一カ月遅れの新生活・対話
それは俺の日常が崩れてから3日目の会話。
「ところでさ、お前はいつまでここに居座る気なんだ」
この珍客が俺の家に来てから今日で3日目。まったく現状になれずむしろ悶々とした夜を送るのがもう限界であった。最初は浮かれていたような気がするけど、いや初日からテンパって仕方なかったな。
まあとにかく、すぐさまこの地獄を終わらせたい。
「きみはあと何年このマンションにいるの?」
「あと3年かな?」
家賃も安いし隣人も静かなここは優良物件だ。
「ふぅん」
そういって小首をかしげるコイツ。小動物じみたしぐさがとても俺の心に突き刺さる。かわいい。
だがだからこそ大問題である。
「まて、お前は3年間ここに居座る気か」
「ダメ?お金は払います」
「いやいやお前がいたら友達が呼べないだろ」
金より安眠のほうが大切だ。実在しない友人をでっち上げてでも退散していただきたい。
「……いたんだ」
心に突き刺さった、俺ってそんな風に見られてたの?マジで凹む。いや真実を突かれてたから凹んだ。
「おまっ」
「あっごめんなさい」
そういって舌をちろっとだすこいつの仕草も突き刺さる。てかやっぱばれてる。もうやだ。
「でも迷惑はかけないし一時的になら外に宿泊してもいいし」
迷惑だからこの話を切り出したんだろーが!
「……ダメ?」
うっ
「まだ、ここのことはよくわからないの。正直に言うとここを追い出されると路頭に迷うというか……その、もうちょっときみにいろいろ教えてほしいな……」
うぅっ
上目遣いで少し不安そうに俺の方を見るな!刺さる!罪悪感とかにも!
「あの、お願いしますっ」
「わひゃっ」
手、手を握っ!
「あっご、ごめんなさい……」
「あ、いや、その」
もういやだなんで俺はいつもこう・・・震える手を振り払らうなんて。
「……やっぱり、ダメですよね。無理を言って」
「ま、まって!いて、いてもいいカら!ウチにいテも!」
声が上ずった。しにたい。
これよりあとの会話は省略させてもらう。とても聞くに堪えるものではなかったし、即座に忘れたい記憶だから。
とにかくこうして俺と奇妙な同居人の生活が始まった。
「これから、よろしくお願いします」
その微笑みは今日一番の強さで俺の心を貫いた。
かわいい。




