもあるんじゃないの?」
「いま、いっぱいらしくて。それに、私、よそもので」
「妖怪にもいろいろあるのか……」
「あ、でも安心して!互助会の第一規則は”人間を食べないこと”!」
このとき俺の顔が引きつらなかったのは単に理解が遅れたからである。
「これを守れば3年間、毎月支給があるのでお金のことは大丈夫!ここに居候してれば家賃が浮くし人間社会のこともわかるし一石二鳥です」
妖怪互助会はお金を持ってるんだなあこの不景気に。とか思ったけど追求はしなかった。どうせ聞いてもわからないだろうしなんか怖いし。
「完全に利益のためか……」
「あ、いやでも妖怪に棲みかを提供する人間なんてどう探したらいいのかわからなくて……」
そんな状況の新米妖怪を放り出したのか互助会は。何やらきな臭くなってきたのでこれ以上突っ込むのはやめよう。
な、なんか他の話題は……
「あぁ、そうそう!なんでおま、君は俺が友達いないって思ったの?」
盛大に自爆した。うわぁ……しにたい
「その、見ず知らずの妖怪を何日もかくまう人は悪人か変人か孤独な人だと教えられたんで……」
「これは悪人か変人とみられなかったのを喜ぶべきなのかな……?」
目頭から分泌液が出てきた。
「あ、悪人や変人には見えなかったよ!悪人にしては対応が変だしでも変人とも思えなくて、あと人付き合いが苦手そう、あっ、その、あの、ごめん……」
謝られた。
俺の目頭は耐えきれなかった。




